掲載日 : [2004-01-14] 照会数 : 3872
警察署の一夜 橋田欣典(ジャーナリスト)
年末に知り合いの韓国人女子留学生から怒りのメールが届いた。同居している韓国人女子学生が夜中にコンビニにアイスクリームを買いに行ったところ「旅券不携帯」で警察署に連行され一夜を過ごすはめになったのだ。
早朝に警察から電話連絡を受けた彼女が、家から署に友人のパスポートを持って行っても警官は解放を渋り続ける。「罪のない人間の拘束を続けるのは暴力だ」「担当者の名前を言え」と猛烈に抗議して、やっと『奪還』に成功したそうだ。そもそも女子学生を署に一晩拘束する話なのだろうか。最近、不法滞在の外国人対策がかまびすしく語られるが、こんな形で「摘発件数」を増やしているとしたら、ゆゆしき事態だろう。
日本は単純労働のための外国人滞在を「建前」では禁止している。しかし食堂で、工場で、工事現場で一日中、単純労働をしている外国人が多数いることを日本人全員が知っている。この矛盾の中に暮らす「不法滞在者」全体を諸悪の根源と決め付けて、自分たちが彼らを低賃金で利用していることには目をつぶる偽善がまかり通る。
不法滞在者を減らす方法は簡単だ。まじめに働いている単純労働者の存在を認め、きちんとした在留資格を与えて職場での差別待遇を禁止すればいい。ヤミであるからこそ賃金は安く、裏社会への道も通じる。
「私たちは日本人に連れて来られ、日本人のために働き、日本人に追われている。私たちっていったい何なんだろう?」。石原慎太郎知事の「三国人発言」直前に聴いた涙ながらの片言の日本語は、私の耳に今もはっきりと残っている。
(2004.1.14 民団新聞)