掲載日 : [2009-12-09] 照会数 : 8550
フラッシュ同胞企業人<45>韓国と提携活路を開く
[ 1959年全羅南道莞島生まれ。国民大学経営情報学部卒。91年に起業、06年に社名変更。1男3女。 ]
産業機械メーカー
三陽ファイデルジャパンの金起昌社長
ミキシングロールや圧延機、成形プレス、真空プレス、油圧大型プレスなどの産業用機械のメーカー。
「顧客のニーズに合わせて、なんでもつくる。受注で多いのがミキシングロールやプレス関係で、ほかに官公庁関係の缶プレスや車のゴムやプラスチック製品のシートなどがある。最近は特殊なものが増えている」
不況のあおりで取引先が3割ほど減少し、昨年の売上額は2億8000万円。社員は今年2月に半分に減らし、9人に。24時間稼働の工場も多く、土日返上でメンテナンスを行う。「みずからの足で駆けまわり、なんとか持ちこたえている」
実績1500台
韓国でコンピューター関係の仕事をしていたが、公費留学で83年に来日。機械生産に興味を持ち、油圧関係の会社に就職。91年に富山で「三陽マシナリ」という会社を立ち上げた。顧客が愛知や静岡周辺に多いことから、05年、岐阜に本社・工場・展示場を移し、翌06年に三陽ファイデルジャパンと社名変更した。
1つの機械を作るのに部品が400点にのぼることから、どうしても外注が多くなる。そのため、受注から納品まで1年近くかかってしまう。「これではいけないと、韓国に発注することにした。この10数年で韓国の機械メーカーの技術レベルは数段向上したからだ」。プラスチックなどの産業機械を中心に韓国の優秀なメーカーと業務提携している。韓国からの輸入品は8割ほどを占めるが、組み立てなどはこちらで行う。
ただし、「総合エンジニアリングとして納品の責任は全的に負う」。これまで1500台を超す製作実績を有し、幅広いノウハウを生かして中古機械の委託販売も行う。
「アイデアが勝負だ」と強調する。最近はシート出し用の受注が増えている。プラスチック製品のシートなどを薄く成形するためには厚みが必要だ。何度か重ねないと厚みができないが、それを1〜2回で作れるようにした」。真空プレスも好評だ。一般のプレス機械と異なり、完全に空気のない状態で成形できるため、不良品や故障が少なくなる。
顧客のため走る
この秋ごろから、「受注が増え始めた」という。昨年末にキャンセルになった数億円の受注が復活するなど、来年に向けて手ごたえを感じているようだ。
「上場企業との取引が多いが、創業当初は韓国人のため信用を得るのに時間がかかった。在日同胞の場合、誰もが資金繰りに苦労する」。それをバネにしながら仕事をしてきたという。朝7時には出社する。重い工具を持って、フェリーで北海道から鹿児島まで、駆けまわってきた。
富山に在住していた時は、16年間、民団の役員を務めた。「今は時間に追われるため、事務所に顔を出す暇は少ないが、いつでも協力は惜しまない」と頼もしい。
地方参政権問題に関しては真剣だ。「納税するのに選挙権がないのはおかしい。ぜがひでも実現したい」と強い決意を示した。
◆(株)三陽ファイデルジャパン=岐阜市東鶉3‐31‐1(℡058・277・6156)
(2009.12.9 民団新聞)