2018年は2月に第54回定期中央大会で任期満了にともなう改選が行われ、単独候補の呂健二(前中央議長)が無投票で第50代中央団長に選出された。就任した呂健二団長は民団72年の伝統と蓄積をふまえ「団員の生活を守ること、韓国と日本両国の友好と地域社会に貢献すること」を最優先に掲げ、前執行部から引き継いだ18年度方針を積極的に推進してきた。
地方では、3月に48地方本部中、22地方本部で役員改選され、12地方本部で新しい団長が選出された。(神奈川、山梨、西東京、静岡、岩手、岐阜、三重、石川、大阪、兵庫、京都、奈良、滋賀、岡山、鳥取、島根、山口、佐賀、鹿児島、沖縄、香川、高知)。
◆19地方本部で70周年
民団創団70周年を祝う記念式典が19地方本部で盛大に開催された。長年、民団は生活者団体として地域社会の理解を得ながら協力と信頼関係を培ってきた。創団70周年を契機に多様な記念交流行事や写真展等を催し、民団のために尽くしてきた先輩たちに感謝するとともに、次世代育成と韓日友好増進への決意を新たにした。民団は日本社会の発展と多様性に貢献しているとの賛辞も多く寄せられ、新たな民団の飛躍を確認しあった。(宮城1月27日、青森6月11日、富山7月15日、埼玉7月26日、栃木7月27日、鳥取8月5日、大分8月11日、群馬8月15日、熊本9月10日、徳島9月17日、愛媛9月29日、広島10月16日、三重11月4日、和歌山11月10日、山口11月11日、奈良11月11日、岡山11月13日、長野12月2日、滋賀12月2日)
◆南北首脳会談と米朝首脳会談
2018年は南北関係が急速な進展を見せた年である。2月の平昌五輪以後、4月27日に11年ぶりとなる南北首脳会談が分断の象徴である板門店で開催され、「韓半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」が共同発表された。
6月12日には、世界が注目する中、米朝首脳会談がシンガポールで開催された。長い間、敵対関係にあった北韓と米国の首脳が会談を持ったのは史上初めてである。両首脳は共同合意文書に署名し、北韓は「完全な非核化のため努力する」ことを約束した。
9月18日には、平壌で南北首脳会談が11年ぶりに開催され、民族的和解と協力、確固とした平和と共同繁栄のための「9月平壌共同宣言」が発表された。
韓半島で戦争は2度と起こってはならないというのが私たちの強い思いである。南北関係の改善と北韓の非核化は、北韓が国際社会に開かれ、人権を尊重し民主化する大きな好機であり転換点である。
南北間、国際間の対話と交流を通じて、韓半島の平和体制が恒久的に構築され、北韓が早期に核保有と開発を完全放棄し、平和へ向けて「新しい歴史」を開いていくことを本団は強く期待するものである。
ネットワークを作ろう!戸別訪問
◆民団再生へ基盤強化…緊急時の連絡網整備
4月に開催された前半期全国地方団長・中央傘下団体長会議で、「ネットワークをつくろう」全国2万世帯戸別訪問活動を展開することが確認された。組織の原点に立ち返り、戸別訪問活動によって団員、同胞との絆を深め、あわせて緊急時の連絡網の整備を図ることを目的とした組織基盤強化活動でもある。
5月15日の関東地方協議会を皮切りに四国、九州、中国、近畿、東北、中北の順で地方協議会を開き、団員の居住実態の把握、団員と民団との絆を深めるだけにとどまらず、災害や緊急時に団員の安否を確認するための非常連絡網づくりを周知徹底した。創団70周年事業と重なり、活動が出遅れた地方もあったが、「すべての同胞のための生活者団体」という民団のイメージアップを図り、同胞間のネットワークづくりと新定住同胞への働きかけも視野に入れた活動を展開した。
◆組織改革委員会を設置…民団未来像探る
民団の現行の制度、機構・機能を抜本的に再検討し、これからの時代に対応できる組織に整備するための提言をまとめることを目的として5月に設置した。当面、民団組織全体の現状を分析し、改革の青写真を作成する作業を行っている。また、規約委員会と共同で、全国の組織幹部2607人を対象に、組織機構に関するアンケート調査を実施した。
◆対馬支部結成
この間準備を重ねてきた長崎県対馬支部の設立総会が10月に開催された。市内在住の同胞、中央本部、長崎県本部、駐福岡韓国総領事館、対馬市、朝鮮通信使縁地連絡協議会らが結成を祝った。対馬には年間約40万人の韓国人観光客があり、それらへの対応も含めて地域自治体は「民団」ができたことを歓迎した。12月には新事務所に移転し、民団支部と韓国人旅行者センター開設の懸板式を取り行った。韓日友好・共生促進、韓国観光事業者対策など、民団が地域行政と公館と三位一体となって、増加する韓国からの旅行者と対馬を結ぶ懸け橋としての役割を果たしていく。
◆婦人会大研修が40周年
創立以来、民団を支えてきた婦人会の全国巡回大研修会が40周年目を迎えた。一年も休むことなく継続してきた歴代会長陣に深い敬意を表する。6月、東北地協から始まった大研修会は多様な講師を招き、同胞社会の課題や周辺情勢について学んだ。
また婦人会は10月に全国規模の本国研修会をソウルで開催し、持続して安定した在日同胞社会の構築のために活動していくことが確認された。
◆韓国国体で在日が7連覇
第99回韓国国体・全羅北道大会が10月、益山公設運動場で開催され、体育会が主導し選手・役員130人で構成された在日同胞選手団が金11、銀8、銅4個を獲得し、18カ国の同胞で競われた海外同胞部門の総合優勝を飾り、連覇の記録を7と更新した。在日同胞の結束と和合・統合にも良い影響を与えるものである。
◆ヘイトスピーチ許さぬ
ヘイトスピーチが社会問題化して16年6月にヘイトスピーチ対策法(解消法)が施行された。それを補完するため、公共施設におけるヘイトスピーチを制度的に防止するガイドラインや条例の制定に向け、同胞多住地域の8地方本部を重点対象に活動を進めてきた。
東京都では10月に、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」(人権条例)が成立した。都道府県レベルとしては初めてで、第8条に不当な差別的言動に取り組む章を設け、ヘイトスピーチが事前に予見されたり、安全が確保できなければ、都が事前に設けた基準に従い、保有する公的施設の利用を制限できるとした。
同様の条例は東京都世田谷区で、またガイドラインが川崎市、京都市で制定された。ただ、川崎市は「ガイドライン」を施行したにもかかわらず、極右団体に公共施設の使用許可を出したことが大きな問題となった。本団はこれを問題視し、5月、川崎支部と神奈川県本部、中央人権擁護委員会の連名で市長宛に申入書を提出した。
大阪高裁は6月、インターネット上の差別的な投稿をまとめた記事を掲載したサイト「保守速報」の男性運営者に対し、「人種差別、女性差別の『複合差別』に根差すもので非常に悪質なもの」とした一審の大阪地裁判決を支持し200万円の損害賠償を命じた。原告は在日同胞の女性フリーライターである。
東京弁護士会では9月に「ヘイトスピーチ対策法(解消法)」施行から2年を迎えたのを機に、人種差別を許さない禁止規定を設け、過料・行政罰も適用した「人種差別撤廃モデル条例案」を取りまとめ、全国の地方公共団体に対して条例制定を促した。何よりも「対策法」以降目立って増えてきたインターネット上のヘイトスピーチを削除させる制度的な対処への取り組みが必要である。
◆国連に要望活動…人権擁護委員会
8月に行われた国連人種差別撤廃委員会による日本政府審査に際し、当事者として同委員会に正しい情報を提供するために委員3人をジュネーブに派遣した。8月30日には、日本政府に対してヘイトスピーチなど在日韓国人への差別実態について勧告が出された。
とくに、「ヘイトスピーチ対策法」の改正をはじめ、ヘイトの被害者救済を強化するため、人種差別禁止の包括的な法律制定を日本政府に求めた。また、ヘイトを行う加害者に対する制裁とインターネットやメディアのヘイトに対する措置も勧告された。警察官や検察官などに対する「ヘイトスピーチ対策法」の研修実施と、政治家やメディア関係者によるヘイトスピーチを調査し、制裁を科すことも求めた。
人権擁護委員会では2月に発刊した『在日コリアンの人権白書』を教材に、大阪、宮城、広島などで「人権講座」を開催し、在日の当面する人権問題について学んだ。
◆地方参政権獲得の再構築
この間、ヘイトスピーチ根絶運動等で見合わせていた地方参政権獲得運動は、改めて民団幹部や団員の共通認識を再構築するため各種会議や研修の場で啓発に努めていくことを確認した。
今回の国連・人種差別撤廃委員会の勧告では永住外国人の地方選挙権が取り上げられ、「在日コリアンが何世代にもわたって地方選挙で選挙権を行使できないこと、公権力の行使または公の意思形成の参画に携わる公務員に就任できないことを懸念する」と示した上で、「選挙権行使の確保と公務員就任確保」を日本政府に勧告した。
地方選挙権を付与しないことは差別であるということを人種差別撤廃委員会が言及したのは初めてであり、画期的なことである。民団人権擁護委員会があきらめずに粘り強く審査委員等に働きかけたことが今回の勧告に繋がった。
◆生活相談センター
団員・同胞の生活相談に応じることが民団の本来業務の一つである。法律や税務の悩みを抱えていても、専門家事務所は敷居が高いと感じている同胞に、気軽に足を運んでもらう「みんだん生活相談センター」は、静岡に15番目のセンターを開設した。また、相談業務のさらなる拡充に向け、「家族関係登録(旧戸籍制度)」診断キャンペーンを兼ねて、北海道や岡山等で意見交換の場を持った。中央本部の「みんだん生活相談センター」の年間相談件数は約950件、全国民団の韓国人旅行者支援センターの相談件数は約1913件にのぼっている。
7月には、就活中の在日韓国人や韓国人留学生を応援する民団中央本部の第5回「就職フェア・韓日合同企業説明会」を開催し、10社13人が内定した。
◆10回目のオリニジャンボリー
次世代たちが母国に一堂に集い、民族にふれ、仲間どうしの絆を深める「2018在日同胞オリニジャンボリー」が7月28日から4泊5日間、ソウルで開催された。北は北海道、南は沖縄まで全国から参加した350人の在日同胞オリニと、その世話をするリーダーとスタッフ合わせて約450人の次世代たちが母国でひとつになった。
2001年から始まったオリニジャンボリーは今回が10回目。メモリアルにふさわしく定員を大幅に上回る参加申請があった。期間中、ソウル市内オリエンテーリング(スタンプラリー)、本国児童との交流(韓国の小学校体験入学)、キッズ大パーティ、遊園地など様々な企画で4泊5日を楽しんだ。
次世代育成事業の目玉でもあるこの大イベントは、オリニには発展した祖国を見てもらうとともに、同世代の在日の友だちを作るきっかけを与えるものである。10回の開催で延べ3276人が参加し、青年リーダーやスタッフを含めると4000人を超え、次世代育成に着実な成果をあげている。とくに今回、リーダーや運営スタッフのボランティアに、かつてオリニジャンボリーに参加した卒業生から16人が志願したことはうれしい成果である。
◆次世代サマースクール
また、中学生・高校生・大学生を対象とした次世代サマースクールが8月にソウルで開催され、大学生が42人、中学・高校生は定員を超過する229人が参加した。
◆韓日パートナーシップ宣言20周年セミナー
金大中大統領と小渕恵三首相による「21世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ宣言」から20年を迎え、日韓親善協会中央会と民団中央本部は在外同胞財団の後援を受け、都内で「韓日パートナーシップ宣言・20周年記念セミナー」を共催した。
韓日の過去を直視し、未来を志向するとした宣言を踏まえ、今後の両国友好関係をさらに強固にすること、及び、地域社会で日本人と共生している在日韓国人の架け橋としての役割が熱く語られた。
また、未来志向の友好を誓う「韓日共同宣言20年親善大会」が10月、韓国と日本の両親善協会の共催でソウルで盛大に開催された。
◆10月マダンと韓日マダン
各地方で多彩な10月マダンが開催された。当初は団員相互の親睦を深め、同胞の絆を確認する意味合いが強かったが、今では韓国固有の文化を地域住民に発信し、一緒に楽しむのが主流となっている。多くの地方が韓日祝祭ハンマダンとして開催し、韓日共同宣言20周年を祝して行われた地域も多く、民団の「10月マダン」は韓日友好の民間交流の場として着実に根付いている。また愛知では「韓国フェスティバル2018イン名古屋」が4月に、大阪では総領事館との共催で韓日友好親善のつどい「多文化共生フェスタ」が10月に開かれ、会場は大盛況であった。
その他の主な開催地方は以下のとおりである。(茨城、千葉、埼玉、神奈川、栃木、山形、兵庫、鳥取、島根、滋賀、奈良、宮城、福岡、佐賀)
◆韓日祝祭ハンマダン
東京では、韓日政府の主導で10回目を迎えた「韓日祝祭ハンマダン2018イン東京」(日韓交流おまつり)が9月の2日間開かれ、約7万人の観客が訪れた。2009年に始まったこの行事は、両国関係が厳しい時期があっても一度も途絶えることなく、草の根の文化事業として定着している。
◆朝鮮通信使行列を再現
6地方では、昨年のユネスコ世界記憶遺産登録を祝して、江戸時代250年間続いた平和と友好の象徴である「朝鮮通信使」を再現し、韓国と日本の平和・友好・親善を誓い合った。(京都、広島、静岡、岐阜、愛知、埼玉)
2018年は自然災害が多発した年である。6月には群馬地震、大阪北部地震、7月には西日本豪雨が発生し、広島や岡山で大きな被害が相次いだ。民団中央では西日本豪雨発生時に対策本部を設置し、在日同胞の安否と被害の確認及び救援活動とともに、全国の義捐金募金活動を展開した。8月には大型台風21号、9月には北海道胆振東部地震、台風24号が襲った。
対策本部では、被害地方本部・支部、団員宅や店舗の被害に見舞金をそれぞれ伝達した。今後も自然災害が続発することが予測され、全国の民団においても緊急の場合に備えて具体的な対策を講じておく必要がある。
(2019.02.13 民団新聞)