掲載日 : [2004-12-08] 照会数 : 3263
法と生活〈20〉 在外同胞向け最新法・制度(04.12.8)
(文責・民団中央民生局)
刑事事件の手続き㊦
被害者保護へ補償・賠償制度
ホ 前科管理および刑の失効
一度の過ちで刑を受けたとしても一定期間罪を犯さなければ前科を抹消して正常な社会復帰を保障する。すなわち、懲役または禁固刑の執行を終了するか執行が免除された者が被害者の損害を補償し資格停止以上の刑を受けることなしに7年を経過した時には、本人が申請をすれば裁判の失効宣告を受けることができる。
しかし、一般の人々はこの申請手続きを知らない場合が多いので、国家で「刑の失効等に関する法律」を制定して刑の執行を終了または免除された後、一定期間の間資格停止以上の刑を受けない場合には自動的に刑を失効させる。
4 被害者保護および刑事補償制度
イ 刑事事件と被害補償
犯罪をおこして他人に被害をもたらした人は適切に被害を補償し合意をすることが道理といえる。したがって刑事事件処理過程で検事や判事は被疑者や被告人に合意を勧め、また合意すればそれを斟酌して軽い処分や判決を行うのが慣例である。
しかし、被害補償は根本的に民事問題なので刑事事件では処分や量刑に参考になるだけで、捜査機関や裁判所で合意を強要することはできない。
ロ 賠償命令制度
刑事事件の被害者が犯人の刑事裁判過程で迅速、簡便に民事的な損害賠償を受けるには、賠償命令制度と関連する。
賠償命令が下される刑事事件は、傷害や暴行、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、横領、背任、財物損壊罪に限定されるが、被告人が被害者に対し一定金額の損害賠償をすることで合意しながら約束を守らない時は、これらに該当しない罪に対しても賠償命令を申請することができる。
賠償命令は前述の犯罪の被害者またはその相続人だけが申請でき、犯人が被告人として裁判を受けている裁判所に2審公判の弁論終結前までに申請すればよい。
賠償命令の申請範囲は、犯罪によって発生した直接的な物的被害および治療費に限定されるが、それ以上たとえば慰藉料まで賠償を求めようとすれば民事訴訟を提起しなければならない。
賠償命令は被告人に対する有罪判決の宣告と同時に行う。賠償命令が記載された有罪判決文は民事判決文と同一の効力があるので強制執行が可能である。
ハ 請願の実質的解消方案
「請願の実質的解消方案」は請願人の告訴・告発に対して検察が刑事手続きとは別に法律救助公団を通じて合意、訴訟などで被害の弁済を受けられるよう支援する制度として2000年4月1日から全国の検察庁で施行している。これは告訴・告発の内容が、借りた金を返さない場合、賃金を支払わない場合、工事代金など代金を支払わない場合など、民事的解決が可能な事案に適用される。ただし、請願人が後で説明する法律救助対象者に該当する場合に限り支援を受けることができる。
▼検察庁に直接告訴・告発を提起する場合
告訴・告発状が検察に提出されれば請願専担検事あるいは共益法務官が請願人との相談を通じて民事事案に該当するかどうかを検討し、民事事案にあたると判断される場合、請願人を相手に告訴・告発の維持・取り消しの可否または告訴・告発とともに民事的被害弁済を求めるかどうかなどを確認する。これに対し請願人は自由に自分の意思を決定でき、民事的被害弁済を求める場合、共益法務官の案内により管轄法律救助公団を通じて被害弁済に対する支援を受けることができる。
▼警察に告訴・告発を提起した後、検察で捜査中の場合
捜査中の事件の主任検事から民事的被害弁済を得られるようにアドバイスされれば、共益法務官と相談して法律救助公団を通じ被害弁済に対する支援を受けることができる。
ニ 犯罪被害者救助制度
(1)犯罪被害者救助制度の意義
犯罪によって死亡したり重障害を被っても加害者がわからなかったり加害者に資力がない関係で被害の全部または一部について補償を受けることができず、生計維持に困難な事情がある場合、国家で被害者または遺族に一定限度の救助金を支給する。
また、捜査または刑事裁判手続きで告訴・告発や証言を行ったという理由で報復犯罪にあった場合には、救助要件が一般犯罪の救助要件より緩和され、加害者の不明または無資力、被害者の生計困難可否と関係なく救助金の支給を受けることができる。
(2)救助金の支給を得られる人
第1=遺族救助の場合、殺人など強力犯罪によって死亡した人の遺族の中で被害者の死亡当時、被害者の収入によって生計を維持していた配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹。
第2=障害救助の場合、前記の犯罪によって重大な身体障害が生じた人で身体障害等級基準1級ないし3級の障害に該当し労働能力を100%喪失した人。
ただし、次の場合は救助金の全部または一部を支給しないことがある。
①被害者と加害者間に親族関係(事実婚含む)がある場合
②被害者が犯罪行為を誘発したり犯罪被害の発生に関して被害者に帰 責事由がある場合
③その他、社会通念上、救助金の全部または一部を支給しないのが相当と認められる場合
また犯罪被害を原因に国家賠償法またはその他法令により給与を支給される場合や、加害者から損害賠償を受けた場合にはその金額内の救助金は支給しない。
(3)救助金の支給申請手続き
救助金の支給を受ける人は、その住所地または犯罪発生地を管轄する地方検察庁に設置された犯罪被害救助審議会に申請すればよい。
ただし、犯罪による被害が発生したことを知った日から1年が経過したり、犯罪被害が発生した日から5年が経過した時には申請できない。
(4)救助金額
遺族救助金は1000万ウォン支給し、障害救助金は障害の程度によって1級600万ウォン、2級は400万ウォン、3級は300万ウォンを支給する。
一方、被害者の障害程度が明確でないとか、それ以外の事由によって速かに救助決定ができない時には、被害者の応急救済のために遺族救助金は200万ウォン、障害救助金は100万ウォンの限度内で仮救助金をまずもらうことができる。
ホ 特定犯罪申告者等救助制度
(1)特定犯罪申告者等救助制度の意義
国民が安心して自発的に特定犯罪に対する申告等ができるように犯罪申告によって報復にあう恐れがある犯罪申告者または親族等に国家が補佐人を指定し、警察署長等をして身辺安全措置を取るようにする一方、生活費支給等を通じて犯罪申告者等を実質的に保護しようとする制度である。
制度上の「特定犯罪」とは次の犯罪を言う。
①殺人・略取と誘引・貞操(強姦など)・強盗・犯罪団体の構成などに関するうち、特定強力犯罪に該当する犯罪
②麻薬類の輸出入・製造・売買や売買斡旋など麻薬類不法取り引きに該当する犯罪
③暴力行為または窃盗を目的にする団体の構成・加入またはその団体の活動と関連して行った犯罪
(2)救助を申請できる人
特定犯罪に関する申告・陳情・告訴・告発などによって生命または身体に対する危害や財産などに対する被害を被るか被る恐れがあると認めるに十分な理由がある犯罪申告者または被害者と密接な人的関係にある親族・同居人等が救助を申請できる。
(3)救助の方法および申請手続き
▼補佐人指定
補佐人とは、当該刑事事件の捜査・公判過程に同行や助言ができる者。犯罪申告者の法定代理人、親族、学校または社会保護施設の長や職員、相談施設の長や職員、雇用主などが犯罪申告者の補佐人になれる。
犯罪申告者または親族などが直接管轄警察署・検察庁・裁判所などに補佐人指定を申請したり司法警察官・検事または裁判所が職権で指定することができる。
▼身辺安全措置
一定期間中の特定施設での保護、身辺警護、参考人または証人として出席・帰宅時の同行など、犯罪申告者の身辺安全のために必要な措置。
犯罪申告者または親族などが直接管轄警察署・検察庁・裁判所などに身辺安全措置の申請を行える。裁判長は、検事に身辺安全措置を要請できる司法警察官・検事は職権で身辺安全措置を取ることができる。
▼救助金支給
犯罪申告者または親族などが報復にあう恐れがあり、それによって重大な経済的損失または精神的苦痛を受けたり、引越・転職などで費用を支出する必要がある時、国家が支給することができる金銭をいう。
救助金のうち、治療費・引越費用・防犯施設設置費用および警護に必要な費用は実費で支給される。生活費・転職費用および慰藉料は月決めで支給され、最低賃金法で定めた日給最低賃金額(04・8・31基準20080ウォン)の5倍以下を基準に算定される。
ヘ 刑事補償制度
(1)刑事補償制度の意義
形事裁判で無罪の宣告を受けた者は裁判確定前までの拘禁に対する補償を請求することができ、被疑者として拘禁された後不起訴となった者はその拘禁に対する補償を請求することができる制度である(ただし、拘禁された後に不起訴とする事由がある場合、起訴中止など終局処分ではない場合および起訴猶予、公訴保留などの場合は除外)。
(2)補償金請求手続き
形事裁判手続きで無罪裁判を受けた者は裁判が確定した日から1年以内に無罪裁判をした裁判所に補償を請求しなければならず、裁判所は補償請求に理由があれば、補償決定を行う。請求人は補償決定が送達された後1年以内に補償決定裁判所に対応した検察庁に補償金支給を請求しなければならない。
ただし、刑事未成年者、心身障害者などの事由で無罪裁判を受けた場合、本人が虚偽自白をしたり、または他の有罪の証拠をでっちあげることによって起訴、未決拘禁または有罪判決を受けるようになったと認められた場合、1個の裁判で一部が無罪裁判、一部が有罪裁判を受けた場合、裁判所の裁量によって補償請求の全部または一部を棄却できる。
被疑者として拘禁された後に起訴されなかった者は、検事から不起訴処分の通知を受けた日から1年以内に不起訴処分をした検事が所属する地方検察庁(地方検察庁支庁の検事がそのような処分をした場合には、その支庁が属する地方検察庁)の被疑者補償審議会に補償を請求できる。
(3)補償金額
1日の補償金上限額は補償請求の原因が発生した年度の日給最低賃金額の5倍以内で決定され、全体補償金は1日の補償金に拘禁日数を掛けた金額になる。
5 犯罪人引渡しおよび刑事司法共助
犯罪人引渡しとは、ある国の刑法または刑事関係法に違反した疑いを受けている犯罪人が他の国に所在するため刑罰権を行使することができない場合、犯罪人所在国が刑罰権行使国の要請によってその犯罪人を引き渡す国際法上の制度。一方、刑事司法共助とは、刑事事件の捜査・裁判と関連した証拠資料の収集・提供のため国家間で互いに協力する制度をいう。
韓国もこれに積極的に対処するため98年6月10日に米国と犯罪人引渡条約を締結したのをはじめ豪州、フィリピン、スペイン、カナダ、チリ、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、メキシコ、タイ、モンゴル、中国、インドネシア、ニュージーランド、日本、ウズベキスタン、ベトナム、カザフスタンの19カ国と犯罪人引渡条約を締結。豪州、米国、カナダ、フランス、中国、香港、ロシア、モンゴル、ニュージーランド、インドネシア、ブラジル、ウズベキスタン、フィリピン、タイ、ベトナム、カザフスタンの16カ国と刑事司法共助条約を締結した。
(2004.12.8 民団新聞)