掲載日 : [2010-01-01] 照会数 : 11240
<新年辞>韓日の未来創る一翼に 中央団長 鄭進
民団理念 和解導く
「参政権」背水の決意で
2010年の年頭に際し、団員および在日同胞の皆さんに謹んで新春のお慶びを申し上げます。また、韓国国民ならびに700万海外同胞の皆さんに心より連帯のあいさつをおくります。
「併合百年」に際し
今から100年前、わが民族は日本によって国権を奪われ、植民地支配の屈辱のなかに身を置かざるを得なくなりました。自主的な発展の道を閉ざされ、経済的にも人的にも苛酷な収奪を受けるだけでなく、精神的にも容易には癒せない大きな傷を負いました。
しかも、祖国解放と同時に南北に分断され、全民族が協同して新国家を建設する夢を打ち砕かれたばかりか、6・25韓国戦争によって同族が相食み、国土を破壊しつくす惨劇を経なければなりませんでした。
この100年間の前半50年は、わが民族にとって実に理不尽な受難の時代でありました。しかし現在、わが韓国の姿には目を見張るものがあります。
自由・民主主義と市場経済を建国の理念とした韓国は、南北対立の重圧に苦しみ、国内の激しい葛藤に揺さぶられながらも、後半の50年間、4・19学生革命、5・16軍事政変を経て、わが民族が背負った前近代性を克服しつつ、「漢江の奇跡」と呼ばれる驚異的な経済発展を遂げ、それを土台に民主化を達成しました。
第2次世界大戦後に独立した新興国として初めての開催となった88年ソウル五輪の成功は、東西両陣営の対立と経済格差による地球南北の葛藤をやわらげ、国・地域・民族が手に手をとる地球時代を提唱して大きなエポックとなりました。あらゆる苦悩を味わったといって過言でない韓国が、人類社会の協調と共生のために先頭に立とうとする決意は、その後も一貫しました。
称賛の韓国モデル
韓国は昨年11月、経済開発協力機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)の24番目の加盟国となりました。「援助された国」が「援助する国」になったのは史上初めてのことと言われます。それまでにも、農村近代化とグリーン革命を抱き合わせにしたセマウル運動の海外展開、飢餓線上にあえぐ人口が10億人を超えたと言われるなか、食糧難解消のための「韓国モデル」による支援などに力を入れてきました。
オバマ米大統領は昨年、アフリカ諸国に自活努力を求めた演説で、「私が生まれたときケニアなどアフリカ諸国の1人当たりGDPは韓国より大きかったが、今では完全に追い抜かれた」と語り、カイロ演説では「韓国は独特な文化を維持しながらも、大変な経済成長を果たしてきた」と強調しました。
オバマ大統領はさらに、米国も韓国をベンチマーキングすべきだとたびたび言及しています。東南アジアやアフリカ諸国の開発モデルとして輝くだけでなく、韓国の躍進は世界の称賛の的になっているのです。
この韓国は今年、世界の経済をリードする先進・新興主要20カ国(G20)首脳会議の開催地となり、先進国と新興国の共同利益を追求する連携軸として、世界の中心的な役割を果たします。これを機に韓国では、政治・社会・文化・モラルなどすべての分野にわたって「先進一流国家」たろうとする努力にいっそう拍車がかかるでしょう。
世界に雄飛する祖国・韓国の姿に隔世の感を抱くと同時に、その発展過程の随所において在日同胞が重要な役割を果たし得たことに、改めて誇りを覚えます。
檀紀4343年に
親愛なる在日同胞の皆さん。そして、国内外同胞の皆さん。
今年はまた、檀紀4343年であることを私はあえて強調します。
列強がわが民族を呑み込もうとする危機のなか、先烈知識人たちが建国神話に光を当て、族譜の伝統を用いて檀君と民族を結びつけることで、国づくりの新たな主体としてのわが民族を、その淵源にさかのぼって覚醒させたのです。
私たちは先烈の偉業に学びながら、韓国を中心とする健全な同胞共同体を世界で形成していく意思を堅固にすべきです。過去の苦悩と諸外国から受けた物心両面の援助を忘れず、どのような国家として世界に存在していくのかを自問しつつ、韓国がソウル五輪以来、一貫して追求する協調・共生の理念を各地で具現していくためです。
世界の孤児となった北韓の諸問題を解決し、激変が予想される韓半島情勢をよりよく管理しつつ、民主的で平和的な祖国統一を実現する方途はそこにあり、東アジアの将来に不可欠な韓日和解の道も同じくそこにあると信じて疑いません。
韓国と日本は時を追って、経済・文化面を中心に密接の度合いを深めています。政治的な側面においてさえ、繰り返されやすい摩擦を柔軟に吸収し、安定した関係を維持する英知を蓄積してきました。古代から延々と影響を与え合う一衣帯水の関係にあり、価値観を同じくする永遠の隣国同士にふさわしい関係を築きつつあります。
無視できぬ在日史
両国市民の往来は年間500万人に迫り、主要な地域が1日生活圏で結ばれています。韓日関係が険悪な時代から両国を一貫してつなぎ、善隣友好の土台を草の根で固めてきたのは民団を中心とする在日同胞でした。自治体交流に果たした役割には、特に大きいものがありました。とは言え、ドイツとフランスの姉妹都市提携が2200に及ぶのに比べ、韓日のそれはまだ120余に過ぎません。柔軟で生き生きとした「懸け橋」の役割をさらに広げましょう。
親愛なる団員および在日同胞の皆さん。
私たちは今日、新たな100年の歴史へ歩みだします。
その初年が明るい未来への象徴として、私たちの16年来の宿願である永住外国人への地方参政権付与の年となるよう念じてやみません。民団は新年早々から、この実現のために集中的な活動を展開します。
私たちは昨年、付与賛成派議員の大量進出を願い、民団史上で初めて日本の国政選挙に組織をあげて関与しました。その結果、参政権問題は新たな地平を切り開き、1月中旬から始まる通常国会に付与法案が提案される可能性が高くなりました。日本世論の大勢も付与賛成を示しています。
日本において、同胞を含めたマイノリティの存在はけっして小さなものではありません。私たちは日本の経済的発展はもちろん、人道・人権を尊重する共生理念を掲げて、文化・精神面においても日本の国際化に多くの貢献をしてきたと自負しています。
在日同胞は日本社会の一員として、日本の無視できない歴史の一部であったように、日本の未来に向けても重要な一翼を担うことは疑いありません。日本という国の在り方に前向きな提言をしつつ、韓日連携とこれを軸にした東アジアの新時代を引き寄せるためにも、共生理念に基づく地方参政権獲得運動を成果的に終える決意です。
求心体の自覚強く
全国の幹部をはじめとする団員の皆さん。
昨年の民団はかつてなく、地方参政権獲得運動に多くの時間と労力を割きました。そうかと思えば、北韓による再核実験などの暴挙や、その追従勢力による策動を抑止する手を緩めることなく、ウリマル・サラン運動、民族金融機関育成運動、韓日祝祭ハンマダンなど新たなキャンペーンを展開しては大きな成果をあげました。
「民族大学」や各種文化・スポーツ教室を新設し、あるいはオリニ向けプログラムや10月マダン、ブライダルなど既存事業を新鮮な企画によって拡充する本部・支部が相次ぎました。同胞と地域社会に密着した生活者団体として、そのアイデンティティを確かなものにする日常活動で、創意工夫が目立ったのは特記すべきでしょう。民団が民団であり続けようとする努力には頭が下がる思いです。
民団は、在日同胞社会の唯一の求心体となるべき立場にあり、ますます大きな期待が寄せられています。ですが、それに応えるだけの組織にする努力は、まだ十分ではありません。
待ったなしの課題である財政基盤の確保、拡充に背水の覚悟を持って臨む必要があります。幹部・活動家が組織の中核にふさわしい気力をいっそう発揮し、民団から疎遠になった同胞や総連から離脱して行き場を失った同胞たちを、民団の仲間にしていく活動が不可欠です。再編が免れない同胞社会をにらみ、民団という結集軸を堅固にしなければなりません。
組織内外の多様な課題に果敢に取り組み、民団と在日同胞にとって画期となる2010年にしていきましょう。団員ならびに同胞皆さん個々人にとっても、充実感のある1年となるよう願いながら、新年辞といたします。
(2010.1.1 民団新聞)