掲載日 : [2004-03-03] 照会数 : 5596
より効率的に課題克服へ 2004年度基調(04.3.3)
同胞ネットワーク早期実現
「歴史認識」取り組み強化
オリニ・ジャンボリー更に充実した企画で
展望
米国で起きた同時多発テロ以後、米国はテロ勢力とその支援国、そして大量殺戮兵器開発国に対する強硬な政策を展開しています。米国はイラクを強打し、フセイン独裁政権を除去しましたが、イラク戦争の戦後処理とあわせて新しい国際秩序の再構築に向け苦慮しています。仮に、イラク人による自治移譲が遅れたり、予想不可能な混迷が続けば米国は新たな試練に直面することになると思われます。
また、韓国と日本、そして東北アジアに深刻な影響を及ぼしているのが、北韓による核問題と日本人拉致問題です。昨年の8月、南北韓・米・日・中・露による最初の「6者会談」以後、延期を重ねてきましたが、今年2月25日に第2回会談が北京で持たれることになりました。「6者会談」に臨む韓・米・日は、北韓による94年のジュネーブ枠組み合意順守と核完全放棄・解体の先行を原則にしています。一方、北韓は核「凍結」にあたって、その代価としてエネルギー支援等を同時に行うことを主張し、対立しています。北韓は、イラク情勢をにらみながら米国の大統領選挙を見据え、譲歩を引き出そうとしているようです。「6者会談」の行方は米国と北韓が互いに譲歩しない限り、先行き不透明であると言えましょう。
その北韓は、2002年7月に試みた経済改革に失敗、経済は破綻状態にあり、深刻な食糧不足に陥っています。韓国をはじめとする国際的な支援を受けても、96年以後、毎年100万㌧が不足する状態にあり、多くの脱北者を発生させている悲惨な状況にあります。
韓国は4月に行われる第17代国会議員総選挙を控えています。本国の政局は一昨年の大統領選挙における政治資金問題で搖れています。内外に困難な課題が山積している状況を思う時、全在日同胞は一日も早い国政の安定を心から願っています。
日本も困難な状況におかれています。小泉政権は「戦後復旧、人道支援」を名目に日本の戦後史上、はじめて紛争地域であるイラクに、戦闘が可能な自衛隊を派兵しました。イラクで混乱が起きた場合、7月の衆議院選挙を前に政局に対する影響も小さくないと思われます。また解決の糸口をつかめない日本人拉致問題も政局に影響を及ぼすことでしょう。既に第159回日本国会で、制裁法案の一つである「改正外国外為・外国貿易法」が通過し、「特定船舶入港禁止法案(仮称)」も準備中といいます。「6者会談」を前に2月12日に拉致問題について朝日政府間交渉が再開されたが、「交渉を継続する」という原則に合意しただけで終わっています。拉致被害者の原状復帰と拉致問題の全面的な解明が速やかになされねばなりませんが、万一、解決の糸口がつかめなかった場合、家族はもちろん、日本国民の不満はさらに一層高まるでしょう。
私達、在日同胞社会におよぼす影響も小さくありません。まず、朝鮮総連中央本部は、きたる5月に第20次全体大会を開きます。核問題と拉致問題で收拾のつかない混乱の中にあり、どのような方案を出すのか注目されます。
本団を取りまく諸情勢はこのように予測が困難な状況にあります。
しかし本団は生活者組織として、21世紀のテーマである「平和」と「人権」、「教育」、そして「福祉」に重点をおきつつ、時代に適した組織改革によって将来を見据え、確固とした基盤を作り上げなければなりません。21世紀の明るい在日同胞社会をめざし、全在日同胞を束ねていく指導母体としての責務と指導性を発揮して取り組むことを誓いながら活動方針案を提示いたします。
重点方針
今年も地方参政権獲得にむけた持続的な運動推進と時代の要求に応じた本団の組織改革にむけての取り組みを軸に7つの重点方針と目的別事業方針を提示します。本団の存在と諸般事業に対する内外の関心が高まっている中、山積みされている懸案課題を目的別に束ねることによって、より効率的な課題克服を期します。
1、地方参政権獲得運動の継続推進
1994年から本団の最優先課題として展開してきた地方参政権獲得運動は、11年目を迎えます。この間、全団的な取り組みとして、あらゆる力量を注ぎ、根気強く推進してきました。しかし、昨年10月、継続審議として先送りされてきた「地方参政権法案」が衆議院の解散によって、他の法案と共に自動廃案となりました。本団はこれに屈することなく各級組織幹部とともに再上程に向け要望活動を展開してきた結果、改めて2月19日に国会に再上程されました。大変心強いことであり、大いに意を強くすることができました。日本社会の問題として受け止め、積極的に支持し、後押ししてくれる多くの日本人の存在は、われわれの希望でもあります。全国の自治体の1518議会で「意見書」の採択を勝ち取った運動は、私たちの地方参政権運動の他にないといわれます。改めて、獲得するその日まで、多くの方々の支援をもとに、粘り強く取り組んでいく決意を新たにしたいと思います。
しかし、このような困難な状況に直面しなくてはならなかった原因をおさえておきたいと思います。総括報告でも報告しましたが、まず、国際情勢の緊張と、それにともなう日本国民の有事に対する意識の変化をあげることができます。歴史歪曲教科書、一部政治人の靖国神社参拝、誤った歴史観による妄言等、日本社会の保守回帰の潮流を指摘せざるを得ません。二つ目に、北韓による日本人拉致事件と多発する外国人犯罪の影響で、永住外国人に対する好意的であった関心が低くなっているという事実です。
このような状況を鑑み、本運動の「日本社会で住民としての制度的権利を確保することによって、在日韓国人として差別のない共生社会を実現する」という原点を再確認したいと思います。本団がこの間、積み重ねてきた「意見書採択」と「住民投票権(86自治体)獲得」「地方公務員国籍条項撤廃」等の実績は、地方自治体が在日韓国人をきちんと地域住民として認めていることを示しています。そして、本運動ほど本団と在日韓国人の存在を日本社会はもちろん、国際的に広くアピールした運動はないでしょう。今後の運動を進めていくうえで大きな担保でもあります。
また、来年は、韓日国交正常化40周年という節目の年です。この時に、韓日両国間の哀しみと喜びの中に生きてきた在日韓国人の処遇について、日本政府は真摯に受けとめるべでしょう。本団はこの間の成果を土台に、地方参政権を獲得するその日まで、力強く持続的に取り組む決意を新たにいたします。
前半期は、国会議員の理解と協力を求める多樣な陳情活動を展開していきます。そして、本国政府と国会議員の理解と協力を求める活動も継続して展開していかなければなりません。ただ、本国では第17代国会議員総選挙が4月15日に行われます。このたびの選挙では新しい世代の登場と政界再編も予想されます。本団と在日同胞社会に対する正しい理解を求めていかなくてはなりません。
後半期においては、地方議会に対する「意見書採択」を引き続き推進しながら、「意見書採択」50%以上を目指して行かなくてはなりません。困難さに直面している地方本部に対しては研修とあわせて合同陳情団の構成など、共に努力につとめたいと思います。そして、既に100%を達成している地方本部では、本運動に非協力的な該当地域管内の出身国会議員に対する理解を求める要望活動を引き続き展開してほしいと思います。
続いて「外国人に対する住民投票権」付与をさらに拡大していきましょう。地域住民として確固たる地位と参政権運動に対する日本人の理解を求めていくうえで支えとなるでしょう。さらに、「10月のマダン」など、各種文化行事の際、多文化共生社会の実現をめざす本運動に対する理解を求め、弘報に努めていきましょう。
逆境を克服してきた在日同胞の底力を発揮し、地域社会の住民として、当然な権利としての地方参政権を一日も早く獲得するために総力を傾けていきましょう。
2、組織改革推進
明るい在日同胞社会を展望するうえで、時代的要求に適応した組織改革とあわせて、団員と共にある組織の活性化をめざし、具体的に取り組んでいきたいと思っています。
まず、「21世紀委員会」が提起した在日同胞全体の指導母体としての機能を発揮するような機構をめざし、昨年から議決機関を中心に構成された規約委員会の論議を急がなくてはなりません。創団60年を目前にして本団の基盤である在日同胞社会は、急速な質的変化と価値観の変化を直視しなくてはなりません。具体的に指摘するならば、まず、構成員の多樣化と世代交替であります。二つ目は冷戦時代の終息と高度情報化時代、あるいはグローバル時代を迎えて、同胞の意識とライフスタイルの変化です。三つ目は既存の組織体の求心力の問題です。その結果、団員と直接接している支部において財政難と団員の関心低下、さらに、組織運営の困難さなどに現れていると思われます。このような課題を能動的に克服していくために組織の原点に立ち返る必要もあります。
在日韓国人の生活者組織であり、大衆的な社会運動体である本団の機能的で能率的な構造改革が問われています。規約委員会は、大幅な改正案をまとめ、前期と後期に、地協単位で公聴会を開き、幅広い意見を直接集める予定です。そして規約改正のための臨時大会も念頭におき臨むことも必要でしょう。
また、求心力強化のための大幅な規約改正は意識改革も伴います。グローバル時代と高度情報化時代の21世紀型組織体はいかなるものなのか。あるいは在日同胞社会の現況と課題は何なのか、本団に与えられた課題を想起しながら幅広い論議を通じ、組織活性化の契機にして行かなくてはなりません。
組織整備も並行して進めていかなくてはなりません。ご存じの通り日本社会は、費用と効果という観点からも果敢な自治体の合併に臨んでいます。今日の私たち同胞社会もまた都市集中形態を顕著に表しています。それだけでなく、多くの地域が過疎化を招いています。本団各級組織もこのような次元で検討していかなくてはならないと思います。各級組織は創団以来、団員の要望に応えてきました。祖国の発展と守護に取り組んできましたし、権益擁護運動を通じて差別を克服、団結を築き上げてきました。同時に地域住民として韓日間の架け橋的役割を担ってきた歴史と伝統、そして自負心をもとに組織整備に果敢に取り組み、新しい地域同胞社会の構築と団結をめざしていきましょう。
幸い、私たちは高度情報化時代に生きています。地域の広狭と同胞の多寡は、無関係ではありませんが、情報の共有という点で連帯意識を育んでいくことにウェイトをおく時代ではないかと思われます。今年から取り組むIT全国化を積極的に活用し、新しい情報網と弘報媒体による組織整備で組織活性化を成し遂げていきましょう。
組織活性化のための「ウリ支部ウリチャラン運動」と「IT全国化」を関連させながら研修と組織整備をめざした具体的な経験を組織改革に反映させて行かなくてはならないでしょう。
同胞の生活と要求に応え、多くの同胞が参与する「民団」をめざし、各級組織幹部と共に組織改革をすすめていきましょう。
3、「ウリ支部ウリチャラン運動」本格推進
昨年、組織活性化をめざして提起した運動が「ウリ支部ウリチャラン運動」であり、支部の機能を再照明するものでした。「支団長交流会」を通じて本運動に対する共感帯が形成でき、それを土台として今年は「ウリ支部ウリチャラン運動」を本格的に推進していきましょう。
「交流会」では、同胞数の多寡、地域の広狭、会館の有無など、支部ごとにその特色は異なりますが、各支部で、組織活性化にむけて団員の要望に真摯に対応していることがわかります。
成功事例の中には、団員に対するサービスの提供、旅券申請、戸籍整理などに対する迅速な処理によって信頼度を高めた支部もありましたし、支部会館を利用した老人介護のための「デイ・サービス」等の福祉事業で求心力を高めている支部もあります。あるいは文化的な要求に対応して、ウリマル講習、民族舞踊等を開催している支部、オリニ土曜学校、オモニ教室等の民族社会教育に実効をあげている支部もまた少なくありません。さらに地方自治体と恒常的に交流を持ち、地域「祭り」に積極的に参与し、多文化共生社会の一翼を担っている支部もあります。
地域同胞社会は該当地域の産業構造と文化、そして自然環境の特色を濃厚に受けており、支部ごとにその特性が異なります。地域同胞の要望に積極的に応え、団員間の紐帯を篤くする等のはっきりとした成果をあげている活動の一つを支部の特色としてあげ、全国的なネットワークを通じて支部相互間の情報交換可能にしていきたい考えています。今年は本格的な推進のために活動事例を映像を含めて製作し、全国組織に紹介していきます。
このような活動事例を互いに共有し、ノウハウを交換、より豊かな同胞社会の実現のために昨年に引き続き「支団長交流会」を開催します。今回は可能な限り参加しやすい状況を作るために東・西2カ所で開催していきます。
「ウリ支部ウリチャラン運動」を通じて団員と共に生きる民団をめざして共に努力していきましょう。
4、IT全国化
時代に対応した同胞ネットワークの形成は本団の課題中の課題であります。グローバル化時代と高度情報化時代の21世紀型組織体は、ITなくして考えることができません。既に各地方本部および支部において導入し、活用しているところもありますが、全国的なネットワークと事務のデジタル化に向けた要望が提起されて久しいところです。在日同胞社会のIT普及も急激に増えています。民団ホームページに対するアクセスだけみましても一日3000件に達しています。インターネットを通じた情報交換も活発に行われていることをみても、在日同胞社会の次代への対処は、IT導入の他にないといえるでしょう。積極的な活用によって、本団のさまざまな業務と連絡は登録ひとつで、瞬時に、同時、大量配信が可能となります。情報収集もたやすく可能となり、中央、地方本部、そして支部にいたるまで情報を共有することができます。
この間、本団と団員の新しいネットワークの形成に向けて研究してきた「団員登録DB化〈団員ネット〉」の基本プログラムが準備されました。個人のプライバシーの保護を重視してきました。
今年、IT導入を本格的に進めていきます。前期はモデル地区を選定し、試験運用、そして研修を実施していきます。後期は、中央主導でIT器機を導入し、各級組織に配置し、全組織のネットワーク化を試みます。本格的なIT導入を通じて、本団各級組織と団員間の迅速な連絡網と各級組織幹部の意識を変えていきましょう。そして本団が蓄積してきた情報共有の画期的な契機を築いていきましょう。
一方、中央IT推進チームを中心として「民団ホームページ」の充実化により力を注いでいきます。既に作成した韓日両語版を通じて、本国はもちろん、海外韓民族ネットワークとリンクしており、本団に関する情報を積極的にアピールしてきました。また、各級組織の状況を把握でき次第掲載するよう力を注いできました。今後は、地方掲示版をより充実させ、いつでも記入、掲載できるようにして行く必要があります。このような状況になれば、弘報媒体として地域同胞社会の活性化の一助となるでしょう。全国的なネットワークを一日も早く実現できるよう共に努力していきましょう。
5、民団福祉事業推進
今年は福祉事業を本団の重点方針として推進していかなくてはなりません。高齢同胞は韓日間の辛い歴史の生き証人であります。厳しい差別と侮蔑を受けながらも日本の地域経済の一端を担い、在日同胞社会を守ってきました。本国の発展にも少なからず寄与してきました。しかし、大部分の同胞は社会的処遇も受けられないまま無年金者として疎外されてきたのが現実です。
今年は福祉事業の象徴的な事業として、全同胞的な取り組みで「在日同胞老人ホーム」の建設に着手します。「民団福祉事業推進協議会」を中央と地方本部、婦人会と専門家で構成し、研究してきた基本プランにしたがって建設地のひとつをモデルケースとして選定、推進していきます。建設地の選定において許認可問題はもちろん、資金問題と関連することから自治体との協議が最優先となります。同時に建設地域を中心として全同胞的な次元で募金活動を展開していきます。このような過程を通じて実際に運営に関わり、ノウハウの蓄積の後、今後に臨みたいと考えます。
また、昨年「ウリ支部ウリチャラン運動」推進にあたって民団会館の有効活用方案として民団福祉事業の推進を提起しました。既に大阪をはじめとして東京、兵庫、滋賀ではウリ会館を活用して「デイ・サービス」など、高齢同胞対策に取り組んでいます。高齢同胞はもちろん、家族からも好評を得ております。大阪府地方本部は大阪府から本部単位で社会福祉法人の審査で承認されており、管下支部で決定さえすれば、いつでも取り組むことができます。京都府と兵庫県地方本部では支団長、事務部長を対象に研修会を連続して開催し、導入にあたっての具体的な準備に取り組んでいることから、時機適切な事業として注目されています。
本団がめざしている地域に開かれた民団会館、そして組織の活性化に直結していることは幸いなことであります。「先祖を敬い、年長者を尊ぶ事業」であり、私たちの民族の美風良俗に合致した事業でもあります。福祉民団として地域の活性化のために本事業の積極的な導入を促していきたいと思います。
6、歴史認識問題
昨年は、日本の著名政治人が相次いで歴史歪曲発言を行い、問題を起こしました。日本の保守回帰の潮流は過去史の反省はおろか、正当化しようとすることに本団は危機意識を感じざるを得ません。今年は中学歴史教科書の検定の年であり、2年前の教科書問題の再燃となるでしょう。本団は断乎とした姿勢でこれに対処していきます。地方本部では研修会を通じて問題意識の共有と問題となる歴史教科書に反対する市民グループとの連帶に留意してください。必要ならば講師の派遣とあわせて共闘態勢を確保していきましょう。
可能な地方本部では「コリアン・アカデミー講座制民族大学」を開校し、系統的な歴史講座も効果的です。あるいは中央本部で開催した「民団フェスティバル」の「写真展」を地域の文化行事、また大衆集会の時に催し、団内に問題意識をはぐくむと同時に運動態勢を整える必要があります。
今年の1月、石原東京都知事の妄言に対して在日同胞の立場から「韓国と日本 あらためて近代史を考える」という小冊子を民族大学運営委員会の歴史学者による監修で発刊、2万5000部を広く配布し、現在新たに2万部を増刷いたしました。本パンフレットを通じて自治体の教育委員と直接面談し、韓日近代史の正しい認識を育むことに力を注いでいきましょう。中央は本パンフレットだけでなく、韓日間の歴史認識問題に関連する小冊子と近代史をより明らかにした「歴史ブックレット」を検討しています。
日本社会の歴史認識問題に深い関連のある事業が、昨年から取り組んでいる「在日同胞歴史資料館」であります。今年は在日同胞歴史資料館の開設にむけて、企画調整室が窓口となり、本格的な作業に取り組んでいきます。既に「在日同胞歴史資料調査委員会」は調査活動とともに資料の收集活動を展開しています。さらに開設にむけて全団的規模の「開設準備委員会」の活動も本格化していきます。韓日両国政府の積極的な後援を求める活動も展開していきます。
在日同胞はあらゆる艱難辛苦にあっても力強い、誇り高く生きてきました。その足跡を残す事業は私たちに課せられた使命です。消えていく多くの遺品の蒐集は2世が存在している今でなくては永遠に困難となることでしょう。歴史資料館は私たちの存在を実証する場であり、次世代の民族教育の殿堂となることでしょう。日本国に対しては問題提議の場であり、日本の人々に対しては正しい歴史認識を育む場となることでしょう。全同胞的な民族事業として、資料蒐集に積極的な協力を願いつつ、基本的な開設推進方案が決定次第、積極的な参与をお願いいたします。
7、オリニ・ジャンボリー
在日同胞社会の次世代を育成する民族教育の具体的な事業として新しい里程標を提起した「オリニ・ジャンボリー」を開催します。ご存じの通り、昨年はSARS(重症急性呼吸器症候群)の影響を考慮してやむなく中止にいたりました。しかし、これまで2回のノウハウを活かし、より充実した企画で進めていきたいと考えています。日本全国に分散して育っているオリニ達が一同に集い、連帯感を育むとともに、本国のオリニ達との交流を通じて自然な流れの中で民族的自覚を育む契機となることでしょう。
特に本事業は、参加するオリニだけでなく「オリニ・リーダー」として自ら進んでボランティアとして参加する青年会と学生会、そして母国修学生たちにとっても良き体験の場となっています。この青年・学生たちは本団の後継者育成事業の中で貴重な存在であります。また、保護者の参加はオリニの民族的感性を育む家庭教育の必要性と地域社会の努力が何よりも大切であることを共に認識し合う契機となっています。さらに本団が督励している「オリニ土曜学校」、「保護者ネットワーク」、「ウリマル・ウリイルム勧奨」につながっていきます。
今回は、夏休みのために参加できなかった地方本部に対する配慮はもちろん、運営様式も検討していく予定です。そして引き続き、本国政府と日本政府、教育委員会の積極的な理解と支援を求めていきたいと考えています。
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このほかにも目的別事業方針が山積みとなっています。そして、2005年は韓日修交40周年と光復(解放)60周年を迎える節目の年であり、愛知万国博覧会の開催年でもあります。そして第二次日韓協約(乙巳保護条約)から100年を数えます。その翌年の2006年は創団60周年の年にあたります。
このような歴史的な節目を積極的に活用し、21世紀の明るい在日同胞社会を展望するために諸般課業を積極的に進めていくと同時に、成果的に推進することを期します。
(2004.3.3 民団新聞)