掲載日 : [2004-11-17] 照会数 : 8071
「民族学級」ひと筋42年 北九州市足立小 金東和講師(04.11.17)
[ 課外の時間を利用して金さんが指導する「韓国コマ」教室は子どもたちに人気 ]
地域ぐるみの支援…いまや「国際学級」に
【福岡】北九州市立足立小学校(戸田義晴校長、小倉北区宇佐町)に「民族学級」が開設されて今年で42年。少数在籍地域で民族学級がこれだけ長く続いているのは、民族学級担当で陶芸家の金東和さん(78)の存在によるところが大きい。金さんを仲介にした韓国理解はいま、学校から地域全体にと広がりつつある。
足立小「民族学級」では、全校生徒を対象に放課後や昼休みの教育課程外で、韓国の歴史や伝統芸能、遊びなどを教えている。
なかでも生徒たちの人気を集めているのが昼休み時間を利用しての「韓国コマ」教室。子どもたちから「ひもでたたいたときの音は『バシーン』って感じ。テレビゲームより面白かったです」「コマで遊んで韓国のことが少しわかったような気がします」といった感想が聞かれた。
毎週金曜日は4年生以上が参加するクラブ活動がある。陶芸家でもある金さんは「芸術クラブ」を担当。韓国に関係する焼き物などを指導している。民族衣装のハルモニが頭に荷物を乗せている人形では、頭の荷物が笛になっている。こうしたちょっとした工夫が子どもたちの人気の秘密だ。
足立小学校に「民族学級」が誕生したのは63年のこと。当時、金さんは民団福岡県本部の事務局長を務めていた。「民族教育の灯火を消してはだめだ」との思いから各方面に働きかけた結果、在日韓国人子弟が50人以上も在籍していた足立小学校で「民族学級」を創設することができた。
金さんは福岡県教育委員会から招請を受け、常勤講師として赴任した。待遇は正規の教員とまったく同じだった。就任当時は民族講師として放課後、在日同胞子弟だけに韓国語や歴史、文化などを指導した。ところが、都市のドーナツ化現象が進むにつれて在日子弟が減少、登録上は「民族学級」でも実質的な中身は「国際学級」へと変わった。
しかし、教師や保護者の反応は冷ややか。なかには「うちの子どもが朝鮮のことを学ぶ必要はありません」という父母もいたという。
転機となったのは11年前。金さんが学校長や教師、教育委員会など関係者を郷里の全羅南道莞島郡にある莞島初等学校に招いたこと。これがきっかけとなり、教師の意識も変わっていった。今年に入ってからは莞島郡の教育委員会関係者が足立小学校を訪問するなど、交流活動はさらに活発化しつつある。
金さんは60歳の定年退職後も非常勤講師として火・水は午前中、金曜日は午後も勤務している。
陶芸・韓国語講座花開く
いま、小倉北区内の足立区民福祉センターでは韓国語講座や陶芸講座が盛んだ。これは金さんがこれまでコツコツまいてきた種が花開いたもの。
戸田義晴校長は「陶芸家で知られる金さんの役割は大きく、民間外交官として北九州市と市の教育関係者、および市民たちに認められるようになった。子どもの学習には優しいですが、陶芸の指導に関しては厳しいですよ。いまがいちばん心、技、体とも充実しておられる」と話している。
(2004.11.17 民団新聞)