掲載日 : [2016-04-06] 照会数 : 7729
<国会議員在外選挙>政治の安定願う…情報少なく不満も
[ 窓口で本人確認を受ける在外選挙人(東京の韓国文化院) ]
[ 埼玉韓国会館内に設けられた第2投票所 ]
安保、経済に関心
第20代国会議員を選ぶ在外投票が4日、締め切られた。6日間の投票期間中、比例代表で支持政党を選ぶにあたって、在日同胞はどのような思いを託したのか。投票を終えた有権者たちに聞いてみた。北韓が核・ミサイル開発を続けているなかで、主要政党が最重点に置いた雇用・福祉という内政問題よりも、在外同胞の立場から安保の確立と政治的な安定を第一に求めたようだ。
早朝から行列も
駐日大使館管轄区域内の第1投票所が設けられた韓国文化院(東京都新宿区)は投票が始まった3月30日8時から20人余りの行列ができた。
河貴明さん(婦人会東京本部会長)は、「与えられた権利を行使してこそ、国民であるという実感を覚える。ただ、わが国は小さい国なのに登録された政党が多すぎる。誰が大統領になっても協力するような政党の在り方を望む」と話す。
河榮希さん(婦人会東京本部監査)は「いまの北との悪い関係を、早く解決して平和な韓国にしてほしい」と希望を語った。
崔金粉さん(婦人会中央本部顧問)は「いまの左派勢力には期待していない。大統領の強力なリーダーシップで韓日関係を牽引していってほしい」と述べた。
一方、崔相英さん(体育会中央本部会長)は経済の活性化を重視した。「日本と同じで輸出への依存度があまりに高すぎる」と心配している。安世敏さん(民団東京・荒川支部顧問)も「韓国に少しでもいい政治をしてもらいたいと願い、大事な1票を投じた」。やはり安保よりも経済を重視したという。
19歳となってこれが初めての在外投票参加となった鄭昌晃さん(学生会中央副会長)は選挙立会人も務めた。「韓国の平和を祈って投票した」と語った。
文春子さん(慶尚南道道民会副会長)は「政治の安定と雇用が第一。国民に仕事場を与えてくれるということが一番」と述べた。
韓国文化院投票場で選挙管理委員長を務めた尹龍澤さん(創価大学法務研究科長)は、「前回よりも在日の思いが実現して投票しやすくなった。在日同胞の要望が反映されればと願っている」と話した。
歩行が困難なため、長男に付き添われ、バス、タクシーを乗り継いで駐横浜総領事館の投票所(神奈川韓国会館)に駆けつけた横浜市在住の金花子さん(91、2世)は、「歩けないから交通費もかかりますが、女性初の大統領の残り任期が政治的に安定してくれれば、との一念で投票しました」と語った。
地元での票行使
今回は4年前の国会議員選挙や大統領選挙のときよりも6カ所投票所が増えた。駐日大使館の第2投票所となった埼玉韓国会館(浦和市)で投票した在日同胞からは、「地元で投票できて助かる」と歓迎する声が聞かれた。
所沢市から足を運んだ60代の金今順さん。「韓国文化院に行くよりも1時間は近い」と笑顔を見せた。投票先を聞いたところ朴大統領の手腕に期待し、「彼女の助けになれば」と語った。同じく60代の鄭英子さんも「(朴大統領の)お父さんのことが忘れられない」と語った。50代の牟浩一さんは高齢の母親を伴って投票した。各党の政策は「民団新聞」で見た。外交を重視という。
丁海龍さん(民団中央本部常任顧問)は、「どの政党を選ぶかの判断材料が少ないようだが、少なくとも私たちは、核やミサイル開発を止めない北韓の脅威がなくなるまで、韓国を守るというしっかりとした安保意識と政策をもった政党を選ばなくてはならない」と強調した。
政策にコミット
駐大阪総領事館で1票を投じた金秋江さん(婦人会大阪本部会長)は「大統領選とはまた違った感じだが、韓国に関心を持つ意味では大切な1票」と述べた。
同じく金琳泰さん(青年会大阪本部代表監査)は「在外選挙を戦略的に活用し、政策にコミットしていく必要があると思う。韓国の政治に関心を持てないという声をよく聞くが、韓国国内や国外に居住する一人ひとりにとってよりよい政治になるよう、最善の選択をすることが有権者としての務めだという、その思いで臨んだ」と語った。
また、黄清子さん(婦人会岐阜本部常任顧問)は「初めて投票を経験したときのようなうれしい気持ちになった。この1票が少しでも祖国の役に立つように、との思いです」と話す。
梨花さん(京都市、舞踊家)は、「海外同胞の一人として投票する。選挙は最低の国民の義務だから。投票行為とその結果を通じて、すべての同胞が幸せに過ごせたらうれしい」と願った。
韓久さん(民団三重本部事務局長)は、「大統領選挙に比べて、やはり同胞の関心は低い。情報が少ないとよく言われる。大統領の属する政党しか知らないのが実情のようだ。在日の歴史を韓国の教科書に載せる動きがあることも含め、在日に対するメッセージや政策を具現化する政党を選びたい。政権が変わるたびに在日政策が変わるというのではなく、目に見える形での本国からのバックアップを確立してほしい」と語った。
(2016.4.6 民団新聞)