掲載日 : [2019-11-15] 照会数 : 11020
「北送」は北韓の国家的詐欺、朝総連は謝罪せよ…民団が特別シンポ
「北送」同胞の人権回復と出国の自由を
「祖国は地上の楽園」との北韓当局と朝総連の虚偽宣伝と日本政府と政党の積極的協力と日本マスコミあげての北韓体制賛美キャンペーンのもとで推進された「北送」(1959年12月~84年)から60年になる。「北送」によって、6679人の日本人妻と日本国籍子弟を含む、9万3339人の在日同胞が北韓に渡ったが、待ち受けていたのは「地上の楽園」ではなく、日本よりもはるかに厳しい生活だった。民団では中央本部と関東地方協議会が共催して13日、東京千代田区の在日本韓国YMCAで「『北送』60年、歴史的検証 特別シンポジウム」を開催した。参加した200人は、朝総連に対し謝罪と北韓当局に「北送」同胞の人権回復と出国の自由を要求せよとの決議文を発表した。
苦境の同胞、救済に全力を
主催者あいさつで呂健二民団中央団長は、「北送は『事業』でなく『事件』であり、北韓と朝総連による犯罪だ。『地上の楽園』と人を騙して連れて行き、反省も謝罪もしない。60年経った今も、北送同胞と日本に残ったその家族の悲惨な状態が続いている」とし、「『北送』同胞の人権回復と往来の自由が認められるよう、日本政府と日本社会も拉致問題と同様に声を上げてほしい」と呼びかけた。
この後、朴斗鎮・コリア国際研究所所長が「北送事業とは何だったのか」、山田文明・北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会名誉代表が「日本から見た帰国運動と道義的責任」、高英起・デイリーNKジャパン編集長が「北韓の人権侵害と脱北状況」をテーマにそれぞれ講演。
元朝鮮大学校教員の朴所長は「北送」の規定について、「民団以外のほとんどが帰国、帰還などと表現しているが、『在日同胞の北送』が適切だ。なぜなら、人道主義に名を借りた『北韓による国家詐欺事業』だったからだ」と力説。北韓の狙いなどを説明しながら、「北送犯罪の責任追及は続けなければならず、被害者である在日同胞が主体となって意思の統一を図るべきだ」呼びかけた。
山田氏は今後も脱北者の救出と日本定着への支援と協力の必要性を述べ、「帰国事業は『拉致問題』の原点だ。これを解決しない限り拉致の解決もない」と強調。日本に住む5人の脱北者たちが北韓、金正恩に対する訴訟についてを説明し、支援を呼びかけた。高氏は最近の脱北状況などについてを解説した。
続いて、朴所長をコーディネーターに、講師の2氏に在日脱北者の石川学さん、元朝総連の「帰国事業」宣伝部隊だった呉文子さんを交え、パネルディスカッションに移った。
北送と北韓の実態を暴いた「楽園の夢破れて」の著者、関貴星(呉貴星)さんの娘でもある呉さんは、当時の在日同胞は貧困に加え、激しい民族差別の状態にあったことで、朝総連の喧伝を信じ込んだことや、父との絶縁や朝総連との決別や夫に対する報復をはじめ、「北送」に絡む離散など在日同胞社会への被害などを証言。その上で、「朝総連が窓口になった以上、その責任を追及していくべきだ。日本に戻れるよう、民団が主導的になり、各市民団体とひとつになって世論を喚起してほしい」と語った。
中学生だった72年に北に渡り、30年後の2002年に脱北し日本に戻ることができた石川氏(61)は、「私も含めて北送同胞たちの誰もが北に着き船を下りた瞬間、『とんでもないところに来てしまった』」と後悔したはずだ。脱北の決意に至るまでの北韓での悲惨な生活などについて証言した。
山田氏は北送同胞の解放に向けて「朝総連の責任を問う、うねり作るとともに、日本政府としても北に強く求めてほしい」と述べた。
最後に、民団関東地方協議会会長でもある李壽源民団東京本部団長が①北韓・朝総連は「北送」が北韓賛美に基づく暴挙であったことを認め、直ちに謝罪せよ②北韓は「北送」同胞に対する人権抑圧をやめ、改革・開放と民主化を実現せよ③朝総連は北韓当局に対し、「北送」同胞の人権回復と出国の自由を認めるよう要求せよ④日本政府は「北送」支援の道義的責任を認め、「北送」同胞とその家族の原状回復の実現に尽力せよーとの決議文を読み上げ、満場一致の拍手で採択した。
「北送」60年特別シンポ決議文
「地上の楽園」との北韓当局と朝総連の虚偽宣伝および日本国内の朝野をあげての北韓賛美キャンペーンのもとで推進された「北送」事業開始から60年を迎える。民団の決死の「北送」反対闘争にもかかわらず、6679人の日本人妻と日本国籍子弟を含む、9万3339人の在日同胞が北韓へ送られた。
日本での差別や貧困から逃れ、夢見た祖国へ帰った「北送」同胞は、北韓社会の最下層に追いやられ、人権抑圧と慢性的な食糧不足という生死をかけた生活を強いられてきた。
北韓社会の実態を隠蔽し、多くの同胞を死地へ追いやった朝総連の非人道的行為は重大な人権侵害である。総連中央は「祖国への自由往来は在日朝鮮人の権利である」と日本政府に要求してきた一方、「北送」同胞の生死や居住の確認と、在日家族や親戚との自由往来については、北韓当局に対して要求せずに放置してきた。
北韓から命からがら日本に逃れてきた200人余りの脱北者は、朝総連の圧力により家族のもとへ戻れず、日本国内で身を潜めるように暮らしている。朝総連は北韓と「北送」事業を主導した当事者として、「北送」同胞やその家族に対する道義的な責任や謝罪はおろか、満天下にさらされた「北送」同胞の惨状を真っ向から否定し、「国際的な人道主義に基づいた崇高な愛族愛国事業」であると強弁している。
私たちは「北送」開始から半世紀以上過ぎても、今なお続く人権問題を解決するために、「北送」事業の歴史的な罪過を検証するとともに、「北送」同胞は一日も早く悲惨な状況から解放されねばならないとの意思を共有し、次のように決議する。
一、北韓・朝総連は、「北送」が「地上の楽園」という偽りの北韓賛美に基づく暴挙であったことを認め、直ちに謝罪せよ!
一、北韓は「北送」同胞に対する人権抑圧をやめ、改革・開放と民主化を実現せよ!
一、朝総連は北韓当局に対し、「北送」同胞の人権回復と出国の自由を認めるよう要求せよ!
一、日本政府は「北送」支援の道義的責任を認め、「北送」同胞とその家族の原状回復の実現に尽力せよ!
2019年11月13日
「北送」60年 特別シンポジウム参加者一同