掲載日 : [2003-10-29] 照会数 : 4580
在日同胞に対する民族教育の明日のために-④-(03.10.29)
黄迎満民団中央副団長
まず全同胞の力結集を…「共同委員会」構成急がれる
①民族社会教育の対象と機会の拡充
まず、全在日同胞が民族的な社会教育に参与できるようにしなければなりません。子どもから青壮年、そして老人たちまで、在日同胞のライフサイクル全般にわたる「生涯学習」という観点から実施されなければなりません。
そして誰でも、いつどこででも、参与できるようにしなければなりません。学校という一定の場所と年齢的な制限を越え、いつでも自分が必要とする時に学ぶことができるように教育空間を広げなければなりません。そのようにしようとするならば、今現在の民族学校が全て社会教育の現場として活用できるように開放されなければなりません。
そして民団をはじめとする民族団体の会館、事務所などもそのように活用しなければなりません。
②社会教育の方法と内容の拡充
IT技術の高度な発達の成果を社会教育の方法面で大胆に利用しなければなりません。特に、マルチメディア(多様な媒体)の発達は、音声、映像、文字そして数字になったデータをデジタル化して提供できるようになり、特に、インターネットを通じて、時間と空間の制約を克服できる教育的な手段を提供しています。
また、社会教育の内容面でも、本国の社会教育の内容と日本社会の社会教育の内容の膨大なネットワークを通じて知ることができますが、先ほどもお話した在日同胞自体の特殊な歴史性と特殊性を盛り込んだ民族教育内容の開発が、まだ充分でない状態です。在日同胞が長い間蓄積してきた資料と、今後起こりうる変化を勘案したソフトの開発もまた急がれると言えます。
③在日同胞社会の教育センターの設立
在日同胞社会の民族社会教育の拡充のためには、IT技術を最大限に活用し、教育的なシステム構築とソフト開発とともに、これを持続的に推進する「在日同胞社会教育センター」を一日も早く設立する必要があります。
在日同胞各界各層の専門家の力を動員して構成される「センター」は、在日同胞の年齢、職業、性別を問わず、いつでも、誰でも、どこででも参与し、学ぶことができる社会教育を保障しなければならないでしょう。
5、結論
21世紀初頭の在日同胞の民族教育の政策方向と提言は、きわめて常識的なものであり、だれでも漠然と感じていることです。問題はこれをどうやって具体化していくかということです。
まず在日同胞自体の意志と能力を結集しなければなりません。そのためには、韓国民団と朝鮮総連が民族教育問題に限っての対話と協力体制が必要です。しかし、両組織が分断国家の一方の国民組織という名分のために組織的な利己主義により、成し遂げられないこともあり、また、時間がかかることもあります。このような場合民団同胞、総連同胞が、在日同胞の将来のために「民族教育のための共同委員会」をまず急いで構成し、在日同胞の意志と力を結集するようにしなければなりません。在日同胞の民族教育の改革の主体は、言うまでもなく在日同胞だからです。
次に、本国政府の在日同胞の民族教育に対する基本方針と中、長期的な計画の樹立が急がれ、これに伴う膨大な財政的支援と人的支援がなければなりません。
在日同胞が民族教育に対する意志があり、能力があると言っても、すでに13年間継続している日本経済の長期不況によって財政的な余力が枯渇しています。勿論、そうだからと言って全面的な政府の財政支援にだけ依存するというのではなく、自発的な努力を通してある程度の条件整備に力を注ぎますが、政府が在日同胞の自発的な努力を後押しするためにも、政府の財政支援が不可避です。政府は在外国民教育という次元より高い次元で在日同胞の民族教育全般に責任をもつ立場からこの問題に取り組まなくてはなりません。
三番目に、日本政府の協助がなければなりません。在日同胞が日本人との共生を願っているという点を日本政府は尊重し日本教育の国際化という趨勢を勘案、在日同胞の民族教育の育成に協助しなければなりません。
以上のような3つの力を合わせて、21世紀の在日同胞の民族教育が具体化しうるし、これを通して祖国と日本そして人類社会に貢献できる独特な民族教育に発展することができるでしょう。
(おわり)
(2003.10.29 民団新聞)