掲載日 : [2003-05-01] 照会数 : 3880
幻想としての北朝鮮 石高健次(朝日放送報道プロデューサー)
4月19日ソウルで市民数千人が参加し、北朝鮮の金正日独裁体制打倒・核放棄を求める集会が開かれた。金体制打倒を謳った集会は初めてだという。子連れの若夫婦から在郷軍人会の年配者まで幅広い層が見られた。集会では、あの南北首脳会談の直前、北朝鮮へ巨額秘密送金をした金大中前大統領を逮捕せよ、北に屈服した盧武鉉は国民に謝罪しろといったアピールが出された。
シュプレヒコールとともに国旗が威勢良く振り上げられる中にアメリカの星条旗が混じっているのにハッとした。反米・親北の集会が連日のように行われ、そのうねりに乗って盧武鉉大統領が誕生したのは、つい昨日のことではなかったのか。
集会参加者の一人は、「盧武鉉に投票したことを後悔している」とはっきり言った。
無論、反体制を含む多用な意見が公の場で繰り出されるのは健全な民主主義の現れである。
私は、北朝鮮にまつわる幻想が今ようやく崩れ始めたのだと思った。
日本では、拉致問題が、金正日が認めるまで明確な事実として国民から認識されなかったように、「北朝鮮がそんなひどい事をやるまい」という幻想に取りこまれていた。
そんな中、北から飛び出したのが、「核保有宣言」である。94年のジュネーブ合意の約束破りはどこ吹く風で、核を放棄させたくば巨大な見返りをと要求し、「核使用も可能」と脅す。これがならず者国家でなくてなんだろう。
「言葉(外交)だけで決着がつく」と思うのは、いよいよ北朝鮮に関しては幻想だということを肝に銘じ、弱腰の外交戦略を根本的に見直さなければならない。
(2003.4.30 民団新聞)