掲載日 : [2010-02-10] 照会数 : 8917
<第64回中央委員会>09年度総括(案)要約
[ 北韓の核兵器放棄を求める緊急集会のあと、東京の都心を「平和行進」する民団員(5月31日) ] [ 衆議院総選挙を前に開かれた緊急全国地方団長・中央傘下団体長会議(8月4日) ]
■□はじめに
「勝負の年」力強く…韓国の躍進 誇りをともに
第51回定期中央大会で選出された鄭進執行部は、議決・監察機関とともに再出発を誓い、09年度を「勝負の年」とした永住外国人の地方参政権獲得運動を中心に、同胞経済再生の模索、組織の整備・活性化、そして北韓の核実験糾弾など、内外の課題に鋭意対処してきました。
李明博大統領の就任以降、韓日関係は良好に推移してきました。人の往来は500万人に迫り、大規模な韓日交流のマダンがソウルと東京で同時に開催されました。両国の架橋的な役割を果たしてきた在日同胞としても、歓迎すべきことです。韓日首脳会談のために来日した李大統領は6月28日、民団幹部らとの懇談会の席で民団の役割を評価し、幹部らを激励しました。
大韓民国は世界的な経済危機をいち早く克服し、輸出黒字410億㌦達成、世界一高いドバイの超高層ビル建設、UAEの原子力発電所受注など、目覚しい成果をあげました。また、OECD(経済協力開発機構)の開発援助委員会に加盟し、支援を受けた国から支援する国となり、今年の20カ国・地域首脳会議(G20)開催国になったことは在外国民としても誇らしい限りです。
北韓は韓国と国際社会に対する危険な威嚇行為によって緊張を高めました。西海で再び軍事衝突を起こし、中・長距離ミサイルの連射と核再実験を強行しました。わが国と国際社会は断固とした姿勢で北韓に臨み、核放棄と6者会談への復帰を求めました。本団は北韓に挑発行為の即刻中止を要求するとともに、朝総連中央と傘下同胞に対しともに立ち上がることを訴えました。
一方、生活者団体である本団は、不況の影響が深刻な同胞経済の活性化のため、民族金融機関に対する預金増強運動を推進し、所期以上の成果をあげたほか、民族団体としての矜持を新たにする「ウリマル使用勧奨運動」、民族文化継承のための「MINDAN文化賞」と次世代育成事業を効果的に推進しました。「在日韓人歴史資料館」の名古屋特別展は、一部右派の妨害行動にめげることなく、当初の予定通りに貫徹されました。
また、特記すべきものに、本団の3・1精神を継承する諸事業が高く評価され、3・1文化財団から特別賞を授与されました。この栄誉は歴代の先輩はじめ各級組織幹部とともに賜ったものであり、大変意義深いことと言えましょう。
■□地方自治体参政権獲得運動
衆院選…推進者後押し
地方参政権獲得の「勝負の年」とし、中央本部に「地方参政権獲得運動本部」を、地方本部には同推進委員会を置き、挙団的に推進しました。その結果、8月の衆議院総選挙で永住外国人への地方参政権付与に賛同する多くの立候補者が当選する成果をあげ、過去にない推進土台が造成されました。
この運動の第1段階である研修会は、全48地方本部において開催され、婦人会の地協大研修会と青年会研修など合わせて5000人を超える幹部が参加しました。第2段階では、中央団長をはじめ中央・地方の幹部たちが重点地域を訪れ、支部幹部たちと意見交換を重ねました。これらの場には、参政権付与に賛同する多くの現職国会議員と立候補者たちが席を同じくしました。選挙が公示されてからの第3段階は、8月4日の緊急全国地方団長・中央傘下団体長会議を始発点に、支援活動に立ち上がりました。最終の第4段階では、当選者に対する祝賀と慰労を通じ、付与法案の一日も早い国会上程を求めて連携の強化に万全を期しました。
残念なのは、付与に反対する一部の保守的議員と右派団体の動向です。付与に賛成する意見書を採択した地方議会に対する露骨な翻意決議の工作、民族差別主義的な反対運動も見られます。私たちはこうした動向を最後の壁と考え、日本世論の支持を力に冷静に対応して行かなければなりません。
■□次世代育成と民族教育・文化振興
向上へ多彩な環境作り
韓民族の精神を伝える事業が民族教育、文化事業であり、これはまさに次世代の育成事業の核心です。
民族学校支援のなかでも特筆されるのは東京韓国学校の校舎増築です。この間、校舎が狭く多くの学生が待機状態にありましたが、本国政府と学校理事会が中心になって、民団をはじめとする在日同胞経済人と駐日韓国企業が一致協力した成果です。今後の学校教育の発展に画期的な機会になるでしょう。
民族社会教育運動の一環である「土曜学校」は「オリニ事業」の中心であり、年々、増加傾向にあります。常設的な「土曜学校」は27地方本部33カ所に拡大し、「臨海・林間学校(26地方本部27カ所)」「オリニ・クリスマス(26地方本部27カ所)」など、厳しい中でも各級組織が努力しています。このような事業の特徴は、地域同胞社会と保護者が一体となって次世代育成に取り組んでいることです。
生きた歴史教育の場である「在日韓人歴史資料館」は同胞社会の顔になりました。名古屋特別展は、一部の右派日本人の妨害行動を押し切って、愛知県地方本部と各級組織幹部が当初予定していた行事を全て貫徹しました。賢く勝ち抜いた矜恃と忍耐に対し高く評価します。
次世代育成においては、民族文化を楽しく体感する環境作りが大切です。各地方本部と一部支部で推進する「10月のマダン」がまさにそれです。09年度は31地方本部33カ所で同胞が集い、多くの地域日本市民も参加して韓日間の楽しい交流の場になりました。
昨年は韓日祝祭ハンマダンが初めてソウルと東京で同時に成功的に開催されました。駐日韓国大使館を中心に、本国の伝統文化と現代文化・芸能を紹介し、日本社会の多文化共生の象徴的な場になりました。
成功的開催に尽力してくれた東京地方本部と関東地域地方本部の各級組織幹部および団員の皆様に、心よりお礼申し上げます。合わせて、財政的な協力を率先してくださった経済人の皆様にも敬意と感謝を申し上げます。
一方で、「望ましい歴史教科書の採択を要望する運動」は、難しい局面にぶつかりました。多くの努力を注いだにもかかわらず、最大の政令都市である横浜市で採択されるなど歴史歪曲教科書は増加傾向にあります。本年は韓国強制併合から100年の年であり、韓日間の歴史認識問題は避けられません。抜本的な対策の考究が痛感されます。
民族団体としての姿勢を再確認する「ウリマル使用勧奨運動」は、私たちが自らを顧みるよい契機になりました。各級組織で、昨年開設された韓国語講座は40地方133カ所457クラスです。これの積極的な活用が望まれます。
■□組織強化のための事業
婦人会60年 結束示す
本団の組織強化は積年の課題です。09年前半期においては、一つの地方本部も欠けることなく研修会が開催され、2050人を超える幹部が集まり、志を一つにしました。
それに加えて、中央・地方・支部の幹部による共同活動のほか、青年会の地方参政権促求5・31集会、婦人会の2000人が参加した大研修会など、活発な動きがありました。
しかし、多くの支部と過疎地方本部では同胞の活動参与率と団費および賛助金の減少、後継者の不足で組織運営自体が難しくなっている現状があります。
このような状況の克服のために、第51回定期中央大会では現実に合わせた体制にすべく規約を改定しました。この規約に従って、組織の活性化を呼訴する「組織整備・活性化事業」に臨みました。地方参政権獲得運動に力量を集中したために、該当組織の実態把握と協議にとどまりましたが、今後、本格的に対応する契機となりました。
一方、09年2月に韓国国会で在外国民に対する国政参政権付与法案が可決されました。本団は在外国民登録を済ませた同胞と入団申請をした人で構成されています。ですが、民団を通さずにいわゆる朝鮮「籍」から韓国籍に切り替える同胞が急増しています。まさに今、在外国民登録の整理とともにそのような同胞たちを本団の活動に参与させる必要性が高まっています。
本団の最大の傘下団体である婦人会は09年10月29日に創立60周年記念式を盛大に行いました。創立以来、本団の同伴者として祖国大韓民国と在日同胞社会の発展のためにともに尽力してきました。当日、多くの内外来賓と1200人を超える婦人会各級組織幹部たちが集い、婦人会の団結力を遺憾なく発揮しました。成功的開催のために積極的に協助してきた本団としても、婦人会中央と全国地方組織の幹部たちの労苦を高く評価します。
■□韓半島の平和と安定のために
北の蛮行に再三抗議
北韓は09年5月25日、06年に続いて核実験を恣行しただけでなく、4月には中・長距離ミサイルを立て続けに発射しました。このような蛮行は世界と東アジア、そして韓半島の平和と安定を脅かすものです。これはまた、日本人拉致問題とともに日本に居住する私たちに深刻な打撃をもたらしています。
本団は中央団長の名で、蛮行の即刻中止を求める声明を発表し、北韓労働党の海外支部である朝総連中央に厳重抗議しました。5月31日には東京都心で緊急集会を開いたのに次いで、1000人による平和行進を敢行し、断固とした姿勢を内外に訴えました。国際社会も北韓の蛮行を許さず、国連決議1718号による制裁措置を継続しています。
朝総連中央はこれらを無視するように、韓国大法院が反国家団体と判定した従北団体とともに、北韓に無条件追従しています。北韓の政治運動と連動する「同胞再発見運動」がそれであり、いわゆる「統一旗署名運動」がそれです。
10月16日には「6・15、10・4固守実践海外同胞大会」なる集会を持ち、韓国政府を誹謗する不純な意図を露わにしました。私たちは、この集会に対しても強く糾弾しました。
12月14日は北送事業の第1船が出港して50年になる日でした。脱北者支援事業を重視してきた本団は、特別講演会と決議集会を開催、北送事業がもたらした悲惨な現実を直視し、朝総連中央に謝罪を求めるとともに、被害同胞の救済を誓いました。
■□同胞経済・生活支援運動
「1人1通帳」に底力
日本経済の沈滞状況は在日同胞経済に深刻な打撃になっています。このような状況を少しでも緩和しようと民族金融機関を支援する「1人1通帳運動」を展開しました。韓商連など傘下団体、各級組織と駐日企業、そして駐日公館が一つになって推進した結果、信用組合に281億円、駐日金融機関には71億円の合計352億円の預金が集まりました。これは、痛みを乗り越えて発揮された相互扶助の成果です。
私たちの法的地位に関するものとして、新しい外国人在留制度が09年6月に衆議院、7月に参議院を通過し成立しました。外国人登録法はなくなり、私たちは日本人住民と同じ住民基本台帳に登記されます。特別永住者は「特別永住者証明書」に、中・長期滞留者と一般永住者は「在留カード」に替わります。本団が要望してきた常時携帯制度の撤廃は特別永住者については廃止、再入国許可も事実上なくなったと同然に緩和されました。しかし、中・長期滞留者や一般永住者には制限条件が依然としてあり、再入国許可緩和でも、特別永住者との差を設けています。本団は特別永住者と一般永住者の処遇格差と管理の側面について、今後とも改善を要請します。
「みんだん生活相談センター」は3年目を迎え、09年の相談件数は1400件を数えました。37人の専門家(弁護士16人、税理士11人、行政書士9人、司法書士1人)の温かい協力によるものです。「韓国人旅行社支援センター」も現在43地方本部に設置され、09年は26地方本部に903人が訪れました。
これらは内外から高い評価を受け、本団の役割を象徴する事業になりました。
■□むすび
粘り強く位相高める
与えられた使命の完遂のために全力を尽くしてきました。一つの峠を越えると、また新しい峠を登る感を拭えないとしても、このような粘り強い努力が全在日同胞の願いを具現し、本団の位相を高めてきたと信じて疑いません。
得られる結実は、各級組織幹部の団結と誠実な努力の賜ものです。全国地方本部と支部、そして傘下団体と関連団体の積極的な参与と努力に深く感謝します。そして、本国政府の関係各所からいただいた激励に感謝します。
特に厳しい経済状況の中で、本団の多くの事業を財政的に後押ししていただいた顧問と経済人の皆様に、甚深な謝意を申し上げます。
地方参政権の一日も早い獲得に加え、同胞経済の活性化、次世代育成問題、財政自立、組織強化など、私たちには継続して推進すべき課題が山積しています。これらの成就に努力することを誓いながら、09年度総括とします。
(2010.2.10 民団新聞)