掲載日 : [2018-02-28] 照会数 : 8471
第72回定期中央委採択「18年度基調」(要旨)
[ 韓国中央会館で開かれた第72回定期中央委員会
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同胞社会の「大統合」めざして
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はじめに
韓日「新時代」を期待
反ヘイト 対策法強化求める
韓国政府樹立から今年は70周年を迎える。日本植民地からの解放後、新たな出発を始めたわが国であったが、わずか数年後には北韓の侵略による韓国戦争を経て全国土が荒廃した。世界の最貧国のひとつであった韓国は「漢江の奇跡」と言われる驚異的な発展を遂げ今や世界に誇れる経済先進国となり、また幾多の葛藤をかいくぐりながらも民主化された国家となるに至った。
この成果は全ての国民が額に汗し血のにじむような努力を重ねてきた結果であり、併せて私たち在日同胞が1世の時代から祖国の発展を願い貢献してきたことも大きな力になったことに疑いを持つものはいないであろう。在日同胞の祖国発展への貢献や6・25韓国戦争への学徒義勇軍の参戦などについて、今年も引き続き韓国の中学・高校教科書に掲載されるよう運動を継続していく。
また、在日同胞は今後も祖国大韓民国と苦楽をともにしつつ歩んでいくことをこの機会に改めて確認しておきたい。今年の光復節は政府樹立70周年を迎えるに相応しい雰囲気で臨んでいく。
昨年の文在寅政権の発足以来、韓日間では首脳のシャトル外交の再開や対北政策について意見の一致を見るなど、ここ数年停滞していた関係の改善に向けて大きな成果を上げ、在日同胞の間でも安堵の空気が生まれ始めていた。
在日同胞が心を痛めていることのひとつに慰安婦問題がある。2015年の韓日政府間合意に対し韓国政府が今年初め新方針を打ち出したことで、日本政府との間でまたもや緊迫が生じている。本団としては、「韓日合意は守られるべき」という基本的な立場から、合意に沿って両政府間での調整が行われ一日も早く解決されることを願うばかりだ。
2018年は、過去の不幸な韓日間の歴史について小渕首相が「痛切な反省と心からのおわび」を表明したのに対し、金大中大統領が「和解と未来志向的な関係を発展させる」と応じた画期的な「韓日パートナーシップ共同宣言」を発表してから20年に当たる年であり、第2の韓流ブームと言える新たな友好時代の幕開けに繋げていくことを期待したい。
韓日間の政治的な問題による葛藤が原因となり、日本国内では韓国に対する視線が厳しくなっている。各種世論調査の数字にも韓国に対する好感度の低下となって表れると同時に、公然と韓国人を標的として人格を貶めるヘイトスピーチとなって表出してきた。
本団の力強い運動によって2016年に「対策法」が制定され、ヘイトスピーチの撲滅に大きな効果を発揮し始めている。しかしながら数は減少したとは言え今も各地の街頭でヘイトスピーチ行動は続いている。私たちは「対策法」に禁止規定や罰則を設けることを求めていくとともに、地方自治体での条例制定の促進によってヘイトスピーチの根絶に向け引き続き活動していく。
併せて全国の日韓親善協会と連携し韓国関連の市民講座実施や市民交流の活性化に尽力する。韓日間の懸け橋を自認する本団は、このような活動を通じて日本国内に蔓延している「嫌韓」ムードの改善に尽くしていく。
朝鮮通信使関連記録を「世界の宝」として関係日本人士らと連携をとりつつ保存管理を担うなど地域社会での友好の輪を一層広げ、今後も韓日間の懸け橋の役割を積極的に果たしていきたい。
また、地域住民として共生社会の実現に向け地方参政権は必ずや獲得していかねばならない。地域社会から理解の輪を草の根的に広げる努力を引き続き行っていくのはもちろん、国際人権機関への要望活動などを通じた国際社会に対する世論喚起も行っていきたい。
私たち在日同胞は、開催中の平昌冬季五輪・パラリンピックが引き続き成功裏に進行されることを強く願っている。北韓の参加により韓半島に不慮の事態が勃発する可能性は低くなったと言われている。ただ、より重要なのは平昌冬季五輪・パラリンピックの終了後も韓半島の平和と安定が図られるかどうかだ。
本団は北韓の核・ミサイル開発に断固反対する姿勢を繰り返し表明してきた。韓国政府が進める北韓との直接対話を通じ、関連国との緊密な連携のもと核・ミサイル問題の解決へと進展することを期待する。
南北間での各種対話の活発化が日本へも拡散する可能性がある。本団と朝総連との対話については、朝総連が北韓の核・ミサイル開発を称賛する姿勢を改め、同時に北韓の暴走を止めさせるための働きかけを行うことや、北韓による日本人拉致問題の解決に向けた努力を示すことが先決であろう。でなければ在日同胞全体からの支持を得られないばかりか、韓国社会、日本社会からの支持も得られないだろう。
本団は全民族の悲願である祖国統一に高い関心を維持している。祖国が統一を成し遂げ、より発展してほしいと素朴に願うからに他ならない。祖国の平和的統一に向け大統領直属の憲法機関である民主平和統一諮問会議などの関係機関と緊密に連携を取り合い事業を推進していく。日本に定住する北韓からの脱北者の支援を継続していくとともに、北韓の実情に対する正しい認識を促す一環として脱北者による北韓社会の実像を同胞社会に伝えていく活動も幅広く行っていく。
在日同胞社会が構造的に大きく変化しているのは周知のことだ。これまでのように韓国籍者を中心とした組織として運営していくのか、日本籍同胞や新定住者を網羅した全同胞を対象に開放的な組織として運営していくのか、今こそ将来の民団像を見据えつつ対応すべき時に来ている。
創団70周年事業の一環として研究を重ねてきた「未来創造メッセージ」の実践化を急ぐべきであり、規約改正を含め民団の大胆な改革が急務と言える。本団が主催する次世代事業への参加者(初・中・高・大学生)のうち、韓国籍者は半数にも満たず、既に全国地方本部の三機関と傘下団体の役員の3割は日本国籍者や新定住者が就任し活躍しているというのが実情だ。韓国籍者以外の同胞も幅広く参加でき、責任ある部署にも就けるよう組織をより開放する方向に一歩を踏み出すのみである。
「未来創造メッセージ」を具体化した提言には「在日同胞の経済事情の深刻さからして、民団は経済活動での貢献が必要とされている」と経済分野での新たな取り組みの必要性が訴えられている。今年度は生活支援事業の一環として、特に次世代(若手)経営者を対象とした事業を開発していく。
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重点方針
2万世帯訪問運動
地域同胞ネットワーク作り
在日同胞社会は韓国籍者(新旧定住者)、朝鮮籍から韓国籍への変更者、日本国籍者、複数国籍者など〞多様化〟が激しく進んでいる。本団はこのように多様化した同胞社会の統合を目指し、将来に亘って引っ張っていくべき使命を有している。同胞にとって有益な情報を幅広く発信していく一方、災害など緊急時の連絡網として活用すべく全同胞世帯のネットワーク化を目指し全国で2万世帯を訪問し名単の収集・整理を大々的に展開する。地方本部と支部を選定し全国の模範となるべく集中活動を行う一方、地方本部のPC機材やソフトの統一を指導、名単入力に必要な研修の実施も進める。
統括局長の派遣
昨年、四国4県で試験的に行った実績を踏まえ今年度は地域を増やして実施していく。過疎地方本部は事務局長、実務者が孤軍奮闘しつつも団費の徴収、名簿の整理もままならない状況にある。中央本部から統括局長を派遣し複数の地方本部を巡回しながら事務局長、実務者を補佐し、業務を円滑に遂行していく。
民族的アイデンティティー確立
在日同胞社会がすでに3世・4世の時代に入り、在日韓国人としての民族意識が年々希薄化しているのが現状だ。本団は民族主体性を維持発展させる一環として、今年も引き続き各地のウリマル・ハングル教室の普及・拡充を目指す。ウリマルの自習雰囲気を高めるため韓国語の弁論大会への参加を推奨していく。
次世代を積極的に育成する事業として、2年に1回開催する小学生を対象とした「オリニジャンボリー」を実施、中・高・大学生を対象とする「次世代サマースクール」、大学生を対象とする「大学生ジャンボリー」も併せて実施し、若い世代を対象とした本国訪問事業を展開する。文化芸術活動としてMINDAN文化賞や「10月のマダン」も継続実施する。
在日同胞生活支援事業
就職フェアは本来、在日同胞学生・青年に対する事業であるが、昨今の本国における若者の就業難を座視することなく、今年度は留学生をも対象に組み入れ例年以上の規模で就職フェアを拡大実施していく。
生活相談センターは昨年、すべての地方協議会に設置を終えた。今年度は地方センターに対する業務を支援し、全国化の継続推進と地方センターの隘路解決を進めていく。在日同胞関連の養護施設に対する支援の一環として、施設実態(施設数、入居同胞数など)の調査を行うなど、社会的弱者への支援事業をより一層力強く進める。
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むすび
組織基盤を整備
組織運営をスムーズに運ぶための組織基盤強化も重要なテーマとなる。
本団各級組織が保有する土地・建物など不動産の所有権確認を進め、民族財産の保全強化を図っていき、財政面では電力小売自由化による収益事業の拡大を進めていく。同胞過疎のある地方本部はこれまで慢性的な財政難に苦しんできたが、今般の電力小売自由化による収益事業をうまく活用し今年度以後は相当の収入を得ることになる。他の地方本部でもぜひチャレンジしてほしい。
民団新聞の発行が継続できるかどうかの瀬戸際に立たされている。ここ数年、収入の増加と支出の削減に努めてきているのは周知の通りだが、今年度は財政健全化に向けより一層大胆な施策を進めたい。昨年、収入増加策として初めて導入した「民団新聞サポーター」や郵送協力金の制度は引き続き実施していく一方、支出削減の面で大鉈を振るいたい。約半年をかけ実質的な購読者を調査し、その結果を直送数に反映することで発行部数の適正化を進めていく。併せて新聞に代わる媒体としてSNSなどの開発と活用を研究していく。
中央本部は新たに第54期の3機関が発足する。組織内のみならず韓日関係など内外に課題が山積する中での出帆となるが、中央委員、代議員の皆さんをはじめ全国の地方本部・支部・傘下団体の幹部、団員の皆さん、そして駐日大使館をはじめ本国の関係機関の積極的な協力をお願いし、新たな一歩を踏み出していきたい。
(2018.2.28 民団新聞)