掲載日 : [2004-05-26] 照会数 : 4699
またはめられた小泉首相 萩原遼(ジャーナリスト)
小泉首相の2度目の訪朝は子どもの使いに終った。蓮池薫さんと地村保志さんの子どもたち5人の帰国、曽我ひとみさんの家族は別途協議という惨憺たる結果である。死亡したとされる10人については進展はない。
これでは一昨年の訪朝時の大失態の二の舞だ。あのとき金正日国防委員長の5人生存10人死亡との説明をただしもせず生存者とその家族を連れ帰りもせず国交正常化と経済協力を約束した。国民の怒りは沸騰、以来国交交渉も頓挫のまま。拉致を自供すればいっきょに国交正常化がなり金が入ると読んだ金国防委員長は困りはてた。核を振りかざしてアメリカから代償を得ようとした。クリントン政権を脅して軽水炉を2基せしめたように。しかしブッシュ政権は乗ってこない。中国のお膳立てで北朝鮮は6か国協議という檻に閉じ込められた。
飢餓カードはこれまで何度も切って各国から食糧支援を得ている。いまや効き目はない。食糧危機は依然深刻、経済は停滞、またも大量餓死者も予想される。金国防委員長はまたも拉致カードを切って日本と取引しようとしたのが今回の小泉首相の再訪朝だった。
拉致はテロだ。テロにはしかるべき制裁で対処するしかない。死亡したという10人の死因の徹底調査、責任者の処罰、遺族への補償など必要なことをすべておこなう。特定失踪者といわれる北朝鮮が拉致した疑いのある日本人数百人の存否について回答を要求しつづける。
こうした原則的態度を堅持するしかない。5人の帰国は喜ばしいが拉致解決の氷山の一角でしかない。これで幕引きにさせてはならない。
(2004.5.26 民団新聞)