掲載日 : [2004-06-23] 照会数 : 4878
日弁連「民族教育」を初視察(04.6.23)
[ 民族教育の現場を視察する日弁連メンバー ]
制度保障 秋のシンポで論議へ
【大阪】日本弁護士連合会は 民族的少数者の当然の権利である教育がどう保障されているのかを実地に学ぶため16日、大阪市内の民族学校と民族学級を視察した。これは「外国人の人権基本法を制定しよう」を主なテーマに今秋、宮崎県で開く人権擁護大会シンポジウムに備えたもの。日弁連として民族教育の現場を視察に訪れたのはこれが初めて。
今秋の日弁連人権シンポジウム第1分科会では「多民族・多文化の共生する社会をめざして」をテーマに掲げており、外国人の人権基本法の制定をめざした議論を深めていくことにしている。なかでも民族教育の保障は「基本法」の中核的な位置を占める重要なテーマ。今回の視察にはコリアNGOセンターの金光敏事務局長によるコーディネイトを受けて民族学校出身の張学錬さんなど日本全国から16人の弁護士が参加した。
一行は民族学校2校に立ち寄った後、大阪市立長橋小学校を訪れ、3年児童の民族学級の現場を視察した。続いての懇談会には同校の教職員、民族講師会の朴正恵共同代表、奈良・外国人保護者の会の李美子さん、大阪市教組職員らも加わった。
視察に参加した弁護士側からは「民族学級が週1,2時間で少なくないのか」「教材に関して保護者からクレームはつかないのか」といった具体的な質問が多く出た。
民族学級について日本政府が国連に提出した各報告書では「政府から地方公共団体に対し、学校の課外で行われている韓国語や韓国文化などの学習が、支障なく行われるよう配慮するよう指導を行っている」などとしている。
しかし、日本政府は民族学級には一貫して消極的であり、「指導」といいながらその財政的な支援は一切行ってきていないのが現状。このため、国連の社会権規約委員会は「マイノリティの子どもが自己の言語と文化に関する教育を公立学校で享受できていない現状に懸念を表明」してきた。
第1分科会の実行委員長を務める丹羽雅雄弁護士は「民族学級は予算から見ると授業でなくクラブ扱いになっている。本来は正規の授業として制度的に保障されなければならない。秋の人権シンポでは民族的少数者のアイデンティティの保障を人権法の中でどう位置づけていくのかをしっかり議論したい」と述べた。
(2004.6.23 民団新聞)