在日家族3代の歴史
日本の戦前、戦後を表現
【京都】舞踊家の梨花さん(62、婦人会上京支部会長)を通して在日同胞の過去、現在、未来を描く長編ドキュメンタリー映画「花のようにあるがままに」(港建二郎監督、82分)が完成。4日、京都市内の河二ホールで試写会が開かれた。港監督は「ヘイトスピーチ問題に見られるように、在日コリアンに対する差別と偏見はまだまだ根深い。そうした偏見や差別がいかに、人間として愚かしいことか。国交50周年を迎え、一緒に考えるきっかけになることを願った」と話す。
−−映画制作の意図、狙いは。
「私のルーツは鹿児島県南端の与論島。祖先が与論島から大牟田の三井三池炭鉱に集団移住した。祖母は友人がくると口をつぐみ、与論島の言葉を飲み込んだ。与論島の言葉を使うと差別されるからだ。梨花さんもお父さんが差別されたと聞き、共感できるものがあった。主人公の梨花さんを通して日本社会のさまざまな差別やゆがみを追及できないかと思った。タイトルは人との連帯、人との結びつきを不変的な、あるがままの姿としてお互い感じあえることを表現できれば、という思いからネーミングした」
−−梨花さんとの出会いは
「昨年、大阪市生野区で開かれたある集いで、梨花さんが『別れ』をテーマに踊るのを見て、ただ、ただ涙があふれ、感動した。その人柄にほれ、その場で映画作りを申し出た。当時、梨花さんは京都を拠点に学校などで数え切れないほど人権学習を兼ねた講演を行っていたときのことだ」
−−映画の内容と構成を説明してほしい
「梨花さん自ら経営する韓国料理店で開いている『ざっくばらんの会』の様子などを追った現在、朝鮮から発電所に連れてこられ、導水路を掘った体験を持つお父さん・学奉さんの苦難の過去、梨花さんの3人の子どもが振り返る家族の歴史という3部構成になっている。お父さんが生前、テープに吹き込んだ肉声を通じて、朝鮮侵略や創氏改名などの証言がとれたことはよかった。日本の戦前、戦後をリアルに表現できたと思う」
京都で披露上映
完成披露上映会は27日、京都市四条烏丸にある京都産業会館8階のシルクホールで10時30分と13時30分の2回に分けて開く。一般公開は夏から秋にかけて全国規模で広げていく。製作協力券(全国共通チケット)は1枚1500円で取り扱い中。
問い合わせは製作支援委員会事務局(090・9332・6387、松井)。
(2015.6.10 民団新聞)