掲載日 : [2009-10-28] 照会数 : 8524
〞横浜市があぶない〟 教科書採択区を統一化
全国でも異例
【神奈川】横浜市内の小中学校491校、約27万人が、2年後から同じ教科書を使うことが可能になった。複数の採択地区制度を導入している全国の政令指定都市で、採択区を統一化したのは横浜市が初めて。日本の植民地支配や侵略戦争を正当化・美化し、日本の戦争の加害や被害をほとんど書かないと批判されてきた「新しい歴史教科書をつくる会」編集の中学歴史教科書が市の「統一教科書」になるのではと懸念する声が上がっている。
8区で「つくる会」採択
横浜市教委(今田忠彦教育委員長、田村幸久教育長)は6月の臨時教育委員会で採択地区の集約を決定。市町村の教科書採択区域の設定権を持つ県教委に要望していた。要望書は15日、神奈川県教委の定例会で認められた。この結果、10年度には全国最大の採択地区が誕生する。
これに先立って同市教委は8月4日、「つくる会」編集の自由社版中学歴史教科書を市内18採択地区中8地区で採択したばかり。8地区で自由社版を使うことになる中学生は約1万3000人。強力な足場ができたからには11年度以降から一挙に7万6000人が「つくる会」編集の教科書を使うこともありうる。
教科書はこれまで子どもや学校、地域の希望に沿う教科書が地区ごとに採択されてきた。日本政府も97年以来、「将来的には学校単位の採択の実現に向けて、現行の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善について都道府県の取り組みを促す」との閣議決定を出し続けてきた。横浜市はあえて法に逆行し、巨大な採択地区を誕生させたことになる。
市民運動「外国人への差別を許すな・川崎連絡会議」事務局員を担う崔勝久さん(64)は、「次は川崎が危ない」と次のように危機感を語った。 「自由社版の中学歴史教科書は2年後には横浜市の統一教科書になる。ほぼ間違いなくそうなるでしょう。今後は全国の市議会で『つくる会』教科書賛成派を増やし、教育委員会の委員を代えながら、最終的には教科書採択を採決で勝ち取ろうとしていく。こうした横浜方式を許してはならない」。
背景に「教育への不当介入」
横浜市教委は01年度、市内10の採択地区を行政区ごとの18地区に小規模化した。今回、教科書採択区割りを一つにできたのはなぜなのか。横浜市内のある有識者は「教育委員が公選でなくなって以来、『教育への不当な介入』は以前よりもやりやすくなっている」という。「4人抑えれば勝ちですから。6人全部とる必要はないのです」。
市教委は同一教科書が必要な理由として「小中連携教育のため」と県教育委員を説得した。これに対しては、6人とも「腑に落ちない」「教科書との関係が明確ではない」と当初は納得しなかった。その後、4人の教育委員は、「教育改革に熱心で感銘した」「市教委の挑戦を応援したい」「リスクがあるが、5年、10年と試してみては?」とも発言。残る2人の委員は、「あまりに情緒的。情緒で変更してよいのか」「県教育長は市内の地域に学力差があると明言したこともあるのに、同一教科書がよいとするのはおかしい」などと批判した。
採決の結果、4対2で1地区化が認められた。
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採択地区撤回へ11月に抗議集会
横浜教科書採択連絡会
市内の教職員と市民でつくる横浜教科書採択連絡会は、「戦争賛美、偏った歴史観のこんな教科書はいらない!‐自由社採択&1採択地区撤回を求める11・12市民の集い」を11月12日、午後6時30分から横浜駅西口のかながわ県民センター2階ホールで開く。
同連絡会は市内8地区で自由社版歴史教科書採択に道を開いた今田忠彦教育委員長と田村幸久教育長の責任を問い、二人の辞任と歴史教科書採択のやり直しを求める署名活動も展開している。
両氏は「つくる会」を支持する中田宏横浜市長が在職中に任命した。
(2009.10.28 民団新聞)