掲載日 : [2018-07-25] 照会数 : 5754
「差別撤廃へ不断の努力」…『人権白書』講演会 宮城で開催
[ 『在日コリアンの人権白書』の執筆者を講師に、民団宮城県本部で開かれた講演会 ]
【宮城】今年2月に民団中央本部人権擁護委員会(李根茁委員長)が編纂した『在日コリアンの人権白書』の執筆者を講師にした講演会が12日、民団宮城県本部で開かれ、同胞や同本部の韓国語教室に通う日本人ら約60人が出席した。
宮城県本部の金政郁団長は「全国に先駆けて今日と30日に私たち在日同胞の人権問題を学ぶ。皆さんの役に立つ有意義なものにしたい」と主催者あいさつをした。
講演の趣旨について、李委員長(中央本部副団長)は「在日同胞に対する差別状況を改善しようと声をあげた同胞のこれまでの闘いが、在日同胞の人権状況だけでなく日本社会をも変えてきた。さらなる人権向上のために、ともに学び実践しよう」と強調した。
講演は在日韓国人法曹フォーラムの一員で、人権擁護委員でもある2人の弁護士が担当した。
まず殷勇基弁護士が「在日コリアンの人権‐法的地位と国籍」をテーマに解説した。「日本政府は植民地支配によって私たちに日本国籍を押しつけながらも、1952年4月28日に日本国籍を強制剥奪し、国籍がないからと様々な権利を奪ってきた。在日同胞が日本に住むようになった経緯も教えてこなかった負の歴史がある」と批判した。
さらに「この100年間、西側先進国で永住外国人に地方参政権を付与せず、公立学校の主任にもなれないのは、非常に稀なケースだ。帰化同胞も含むと在日同胞は100万人。日本の人口の1%になるが、この事実が日本社会で共有されていない」と指摘した。
張界満弁護士は「過去の差別実態と民団の権益運動」について解説した。
74年の日立就職差別事件、05年の地方公務員上級職・管理職をめぐる最高裁判決など実例を挙げた上で、77年に弁護士、82年に国公立大学教員、83年に弁理士から国籍の壁が取り除かれた事実に着目。民団が77年に「在日韓国人の生活擁護のための人権宣言」を発表し、行政差別撤廃運動に取り組んだのも功を奏したと評価した。
その一方で入居差別や高齢者の無年金問題など未解決の問題があると指摘。「人権は憲法や人が守るものではなく、不断の努力で勝ち取るものだということを肝に銘じるべきだ」と締めくくった。
金東暎監察委員長は講評で「差別されている私たちが、他の社会的弱者を差別している可能性もある。学習を継続しながら、自らの人権意識を直視しよう」と参加者らに訴えた。
(2018.07.25 民団新聞)