掲載日 : [2003-09-18] 照会数 : 6146
「ニュースが面白くていいか?」 岡本健吾(NHKソウル支局記者)
韓国でもテレビの視聴率競争は激しい。
先日KBSの報道局長と偶然食堂で一緒になり、視聴率の話になると、局長は「ニュースが面白すぎて困る」と言っていた。
KBSの夜9時のメインニュースは普通20%後半、時には30%を超える視聴率をとる。他局を上回る視聴率を稼ぎながらなぜ困るのか?
さらに問うと、韓国では世間の耳目を集める事件・事故が余りに多すぎるというのだった。
なるほど確かにそうだろう。韓国社会がまだ安定感に欠け、発展途上にあると言えると思うが、ニュースを面白くしているのはそれだけだろうか?
たとえば韓国を直撃した台風14号のニュース。KBSは記者レポートを多用し、雨と風に打たれる記者の姿を映し出してどれほどの猛威か伝えていた。風によろけながら伝える姿は見る者を惹き付けるのは確かだ。
また暴力事件のニュースでは、監視カメラに写った暴行シーンをそのまま放送する。隠しカメラで撮った映像や、取材先が記者に電話で話す「本音」も、無断で録音してそのまま使われる場合が多いと聞く。
これらは、よりリアル感を出すためであったり、通常の映像取材が相手に断られて出来ないための苦肉の策だと言える。
だがこうした演出がニュースを過度に面白くしているとは言えないか?
扇動的にならず、人権に配慮しながら、なおかつ必要な情報を分かりやすく説得力を持って伝えること。記者や番組制作者に共通して求められることだと思う。
自戒したい。
(2003.9.17 民団新聞)