掲載日 : [2019-07-10] 照会数 : 12396
実務力向上と若手の育成…地域指導者ワークショップ
[ ワークショップで熱心に講義に耳を傾ける参加者 ] [ 手強い同胞役の本部メンバー(左)を相手に戸別訪問の実技演習をする愛知県チーム ] [ 幅広い意見が寄せられた3機関長との対話 ]
150人参集、難局への対応探る
民団中央本部の「2019年地域同胞指導者ワークショップ」が7日までの2日間、東京江東区のホテルで開かれ、全国の本部や支部幹部ら約150人が参加した。特に今年は後継者・次世代活動者と実務者の養成と連帯を図るとともに、3機関の役割の認知と組織運営に必要な実務能力の向上に加え、組織活性化と多様化する同胞の統合に向けた共通課題についての認識をともにすることを目的に、支部総会のシミュレーションや戸別訪問のロールプレイング、3機関長との対話など、実技を加えた参加型研修とした。
戸別訪問を実技演習
6日の開会式で呂健二団長は「在日同胞の拠り所として生まれた民団だが、73年の歴史を経て、構成員の多様化をはじめ、時代は大きく変化している。これに民団がどう対応していくべきかが大切だ」としながら、「昨年起ち上げた『組織改革委員会』を通じて、方向性を探っているが、全国実務者のネットワークを広げ皆さんとともに考えていこう」と呼びかけた。
朴安淳議長も「規約を遵守してきたからこそ、73年間、組織が続いてきた。しかし、大きく変化した時代に見合った規約と規定を作ることが議決機関の責任だと痛感している。この間、開催された、全国7地協でも意見を聞いてきたが、さらに全国の活動者の声を聞きながら改正に取り組みたい」と述べた。
梁東一監察委員長は「少子高齢化、世代交代に加え、韓日関係、同胞の多様化など、民団は今、大変、難しい時期を迎えていると思う。意見交換の場を通じて学んだものを各地区で団務に生かしてほしい」と励ました。
はじめに徐元喆事務総長が「組織の現状と課題」と題して基調講演。
続いて、李清鍵組織局長から「組織運営の基本…会議と意思決定」についての解説があった。
議決機関の役割に関するカリキュラムでは支部総会の議事進行をシミュレーションによる実技で体験、クイズを交えた規約の解説も受けた。
この後、組織活動の基本でもある戸別訪問の実技では東京、宮城、愛知、大阪、京都の5チームによるロールプレイングが行われた。
3~5人で構成した各チームは持ち時間7分でいかに民団に関心を持ってもらうかがミッションだ。訪問宅を①独居老人宅②地方から転居したばかりの団員宅で日本人の夫人③日本国籍取得後、民団とは縁が切れた非団員④朝鮮大学出身だが朝総連を離脱し同胞社会とは縁が薄くなった同胞⑤民団をまったく知らない新規定住同胞ーの5つのパターンから、くじ引きで決め、応対同胞役は中央組織局のメンバーが演じた。
「手強い相手」に、各チームとも苦戦しながらも、順にアイデアを出し合い、興味を引きそうな話題を持ちかけるなど、本番さながらの実技を演じ、会場からは笑いと拍手を誘った。
翌日は監察機関の役割について、金春植監察委員からレクチャーがあった。金委員は①監察機関の姿勢②3機関の位置と役割③監察機関の任務のほか、規約第75条運用規定(停権と除名に関する運用)や規約運営に関する見解統一など、事例を挙げながら解説した。
この後、中央の組織改革委員でもある呉龍浩大阪本部団長の組織活性化への提言「人材育成と財政確立」を朴鍾寛同本部事務局長が発表した。
実務者の育成に関して、全国組織である民団が在日同胞にとって最大の雇用先となるために、「夢や希望」が語れる場になり、成長する可能性を実感できる職場にすることが理想だと強調した。
また、中央や大手地方で若手を育成する人材バンクを設置し、支部役員の就任条件を当地居住者に限定せず、本部からの指名制導入も提案された。
財政確立については支部と本部の共同出資による収益事業、支部会館の福祉施設設置など、大阪での実例をあげながら、全国ネットワークを活用し情報収集し、直営可能な事業展開などが述べられた。
◆支部活性化の成功例紹介
続いて愛知本部の成功副議長、大阪本部の朴清副団長、愛媛本部の李和美事務副局長の大手、中堅、過疎地方幹部による「組織活性化のために」をテーマにパネルディスカッションを行った。
成功氏は瀬戸支部支団長時代、少子高齢化による団員減少に対応し日本国籍取得後、民団と距離を置いていた同胞と積極的に接触し、役員への参与や団費収入増加につながった事例を紹介した。同支部は現在、役員の4割が日本国籍同胞で占めている。
八尾支部支団長を歴任した朴清氏は、「楽しくなければ人は集まらない。いつも楽しい民団づくり」をモットーに、市や町内会など地域と一体となった多彩なイベントを開催することで、つねに人が集まる民団になったことが紹介された。また、通所介護、街かどデイハウスなどを営むことで自主財源を確立したことも述べ、「支団長が動けば役員が動く、役員が動けば団員が動く、団員が動けば民団組織が動く」とアピールした。
李和美氏は2015年に中央が初めて実施した「戸別訪問集中活動・愛媛」で全世帯と日本国籍取得同胞宅を戸別訪問したことで名簿が精査されことを述べながら、「データベース化したこの名簿が今では大きな威力を発揮するアイテムになった。継続して訪問を続けながら、つねに最新データ化に務めている」と報告された。
中央3機関長との対話では、本国政府との関係、韓日関係の悪化、南北関係、同胞社会が抱える諸問題をはじめ、後継者育成、財政確立など日頃から思っている疑問や悩み、民団の将来像など、参加者から積極的な意見が寄せられた。
今回のワークショップはこれまでの受講タイプではなく、実技を加えた参加型研修を試みた。参加者からは「とても参考になったし、地元に戻って頑張ろうという気持ちになった」と好評だった。
また、支部と地方と中央の情報共有のためにもワークショップを複数地域や年に2、3回は開催してほしいとの要望もあった。
(2019.07.10 民団新聞)