掲載日 : [2010-01-15] 照会数 : 10047
<民団新年会>共生・協調時代へ実績着々
[ 民団中央新年会で決意を述べる鄭進団長 ]
韓日関係を注視
韓日併合100年という歴史的な節目と、永住外国人の地方参政権問題の大詰めとが重なった今年の民団中央新年会は、その共通キーワードである「韓日関係のあり方」に関心が集中した。韓日各界の来賓から「相互の信頼は固まりつつある」「今後100年は共生と協調の時代になる」など、肯定的な評価と未来志向の発言が相次いだ。韓日関係は今年、どのような軌跡を描くのか。
過去より未来を熱く
交流に勢い 前向き志向広がる
中央本部の鄭進団長は新年会のあいさつで、「併合100年」を強く意識し、「韓日両国は古代から密接な関係にある隣国であるにとどまらず、国際社会の諸懸案と未来の諸問題に対する価値観を同じくする同志として、それにふさわしい善隣友好の関係をより確かなものにするよう願う」と強調した。
また、「過去の事実そのものは変えられないが、未来は話し合いながら創ることができる」とし、韓日の今後「100年を創る」ために、「過去については冷静かつ慎重に論じ合い、未来については熱く、大胆に語り合おう」と呼びかけた。
韓日併合100年だけでなく、韓日国交正常化45周年の年でもあるだけに、韓国や日本で近現代の韓日関係史を振り返る学術イベントが相次いで開催される。
歴史認識に過敏な1年
いずれも未来志向的な韓日関係の模索と、日本による強制併合の不当性と植民地支配の歴史的な責任を問い直す作業がワンセットになっており、どちらに重点が置かれるのかはイベントによって異なろう。南北の歴史学者がソウルと平壌で「強制併合100年、南北共同討論会」を開催する予定もある。
歴史認識に過敏にならざるを得ない1年だけに、独島領有や東海呼称の問題をめぐる対立がそれを刺激し、日本側の要人による支配正当化の不用意な発言が飛び出す可能性も否定できない。狭小なナショナリズムのぶつかり合いによって、これまでの努力が一歩後退を強いられることも想定される。
しかし現在のところ、韓国では未来志向に重点を置く傾向が目立つ。李明博大統領は4日の国政演説で、「併合100年」には触れず、「援助を受けた国」のなかで初めて「援助を与える国」になったこと、世界第9位の輸出大国になったことなどを挙げ、今年を「先進一流国家の礎石を固める1年とし、韓国社会の各分野で先進化改革の結果を出す」と強調した。
韓国のマスコミも年初から一斉に「併合100年」にちなんだ記事を掲載したが、韓国の躍進にともなう自負を前面に出している。韓国を代表する日刊紙「朝鮮日報」は社説で、東アジアの世紀を前に韓日中3国は協力的共存のパートナーになるべきだと訴えた。
親近感もつ人が増える
昨年12月に発表された日本内閣府の「外交に関する世論調査」によれば、韓国に親近感を持つと答えた人は63・1%で、前年に比べ6ポイント増え、韓日関係が良好と答えた人も66・5%と、前回比17・%増でともに過去最高だった。
韓日関係は「良好だ」との回答が「良好ではない」を下回った05年、06年でも、韓国に「親近感を感じる」との回答が「感じない」の回答を上回っていた。韓日関係に対する客観的な評価と個人的な親近感は別ものと受け止めることが普通になった。
昨年末に東亜日報が行った世論調査では、「日本が嫌い」と答えたのは35・9%、「好き」は10・8%だった。「どちらでもない」が52・0%。05年3月の朝日新聞との共同調査では「嫌い」が63・4%だったことから見ると、大幅に和らいだと見ることができる。同時期の朝鮮日報の調査でも、日本に「親近感を感じる」としたのは38・4%、「感じない」が59・5%だった。ここでも95年の26・0%より好感度が高くなった。中央日報の新年の調査でも、日本が最も嫌いな国であることに変わりはないが、5年前の62%から32・6%と半分近くに減った。
韓国人の対日感情については、本音より建前が出る傾向が強いと言われ、その点を勘案しておく必要があろう。1998年の日本大衆文化開放以来、漫画・映画・ドラマ・音楽など日本の文化コンテンツが若者の日常に溶け込んだ。日流またはニッポン・フィールという言葉は、洗練されたセンスと同義語と言う。
拒否感ない若者も台頭
韓国でも最近は、両国の大衆文化交流や対日感情と歴史・領土問題が必ずしも連関しなくなった。独島問題が浮上した昨年、駐韓日本大使館広報文化院が開催した日本映画祭などの文化行事は連日、若者で賑わった。歴史に拒否感のない若者の台頭は顕著だ。
日本政府側には李大統領が訪日しての首脳会談に際し、未来志向のパートナーシップをうたった98年の共同宣言をさらに深化させ、安全保障面での具体的な協力強化も盛り込む構想が浮上しているという。
韓国海洋警察と日本の海上保安庁による海難救助や対テロ共同訓練はすでに実績があり、米国主導のリムパックに90年から参加した韓国海軍は年々規模を拡大させ、日本の海上自衛隊とともに訓練に臨んでいる。安保問題での韓日連携にはまだ基礎が整っていないものの、北韓の動向をにらみながら、その可能性を追求する段階に来たことは間違いない。
韓日両国には個々の問題でそれぞれ固有の立場があり、それは政権が変わっても容易に変更できないことを知っておく必要がある。しかも、韓国も日本も政権は不変ではない。韓国の過去10年の対北政策が韓日関係の不協和音の拡大につながった経緯もある。永住外国人への地方参政権付与問題に絡み、日本で再び声高になっているタカ派的な傾向が新たな火種になる恐れも消えていない。
地方参政権付与については最近の世論調査でも、賛成が59%、反対が31%(毎日新聞)と、賛成世論が優位にある。朝日新聞は10日付の「韓国併合100年 アジアのための日韓築け」と題した社説で、「日本には歴史的な経緯から在日韓国・朝鮮人が多く住んでいる。永住外国人に地方選挙権を与える改革にも取り組みたい」と述べた。
象徴的事業まず成果を
韓日の今後100年向け、まずは国交正常化50周年の2015年までに、いくつかの象徴的な事業を成功させる必要があるだろう。自由貿易協定の締結はもちろん、韓半島情勢の劇的な変化をも念頭に置いた安全保障面での協力強化などがあろう。韓日関係は国際社会にともに貢献する公共財としてグレードアップすべきだ。
鄭団長はあいさつで、今後100年の初年である今年が、「明るい未来の象徴として、永住外国人への地方参政権付与の年となれば、これに優る喜びはない」とし、「このたびの通常国会において、日本世論の祝福のもとに実現されることを切に願う」と結んだ。韓日来賓のあいさつでも、これに熱いエールがおくられた。
(2010.1.13 民団新聞)