掲載日 : [2009-07-15] 照会数 : 8322
<歴史教科書問題>「つくる会」阻止へ全開
[ 都教委に現場の教員の声を聞くよう要望する李時香民団東京団長(右から2人目)と婦人会、青年会の代表 ]
公立中学校「望ましい歴史教科書」採択を要望
各地民団 韓日のさらなる友好願い
来年度から公立中学校で使用される教科書採択の年を迎え、民団は、物議を醸してきた「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した扶桑社版はもとより、今年から新たに参入した「つくる会」の流れをくむ自由社版の歴史教科書についても、韓日両国間の善隣友好関係を損なうものとの立場に立ち、採択阻止を訴えている。「つくる会」主導の歴史教科書は01年の採択で0・04%、05年の採択でも0・4%しか支持を得られなかった極めて問題のある教科書だ。
民団東京本部(李時香団長)は10日、都教育委員会に扶桑社版および自由社版の歴史教科書について「植民地支配を正当化し、アジア蔑視を誘発する内容」と指摘、採択しないよう求める要望書を提出した。同要望書は婦人会東京本部(金貞子会長)と、青年会東京本部(朴裕植会長)の連名。
都教育委員会は01年、および05、06、07年にかけて都立中高一貫校や特別支援中学校で「つくる会」主導の歴史教科書を採択してきた。民団側は「多くの在日同胞が日本の公教育に身を置いている現実」を指摘し、現場の教員の声に耳を傾けるようあらためて求めた。
また、民団神奈川本部(李富鉄団長)は8日、横浜市教育委員会に要望書を提出した。横浜市は今年の採択にあたり、他団体からの要望を受け入れて18の採択地区を1地区にしたばかり。同本部では「つくる会」主導の歴史教科書採択に向けた環境づくりとみており、撤回を求めた。同本部では横浜市のほか、鎌倉市と海老名市での採択の行方も警戒している。
民団群馬本部(呉永仙団長)も8日、県教育委員会義務教育課を訪れ、「望ましい歴史教科書の採択を求める要望書」を手渡した。呉団長は持参した民団パンフや『在日コリアンの歴史』を提示しながら、要望の趣旨に理解を求めた。対応した鈴木雅之次長、鈴木寛史補佐・指導係長とも「皆さんの要望の趣旨を理解した」と答えた。同本部は前橋市教委にも同様の要望書を提出した。
一方、西東京本部(金竹村団長)は八王子市を除く29の自治体について要望活動を終えた。各自治体からは扶桑社版、自由社版の双方について批判的な意見が相次いだが、民団としては引き続き各地区の動きに神経をとがらせている。
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大田原で採択 民団など抗議
【栃木】大田原市の教科書採択協議会は4年前に引き続き「新しい歴史教科書をつくる会」主導の中学校歴史教科書(扶桑社版)を選定。9日の教育委員会で正式に採択した。これに対して民団栃木本部(金一雄団長)と青年会中央本部(金宗洙会長)、子どもと教科書全国ネット21は「政治的な判断のみで、子どもや地域のことを考慮しない無責任な所業」とする抗議の談話を発表した。 民団栃木本部は扶桑社版採択の動きを事前につかみ、「これ以上広がらせてはならない」と6日、大田原市教委はもとより同市に隣接する教育委員会にも「つくる会」主導の教科書を採択しないよう求める要望書を手渡していた。また、青年会中央本部でも3日、「自由社版、扶桑社版とも公教育で使用するにたえるものではない」として、不採択を求める要望書を提出していた。今年採択された教科書は学習指導要領が改定される12年まで使用される。
(2009.7.15 民団新聞)