関東大震災時の同胞虐殺事件の実相を、当時の手記や証言などをもとに描き出した歴史ノンフィクション『9月、東京の路上で』の著者、加藤直樹さんが5月29日、東京・港区の韓国中央会館で開催された記者・市民セミナー(民団中央本部主催)で講演した。
加藤さんは、「大規模災害時、マイノリティーをターゲットとする流言は必ず流れるものだ。インターネットがそれを拡散する」と持論を述べた。「そんなことはないと流言を否定し、抑制的に対応できる社会になっているのか。いまの政治状況はとても心許ない」と疑問を投げかけた。
だからこそ、「単なる過去としてではなく、今を考えるためのきっかけとして関東大震災の記憶を共有することが絶対に必要」とも強調した。嫌韓ナショナリズムのはびこる現実を見てきた参加者たちだけに、ただうなずくばかりだった。
最後に「朝鮮民族への認知のゆがみを改善するため、文化や人の交流で、『私たちの日韓』と呼べる共有の空間をつくっていこう」と呼びかけた。
(2015.6.10 民団新聞)