掲載日 : [2003-11-10] 照会数 : 5421
民族学級のゆくすえ 一本化でも懸念消えず(03.11.12)
文言消えた「外国人多在籍加配」
他の加配制度と統合 「児童生徒支援」に
文部科学省は今年度から省令で外国人児童生徒多在籍加配制度を他の加配制度と統合、「児童生徒支援加配」として大括り化した。「外国人多在籍加配」の趣旨そのものは新制度でも引き継がれているが、文言が消えたことで、在日同胞多住地では来年度以降、在日同胞児童生徒の民族教育に影響がでるのではと心配する声も上がっている。
文科省は3月まで「日本国籍を有しない児童生徒の在籍が全校の10%以上」を基準に各都道府県に対して教員1人の加配を認めてきた。「公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律」の「地域の社会的条件」(第15条第2項)の規定に基づき、文部科学省令(施行令)によって示されている。 外国籍児童生徒の集住している大阪市や神戸市などでは、同胞父母らが外国人児童生徒加配対象校であることを根拠に「民族学級」の設置を要望してきた経緯がある。
しかし、文科省の施行規則改正により今年4月1日からはこの明文規定がなくなり、「児童生徒支援加配」という大枠の中で処理されている。この大枠の中で外国人児童生徒多在籍加配制度の趣旨を引き続き維持するかどうかは都道府県教委の判断にゆだねている。
大阪府教育委員会教職員課によれば、今年度は改正初年度にあたることから従来どおりの加配措置をとったという。だが、外国人児童生徒加配対象校であることを理由に「民族学級」の設置を要望する運動が進行中の大阪市や神戸市では「今後なんらかの影響が出てくるのでは」と憂慮されている。
文科省では「省令改正前は加配制度を柔軟に活用してこなかった。地方分権という流れの中で各都道府県の自由度を高めた。県からは地域密着でやれると歓迎されている」と話している。
大阪市教育センターの宋英子研究官は「今、行政として見直しが必要なのは、『加配』を削減することではない。『加配配置校』でどのような教育効果を上げてきたのかを総括し、『加配』がうまく運用されていない学校に教育効果を高める教育実践を求めることである」と指摘している。
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「教育委員会と認識共有を」 同胞の声
神戸市内で10年来、民族学級設置を求める取り組みを進めている「神戸在日韓国・朝鮮人児童生徒保護者の会」代表、金信さんは「行政の自由裁量ということは保護者会にとってもこれからが正念場だ。力関係で負けないよう保護者1人ひとりが民族教育を必要とする声をあげ、学校と教育委員会を突き動かしていくしかない」と呼びかけている。
また、公立学校における民族教育の制度保障に取り組む民族教育文化センターの金光敏さんは「この児童生徒支援加配の要求基準は地方教育委員会に委ねられている。日本籍の同胞児童生徒はこれまで加配の対象とならなかったが、これを加配基準にカウントしたり、先進実践校への重点配置も可能。今後ますます地元教育委員会との認識の共有が必要だ」と話している。
(2003.11.12 民団新聞)