掲載日 : [2009-08-26] 照会数 : 10698
フラッシュ同胞企業人<39>首都圏で8割のシェア
[ 1951年福井県若狭生まれ。岩手大学工学部卒。(株)消防試験協会代表。千葉韓国学園学園長。2男2女。 ]
ビルの連結送水管を検査
消防試験協会の金萬石社長
消防隊専用栓とも呼ばれる連結送水管。高層ビル火災時の消火活動に欠かせない。各階に設置された配管に漏れがないか、十分に送水ができるかなどを点検しながら、実際に屋上で放水テストを行う。
民間参入に道筋
「消防自動車がなければ、点検はできない。当社が有する消防自動車は約20台。この業界では圧倒的に多い」。07年売上額は5億2000万円、社員は約50人。顧客は3000社にのぼる。
岩手大学工学部卒業後、生まれ故郷の若狭(福井県)に近い大阪で、建築設備の設計施工会社に就職した。「日本人と同じようにサラリーマンを続けるのは難しいだろうと、漠然と感じていた。いつか独立しようと、必死に働いた」
10年ほど勤務後、転勤で上京したのが転機となった。数年後、「子どもが4人いたので、生活のために独立を決意した」。
消防設備の検査は自分でもできると考え、85年、有限会社消防試験協会を設立。知人の小部屋の一角を借りてのスタートだった。88年に株式会社に移行した。
「10年ほどは新築ビルが専門。工事中のビルを見つけては飛びこんでいく営業を続けた」。建築現場の責任者を体験したのが役立ち、相手の立場に立った営業で顧客を開拓していった。
当時、消防試験のための財団法人がすでに設立されていた。「いろいろ調べた結果、民間人が参入しても問題ないことがわかった」。ところが参入後、顧客が増えたため、妨害の憂き目に。行政(消防署)と一緒になって締め出しにかかってきたのだ。
「解決には骨を折った。消防庁や東京都、都議会などに陳情書を提出し、行政が民間人を差別するのはおかしいと訴えた。それが認められ、ようやく同じ土俵にのぼることができた」。財団法人より安価でサービスが良く、順調に顧客を増やし、財団法人はいつのまにか消滅した。今や首都圏のシェアが8割にのぼる。
以前は新築時の検査だけに限定していたが、2002年に消防法令が改正され、連結送水管や消防ホースを設置後、10年経過したものにつき3年ごとの点検が義務づけられた。
独自の補償制度
法令改正により仕事が増えたものの、同業者の参入も多くなり、競争が激化している。しかし、新築時のノウハウをもつ会社は少ない。
大きなセールスポイントが、同社だけの特別損害補償制度。「従来の損害賠償責任保険の場合、配管の劣化・老朽化などの原因による水損事故には適用されないため、独自の補償でカバーしている」
02年の法令改正で義務づけられた古い建物に対して、どの保険会社も及び腰で、保険の対象外とした。実際に試験して、水浸しになった場合、誰が責任をとるかが問題だ。「当社が責任をもって上限1000万円まで補償するため、顧客は安心して任せてくれる」と強調する。しかし、「急成長は望めない職種。コツコツやっていく以外に方法はない」。
◆(株)消防試験協会=東京都台東区浅草橋1‐10‐6(℡03・3866・4321)
(2009.8.26 民団新聞)