掲載日 : [2009-12-23] 照会数 : 11488
よみがえるあの記憶 歴史資料館「名古屋展」閉幕
[ 観覧者にパネル写真について説明する姜徳相館長(右) ] [ 「青年学校手帳」を寄贈した鄭煥麒さん ]
民団草創期の辛苦 子ども時代の祭祀
【愛知】在日100年の歴史を体系的にたどる在日韓人歴史資料館の名古屋特別展が13日、名古屋市博物館で1週間の会期を終えた。会期中は毎日、約150人が会場に足を運び、観覧者の姿が途切れることはなく、在日生活史の発掘・保存への思いを新たにした。貴重な史・資料も7人から寄贈された。
貴重な史・資料寄贈も
パネル150点、各種生活用具・史資料は500点と、数、質、内容とも充実した展示となった。ある団員は「子どものころ、大人たちが麻の衣装を着て祭祀をしていたのを見たが、あのころの記憶がよみがえる」「ここには在日の歴史がつまっている」と感嘆の声を上げた。
なかでも、愛知ゆかりの写真20数点を取りそろえたコーナーは人気を集めた。県内同胞の多くは伊勢湾台風で家族の写真を紛失したという。それだけに懐かしさもひとしお。「このころは民団の組織基盤づくりに奔走したもんだ」と指さす長老や、「この人は私の叔父さん」「みんないきいきしている」と目を細める観覧者の姿も見られた。
鄭煥麒さん(民団中央本部常任顧問)は、「こういった展示会は日本社会に在日の歴史が認識される貴重な機会」と、16歳当時から70年も大切に保管してきた「青年学校手帳」を寄贈した。名前の欄を見ると、本名が消され、その横に「大山陽治」と記されていた。姜徳相館長は「当時の創氏改名が生々しく残っている超一級の資料だ。資料館で丁重に展示していきたい」と喜んだ。
このほか、広島市己斐町で被爆したことを証明する被爆者健康手帳(67年10月9日発行)や罹災証明書(1945年8月6日付)、肖像写真(1950年前後)、徳島県海部郡にあった尋常高等小学校に1936年に入学した際に同校から発行を受けた「学校手帳」なども届けられた。
また、貞順さん(愛知県在住)は、同胞軍属2600人の名前を満載したガリ版刷りの住所録「自由韓人報」第7号を期間中、会場で委託展示した。これは第2次大戦中、ハワイに設置された韓人捕虜収容所で発行されたもの。
12日には会場で記念セミナーが開かれ、愛知大学の伊藤利勝教授と姜館長がそれぞれ講演した。実行委員会(委員長=梁東一民団愛知本部団長)は「これだけの展示会が名古屋の地でできた事実は今後、大きな意味を持ってくるのではないか」と語った。
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アンケートから
▽在日に関してまとまった情報は初めてのことで、どれも心に残りました。民団と総連の始まった経緯もこういうことだったのかと分かりました(30代同胞)
▽展示されていたポジャギにいちばん胸を打たれた。自分の子ども時代、同じ東京で生活していた人の存在を知らずにいたことを痛感しました(50代日本人)
▽人生60年なにも知らなかったけれど、今回見せてもらってすごく感動しました。もっともっといろんなことを知りたい(60代同胞)
▽強制連行や虐殺の経緯や詳細は別として、このような事実があったということは日本人として深く受け止めなければならない(30代日本人)
▽祖父母や両親の苦労が写真を見て少しでも理解できるような気がした。来てみてよかったと思います(50代同胞)
(2009.12.23 民団新聞)