掲載日 : [2010-03-10] 照会数 : 8489
<公立学校>卒業式にチョゴリ映える 同胞教員の想い託して
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在日子第へ無言の激励
東京・尹照子さん
間もなく卒業式シーズン。東京都の区立小学校教員の尹チョジャ(照子)さんは、今年もチマチョゴリを着用して卒業生を送り出す。もう25年以上前から毎年、着用してきた。
チマチョゴリには「在日であることに胸を張って生きていってほしい」という無言のメッセージが込められている。日本人の子どもたちには多様な文化の存在に気づいてほしいという願いからだ。
チマチョゴリを初めて見る保護者や子どもたちからは、「一緒に記念写真を」とせがまれることも多い。6、7年前まではさながら「写真大会」の様相を見せ、尹さんはしばしの間、「スター扱い」されてきた。最近は服装の自由を失った子どもたちから「先生だけ自由な格好ができるの?」と聞かれることも多い。
一方で柱の陰から熱い視線を送る同胞児童の存在も全身に感じてきた。しかし、周囲の同僚には気を遣う。卒業証書授与の補助を担当するときなどは多少派手でもいいが、最近は生活服と呼ばれる比較的色づかいのおとなしい改良型を着用することが多い。
尹さんは韓国人の父と日本人の母親のもと、日本国籍で生れた。教員になってから川崎の在日同胞の地域運動に出会い、同胞児童のためになにかできないかと考えるようになった。改名訴訟を通じて民族名を回復すると「朝鮮文化クラブ」をつくり、卒業式でもチマチョゴリを着用するようになった。息を潜めるかのように学校生活を送る同胞の子どもたちに、出自を隠してびくびく生きてきた我が身を重ねたからだ。今年もひるむ気持ちを奮い立たせながら卒業式を迎える。
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もう一つの〞本名宣言〟
横浜・李智子さん
横浜市内の公立高校に勤務する李智子さんは、1年生を担任したときから「この子たちを卒業させるときには絶対、チョゴリを着よう」と心に決めていた。それが昨年、初めて実現した。
学生時代は通称名を使用し、「韓国人とバレたくなかった」ので着たいとも思わなかった。「チョゴリを着るということは、本名を名乗るというのと同じ意味がある。周りにも民族衣装を着ることが当たり前のことなんだと認めてほしかった」という。
会場に入ると、生徒が「先生がすごいよ〜」とほかの生徒に言って回るのが見えた。保護者からも「先生、かわいい!」と声がかかった。同僚の教員からも「わ〜すごい」と感嘆の声が上がったという。みんなチョゴリを生で見るのは初めてのようだった。李さんはカメラの熱視線を感じながら、「まるでアイドルのようだった」と昨年を振り返った。
李さんは現在、1年生の担任。2年後の卒業式でまたチョゴリを着るのを楽しみにしている。
(2010.3.10 民団新聞)