掲載日 : [2003-10-16] 照会数 : 4677
在日同胞に対する民族教育の明日のために-③-(03.10.15)
黄迎満民団中央副団長
再編と改革避けられぬ…教育的な資源有効・集中的再配置を
(1)民族学校教育の将来の改革方向
在日同胞は解放以後、60年近い歳月の間、民族学校の建立と維持、発展に大きな努力を傾注してきました。
一時は、160余個の学校(民団系、総連系を含め、大学から幼稚園まで)を誇っておりました。
しかし、先にお話した通り、同胞社会と世界的な変化に対応できず、生徒数激減、深刻な財政難、そして時代の変化についていくことのできない教育内容などで学校数は激減しています。
特に、朝総連系学校は、手のつけようのない崩壊過程にあります。
90年代末からは毎年、初等部、中等部を含めて、10余個学校が門を閉めており、さらには、総連系信用組合の破綻によって不良債権化し、存立自体が問題となっています。
私たち民団系も同じです。本国政府がそれなりに支援をしていますが、日本社会の流れと同じように、同胞社会の少子化傾向、そして帰化者の増加などの趨勢を見る時、民族学校の将来はそんなに明るくはありません。 以上のような現実と遠くない将来を見ると、民族学校の再編と改革は不可避です。
①民族学校の統廃合と再編
まず学校数の大胆な縮小、統廃合、改編があげられます。
同胞社会の居住数を基準に、初等部は25校(1学級30人、1学年2学級、1校360人平均)〈九州地域2校、中国地域3校、近畿9校、中北3校、関東6校、東北2校〉に、そして中高一貫校は10校(1学級30人、1学年2学級、1校360人平均)〈九州1校、中国1校、近畿4校、中北1校、関東2校、東北1校〉程度だけで充分でしょう。
大学は不必要ですが、専門大学か短期大学を設置すればいいでしょう。 このようにして在日同胞が蓄積してきた教育的な資源(学校、教員)を、有効に集中的に再配置することで、一定の水準を保つことができる教育基盤を再構築できるようになるでしょう。
②学校教育に必要な人的資源の再活用と育成
このような民族学校の再編過程であぶれた教員らと既存の教育者らを「資格のある教員」として、本国の教育人的資源部と協議し、再教育させなければなりません。また、若い世代の民族学校出身者、日本学校出身者を在日同胞教員として育成しなければなりません。
③教育内容と教育水準を国際的に通用するように改革
先にお話した世界的な趨勢である「共生」、「人権」、「平和」と人類の生存のための「持続的な発展」のための先端技術などを基本とする普遍的な内容と合わせて、在日同胞の歴史性と特殊性を生かす教育内容を主とするカリキュラムの自主的な編成が欠かせません。
また、教育の一般的な趨勢である「競争」よりも「共生」という流れがあるが、在日同胞が特殊な異民族社会、日本社会に生きているため、「共生」と共に「競争力」を育て、差別と偏見に勝てる力を民族教育が保障する必要があります。
このような民族学校教育の改革を通じて、同胞就学年齢該当者(11万人と推定)の10%が、民族性と国際性を身につけた人材として育成されれば、在日同胞社会は、今後半世紀は継続維持、発展し、祖国と日本社会に寄与することができるでしょう。
(2)民族社会教育の拡充
在日同胞の民族教育の幅広い基盤は、社会教育を通してのみ可能となります。
過去もそうでしたし、今後もそうであるでしょうが、民族学校教育には制限性があり、2世・3世の90%以上が日本の学校教育を受けてきたという点を勘案する時、特にそうだと言うことができます。
民族的な社会教育面では、民族学校教育の数的な面で劣勢であった民団が、一歩先んじてきました。
70年代中盤から80年代末まで「民族教育50時間」制を、民団が半義務的に実施してきました。90年代に入り、講座制「民族大学」、「土曜学校」、最近では「オリニジャンボリー」等々もそうでしょう。
しかし、民族社会教育も同胞社会と世界的な変化の趨勢に足並みをそろえ、持続的な改革と拡充の努力をしなければなりません。
(2003.10.15 民団新聞)