掲載日 : [2004-09-15] 照会数 : 5728
「在日の砦」から共生の場に 発足20周年のコブクソン子ども会(04.9.15)
異文化理解手助け 地域に広げた友情の輪
都内でも有数の同胞集住地域、荒川区三河島にコブクソン子ども会が誕生して今年で満20周年の節目を迎えた。スタート当初は在日同胞の子どもたちへの対応が中心だったが、近年は日本人子弟も増えており、「多文化共生」の地域社会実現に貢献している。これまで巣立っていった子どもたちは優に100人を超える。
子ども会が開かれるのは毎週月曜日の夕方。6時を過ぎると放課後のがらんとした地元の小学校の一室は、20人近くにのぼる子どもたちのにぎやかな歓声に包まれる。授業で緊張を強いられている子どもたちにとって、ここは「発散」の場なのだ。
子どもたちは7年ほど前から日本国籍者が増え始め、現在は3分の2を占めている。日本籍でも母が韓国籍で父が日本人のケースやその逆の場合もある。名前も民族名と通称名、本名で日本語読みなど様々。
コブクソン子ども会には「在日の砦」としての意味が込められている。子ども会を主宰する呉崙柄さん(59)にとって日本籍の子どもたちは当初は想定外だった。しかし、熱心に異文化を学ぶ姿を目の当たりにして少しずつ肯定的にとらえるようになっていった。
呉さんは「いまは時代が変わってきている。日本の子どもたちが異文化を学ぶことで韓国への偏見がなくなることは、歓迎すべきこと。在日の子も周囲を見て自分という存在を肯定できるからプラス」と喜んでいる。
子どもたちの世話にあたる第七峡田小学校の湯本雅典教諭も「韓国の子どもたちは出自を隠しているのが一般的なのに、ここでは素直に自分を出して交流している」と感心した表情。
講師は呉さんと夫人の李福子さんが担当している。子どもたちが望めばチャンゴも教える。
呉さんは「韓国語の勉強はそれ自体が目的ではない」というが、子どもたちは簡単な会話を使いこなすなど、かなりレベルアップしている。卒業生のなかには国際高校に進んで弁論大会で韓国語を選択した子もいたという。
呉さんは「子ども会に通ってくる子が1人でもいる限りは続けていきたい」と話している。
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コブクソン子ども会
呉崙柄さんが84年9月11日、保育園に通う長女の民族教育のため、近隣の子どもたちを自宅に集め6人でスタートした。当初から呉さん自ら子どもたちに韓国語や歴史を教えてきた。1年後からは近隣の小学校に場所を移して、今日まで続けてきた。多いときは在日同胞子弟だけで40、50人を数えた。
(2004.9.15 民団新聞)