掲載日 : [2017-11-29] 照会数 : 7732
ヘイトスピーチ禁止法を…国連人権理が勧告
[ 会見する李根・民団人権擁護委員長(中央) ]
ネットでは今も横行
日本政府に差別根絶へ対処求める
民団中央本部人権擁護委員会(李根委員長)は22日、国連の人権理事会UPR(普遍的定期的審査)に関する記者会見を開いた。国連人権理事会が14日、日本政府に対して第3回審査を実施し、16日に結果を発表したことに基づいたもの。会見には李委員長と金昌浩委員(弁護士)が出席し、人権擁護委の国連への政策提言が「人種差別・ヘイトスピーチに関する勧告につながった」と報告し、今後も「ヘイトスピーチ対策法」への罰則導入など法改正運動を継続することを改めて確認した。
李委員長は「14日の国連人権理事会の審査で日本政府に対して、全191加盟国中106カ国が218の勧告を出した。ヘイトスピーチへの実効的な対処と、ヘイトスピーチにとどまらない構造的な人種差別の問題に対する法的対処も図られていないことが明らかになり、それが今般の勧告につながった」と評価した。
人種差別撤廃に向けた施策を勧告した国は30カ国で、オランダ、ノルウェー、ドイツなど14カ国は、差別禁止法の制定を勧告した。多くの国が日本の人種差別・ヘイトスピーチに懸念を示していることの表れだ。李委員長は「日本政府は迅速かつ誠実にこれを受け入れ、実施するよう求める」と強調した。
ヘイトスピーチについては、昨年6月に「対策法」が施行されたものの、ネット上でのヘイトスピーチは放置されており、オーストラリア、メキシコなどからさらなる対策実施の勧告が出された。
民団人権委は、今年3月に発表された法務省の「外国人住民調査報告書」で、日本における外国人住民は、今なお入居差別・就職差別などに苦しんでいる。ヘイトスピーチ対策法施行後、ヘイトデモの回数、参加者数は減少するなど、一定の効果は出ているものの、インターネット上のヘイトスピーチは依然としてし烈だ」と批判してきた。
李委員長は「今回の勧告は、国連加盟国が国際人権規約等に照らした厳正な検討を行った上で表明されたものだ」と明らかにした。金委員は「東京オリンピックを控えて、人種差別に対処するための法的枠組みを欠いたままでは『人権大国』」の実現は不可能だ。速やかに多文化共生社会の実現に向けた具体的施策に反映させるべきだ」と述べた。
民団人権擁護委員会は、UPR審査の事前準備のための情報提供として、民族的マイノリティーの権利の否定、人種差別禁止法の不在、ヘイトスピーチ・ヘイトクライム、永住外国人の地方参政権の欠如、公務就任権の制限‐など在日韓国人が直面する問題に関する報告書を今年3月に国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に提出したほか、11月に人権擁護委員をジュネーブに派遣し、政策提言活動実施など、UPR審査に対して働き掛けてきた。
日本政府は18年3月までに今回の勧告の受け入れ可否を決めることになるが、民団は今回の勧告を追い風と受け止め、ヘイトスピーチ根絶に向けた運動をさらに加速させていく。
(2017.11.29 民団新聞)