掲載日 : [2004-04-21] 照会数 : 4174
歴史を学ぶということ 寺島善一(明治大学教授)
4年ほど前にソウルで仕事をしている友人を訪ねた。
彼は「日本のインテリゲンチャといわれる人々でさえ、韓国の歴史を余り知らない。ましてや、若者達においておやである。韓国の人々は植民地支配をされた事もあるし、日本の歴史をよく知っている。若者達でも同様である。日本人が韓国の歴史を認識している度合いと、韓国人が日本の歴史を知っている度合いは3対7ぐらいで、韓国人の方が日本の歴史を良く知っている」と言い、日韓の歴史認識のギャップを指摘した。
そして、彼は最初に、1895年に殺害された明成皇后の墓に案内してくれた。恥ずかしながら私は、明成皇后が日本人の手で殺された、この歴史を知らないでいた。安重根による伊藤博文暗殺事件はよく知っていたのであるが…。
私はスポーツに関係しているので、スポーツのことから、この日韓の歴史を垣間見ることが出来る。その最たる証人は、孫基禎さんである。
ベルリン五輪のマラソンで優勝した後に、日本の官憲が、孫さんに強いた過酷な人生については、日本のスポーツ関係者の間でも余り知られていない。
私は明治大学の学生には、授業の中で孫さんの人生について話をする事にしている。孫さんの人生を描いたドキュメンタリー番組のビデオを学生に見せる。見終わった後に感想を聞くと、一様にこのような「事実」があったことは全く知らなかったと言う。
ある学生は「孫さんのような先輩がOBにいたと言う事に誇りを持ちます」と目に涙をためて言った。
(2004.4.21 民団新聞)