解放直後、全国で繰り広げられた在日同胞の濁酒(どぶろく)闘争とはなんだったのか。一橋大学大学院で歴史学を専攻する在日同胞の研究者、李杏理(イ・ヘンリ)さんが7日、在日韓人歴史資料館「土曜セミナー」でその真相に迫った。
当時、解放とともに全体の6割以上が職を失った在日同胞社会。濁酒造りは飴作りや露天商とともに、生きるための数少ない食い扶持だった。
一方、敗戦の混乱の中で国庫収入を確保したい日本政府も「酒税法違反」で取り締まりを強化した。
ただし、「密造酒」にかかわっていたのは、在日同胞だけではない。にもかかわらず、検挙率だけでみると日本人の3倍に達した。李さんは「在日同胞を犯罪者集団と見るステレオタイプのイメージづくり」が作用したと分析している。それは武装した警官が証拠や令状なしで同胞集落を急襲し、土足で家財道具などを破壊したりした行為でも明らかだ。この単なる経済違反行為が、後に朝鮮人強制送還といった論議につながっていく。
これに対して在日同胞の側も性別を超えた共同闘争で対抗した。女性もヘアピン一つで検挙車のタイヤをパンクさせる行為に出たりした。李さんは濁酒闘争を、「違反せねば生きていけない状況下、民衆が生活と権利をかけた自発的な闘いだった」と結論づけた。
(2014.6.25 民団新聞)