掲載日 : [2019-02-27] 照会数 : 6424
5大方針柱に民団の使命を果たそう…第73回定期中央委員会採択「19年度基調」
[ 新年度活動方針案と予算案を採択する議決機関 ]
5大方針柱に民団の使命を果たそう
2019年は、民団の名称から「居留」を削除し定住宣言をしてから25年になる年である。この間、世代交替や少子高齢化、日本国籍同胞や新定住同胞の増加などによって、在日同胞社会を取り巻く環境は大きく変化した。私たちが住む日本も、母国韓国も、世界情勢も25年前とは大きく様相を変えている。
72年の活動実績と歴史を持つ民団が、様々な政治的困難を乗り越えて今日あるのは、自由民主主義に立脚し、宣言・綱領・規約を順守して組織を運営してきたからである。
本年、2年目に入った第54期執行部は、激動する時代の情勢の中で民団に与えられた使命と責任を果たすため、当面している諸課題に果敢に取り組んでいく。在日同胞社会の和合と交流を中核に、①同胞の生活と権益を守る②韓日友好親善に尽くす③次世代を育成する④組織基盤を強化する⑤平和統一に寄与する。この5つの柱を重点とした民団活動を推進していく。
■同胞の生活と権益を守る
◆同胞の拠り所として、役割を充実化
民団は、団員相互の親睦と、同胞の生活と権益を守るために存在する。創団以来、民団は、同胞のための生活相談の役目を果たしてきた。同胞社会だけでなく、日本の地域社会で広く認められる存在として活動している。同時に韓国・日本の架け橋としての役割を果たしてきた。同胞の生活権を守るため、各種サービス活動を通じて、団員・同胞に頼りにされる民団づくりに尽力していく。
2007年以来、在日同胞の生活権を守る一環として「みんだん生活相談センター」を運営している。現在、弁護士や税理士、司法書士など専門家による生活相談センターを運営しているのは15地方である。本年は生活相談センターをより充実化させ、地方の設置数を増やしながらネットワークを結び、同胞を支える民団の役割を高めていく。
また韓国から年間700万人以上の観光客が訪れる。現在、全国の民団では「韓国人旅行者支援センター」を運営し、各種様々な相談に応じている。対馬では年間40万人の韓国人観光客に対応するため、昨年12月に民団対馬支部内に支援センターを開設した。今後増えていく需要に応えるため、民団の支援センターをより一層充実化させていく。
◆ヘイトスピーチ根絶
私たちの生活と生存を脅かすヘイトスピーチは絶対に容認できないものである。本年も継続して公共施設におけるヘイトスピーチをやめさせるため、各自治体に条例やガイドラインの制定を求める活動を展開する。あわせて、インターネット上のヘイトスピーチを削除させるための活動を推進するとともに、各種の啓発活動も行っていく。また、在日同胞の人権を守る民団として、各種人権問題に積極的に取り組んでいく。
◆共生社会実現へ地方参政権獲得
地方参政権は1994年から運動を継続してきた。地域社会で在日韓国人として生きていく上で、市民・住民としての権利である地方参政権を求めるのは当然のことである。1995年にすでに最高裁は憲法に違反せず許容されるとし、あとは国会での立法政策であるとしている。私たちは納税の義務を果たし、地域の活動に参加しながら貢献もしている。この間、国会で14時間以上にわたって審議もされ、法制化の直前までいった。
だが、6年前に始まったヘイトスピーチや日本社会の排外的風潮の高まり、周辺情勢の変化によって活動が停滞していた。本年から、これまで積み上げてきた運動の成果を土台に、改めて地方参政権の実現に向け積極的に取り組んでいく。粘り強く活動を継続することで、生活者団体としての民団の存在意義を高め、他の諸問題の解決にもつなげていく。
昨年8月、国連の人種差別撤廃委員会が日本政府に対し、在日コリアンが何世代にもわたって地方選挙権がない「差別的な状況にある」ことに懸念を示し、地方選挙権を付与するよう勧告した。また昨年12月の日韓・韓日議連総会においても地方参政権の実現に向け継続して「努力していく」ことが確認された。対内的には各地方でこの問題の勉強会や研修会を開き、運動の意義をもう一度確認していく。あわせて政府、政党や国会議員をはじめとする各級議員に対する要望活動を進めていく。
◆自然災害対策-危機管理態勢を強固にし、同胞の安全を守る
昨年は多くの災害が発生した。今後も異常な自然災害が起こることが予測される。同胞の相互扶助に全力を尽くすのが民団の創団精神である。平素から同胞との絆を深め、災害が発生した時は、素早く被害状況を把握し、同胞を救済することができるよう、普段から緊急連絡網や避難訓練を実施するなど、危機管理マニュアルを作成し態勢を整備していく。
■韓日友好親善
◆平和・友好・共生を推進
民団は、地域社会に開かれた「韓日文化交流センター」としての役割を担い、韓日友好と共生社会を促進するための活動をしている。民団会館を積極的に活用し、韓日文化・歴史・ハングル・料理教室等を開催し、今後も架け橋としての役割を果たし、地域社会と同胞社会の発展に積極的に寄与していく。
◆韓日交流1000万人時代の幕開け
日本は、2020年東京五輪の年の外国人観光客誘致の目標を4000万人としている。その中で韓国人が700万人以上を占める。最近、韓国人の若者が日本に留学するケースが増え、日本企業が積極的に韓国人留学生を受け入れている。国境のハードルがどんどん低くなっている。今後は韓国を訪れる日本人の数が日本を訪れる韓国人の数と同等になることが望まれる。そのためにも韓日間の政治的な問題を解決し、未来志向の友好関係を強固にしていくことが重要だ。民団はその一翼を担う。
◆韓日青少年交流
昨年は、韓日パートナーシップ宣言から20年を迎え、未来志向のより良い関係をつくっていくための各種記念事業が催された。韓日共同宣言の精神を受け継いでいくため、日韓親善協会とともに韓日間の青少年交流を推進する。
◆10月マダン・韓日マダンを充実
全国の民団がこの間、同胞の紐帯強化、韓国伝統文化の紹介、韓日友好の場として開催してきた10月のマダン、韓日祝祭を定着させ充実化させていく。
◆朝鮮通信使の友好の知恵を拡げる
本年も、両国親善のシンボルである朝鮮通信使の平和と友好の精神と知恵を後世につなげていくイベントを継続していく。地域社会や友好団体と協力し、民団が懸け橋として「通信使」の役割を果たして、友好関係をさらに強固なものにしていく。
■次世代を育成する
◆次世代サマースクール
次世代の育成は喫緊の課題である。次世代が出自を堂々と明らかにして、屈託なく生きてゆける社会をつくり、日本の社会でも韓国でも頑張っていける、そんな社会、明るく生きる社会を民団が率先してつくっていく。在日同胞中学生・高校生(各100人)を対象とした「次世代サマースクール」をソウルで、「大学生ジャンボリー」(100人)を日本国内で、それぞれ夏季に3泊4日の日程で開催し、次世代の育成に継続して尽力する。また同胞中学生の交流会を日本国内で開催する。若い世代が幅広く民族教育を受けられる環境整備に取り組む。
■組織基盤を強くする
◆在日同胞の和合と交流-同胞訪問活動を継続し、民団再生
戦後の長い歳月の中で、同胞の集住地域が減少している。世代が進むにつれて職業分布も自営業が減り、会社勤務者が増加するなどの状況下で、同胞同士の交流も減少する傾向にある。日本国籍同胞の増加と世代交替に伴う団員の減少により、とくに過疎地域における人材、財政の維持は厳しい状況にあり、団費や賛助金等の収入も減少している。
戸別訪問は、このような中で民団組織と同胞との絆をより深めるために実施しているものである。民団は事務所にただじっとして受身でいるのではなく、積極的に団員や同胞宅を回る「移動民団」「動く民団」の発想を持たなければならない。本年からは団員世帯だけでなく、新定住同胞、日本国籍同胞、朝総連離脱同胞の戸別訪問を推進していく。戸別訪問によって、同胞の顔が見える民団組織の原点に立ち返る。また新しい同胞や役に立つ事例を掘り起こし、地域社会とともに活力ある民団を再生させ、和合と交流に力を入れていく。地域によってはすでに日本国籍同胞が民団を支えている支部が成功事例としてある。
◆組織力量を強化し、団員・同胞に頼られる民団づくり
組織の基本は人づくりである。人づくりのために各級組織の学習会、研修会を開催し、「学ぶ民団」「人をつくる民団」を前面に出していく。人材育成、後継者養成は喫緊の課題である。民団は在日同胞の求心体であり、多様化する在日同胞社会を牽引する使命がある。人材不足の悩みはどの地域においても同じだ。団員とのネットワーク、絆を太くしながら、72年の歴史と伝統を踏まえ、人材育成と組織基盤強化のために前進していく。また近隣の日本人など、地域に広く開かれた民団づくりをし、すそ野の広い活性化を進めていく。
■平和統一に寄与
民団は自由と民主主義に立脚した平和統一を希求するものである。それは一貫しており、そのために最大限寄与していくものである。
戦後、民団は母国とともに歩み、母国の発展のために物心両面の支援を惜しまず果たしてきた。日本の地で、自由民主主義の大韓民国を守ってきたと自負する。
民団は1948年ロンドン五輪支援を皮切りに、ソウル五輪に100億円を寄付し、IMF外貨危機の際にも身を削って貢献してきた。民団の姿勢は今後も変わらない。
韓半島を取り巻く情勢が激変する中で、韓日関係も元徴用工問題などで冷ややかな状況にある。在日同胞社会も難しい立ち位置にある。だが、こういう時こそ一致団結し、母国と在日同胞社会の発展のため、また韓日友好増進のためにその役割を果たさねばならない。
昨年は、南北頂上会談、美北頂上会談を通じて戦争の危機は避けられた。韓国政府は緊張緩和に努めてきた。南北融和及び国際社会の制裁解除の条件は、北韓の核ミサイル開発の放棄である。北韓は依然として、核を保有する独裁世襲の体制維持に腐心している。民団は、北韓の非核化と民主化によって、韓半島に平和が定着し、人々が自由にのびのびと暮らせる社会を望んでいる。人権や開放、民主化を棚上げしたままの統一気運には、多くの同胞が大きな不安を抱いている。北韓が軍事挑発や核開発に戻ることがないようにしなければならない。民団は自由民主主義に立脚した平和統一に寄与していくため、全国各地で各種講演会やシンポジウム等を開催していく。
◆「北送」60年想起
北韓と朝総連が「地上の楽園」との甘言で騙し、1959年から9万3000人(6800人の日本人含む)の在日同胞を北韓に送還した所謂「北送事業」から60年を迎える。
60年目に際して、民団は、北送された在日同胞と日本人の問題を「人権問題」として世論を喚起し、その生死確認と自由往来ができるようシンポジウム等を開催して問題提起していく。
■3・1独立運動100周年
本年は、「3・1独立運動」から100年目の年である。1919年3月1日、「己未3・1独立宣言」が宣布され、韓半島全域で200万人以上の民衆が「大韓独立万歳」を叫び、日本の植民地統治に反対した。韓国憲法前文は3・1精神を国家理念の基礎としている。日本に留学していた韓国人学生の2・8独立宣言が3・1独立運動につながった歴史と今日的意義を後世に継承させていくため、全国各地の民団で多様な記念行事を開催し、韓半島の平和統一と在日同胞社会の発展、韓日友好増進と共生社会構築に尽力していく。
(2019.02.27 民団新聞)