掲載日 : [2003-06-04] 照会数 : 4783
民族教育コーディネーターのすすめ <上>(03.6.4)
[ 民族学級では民族的な出会いを体験する(大阪市内の各民族学級で学ぶ190人のオリニによるサムルノリ) ]
当事者の思い後押し…学校・行政とのパイプ役に
文教関係者、各地の保護者会活動の参考にしてもらうことを目的にこの文章を書いた。
日本の公立学校における民族教育権の保障は、簡単な課題ではない。多様な働きかけや啓発、行動が必要である。公立学校における民族教育の取り組みが、比較的よく進んでいるとされる大阪でも、民族教育を保障する十分な環境を提示できている状況ではない。
特に、民族学級などを公立学校内で立ち上げようと思えば、時に当事者が学校や教育行政と対峙すらしてしまう場合もあり、当該の保護者(家庭)のみが単独でやり切るのは困難が伴う。そうした緊迫したやりとりの中で、学校・行政と、同胞家庭とをつなぐコーディネーターがいれば、状況は変わる。大阪が幸いだとすれば、私たちのようなコーディネーターが不足ながらもいることではなかろうか。
同胞家庭が、子を通わせている学校に対して民族教育の観点から要望する際、その方法論にわからないことが多いだろう。ましてや少数の立場であり、校内の他の同胞家庭とも連携が取れているわけでもない。学校側は、他の家庭が「おとなしい」ことを理由にうやむやに対応することも少なくない。いや第一声をあげることすら、大変な覚悟がいる。
私は、保護者からの相談が持ち掛けられれば、基本的にその保護者と直接会って話すようにしている。そのため家を訪ねたり、事務所に来てもらったりする。
保護者からの要望を聞いてその対応方法を決めるが、制度的な問題は、教育委員会に対処を求め、学校体制や教員問題は、教育委員会だけでなく、当該市域の教育団体(人権教育研究団体や教職員組合)を通じて、その学校の教員構成や学校の傾向を把握した後、教育委員会に一定の方向性を明示した上で対応を要請し、必要に応じて学校訪問を検討する。
学校訪問の場合は、管理職と面談するが、学校側の警戒心を解くために、教育委員会に学校訪問の予定を入れておき、学校側に伝えてもらう。
当然、こうした関係性を教育委員会と築いておくことが必要となる。
一度だけの学校訪問では、すぐに状況改善につながらない。継続的な対処を念頭に、教育委員会に対し、担当指導主事の学校訪問を求め、経過報告を学校から教育委員会に上げさせるよう指導させる。そしてその経過報告をこちら側とも共有するよう求め、それに問題がある場合、教育委員会を通じて指摘する。もちろん、何度でも学校訪問は適宜行う。
保護者側に学校や教育委員会の状況を説明する際の留意事項は、原則的にすべての情報を公開すべきであるが、学校側の認識が深刻な状況な場合や、教育委員会自体に問題がある場合、保護者にすぐにそのまま伝達することは一旦躊躇した方がいい。
それは、保護者の「学校不信」をより強めてしまうことで、子どもが学校に行けない状況につながることもあるからだ。保護者に対して十分な状況説明を行うためにも、解決に向けた道筋を早くみつけることは大切である。
(2003.6.4 民団新聞)