掲載日 : [2004-12-01] 照会数 : 5934
市尼高校「開国」の時 藤原史朗(「全外教」前代表)
韓国の私立南旨高校と市立尼崎高校(小生勤務)は、10月29日に姉妹校提携を結んだ。両校ともに校史上初の出来事だ。
ここに至るに4年。南旨高校からの来校は5回、市尼高校からは4回で、常に先行したのは南旨高校だ。南旨は私学、運びが速い。市尼は尼崎市立の学校、動きが遅い。市財政逼迫で海外交流事業予算は一切カット。教職員の渡韓はすべて私費。生徒らの費用はPTAと生徒会の予算でという深刻な事態だ。
しかし、遅れの理由は他にもある。内部では姉妹校提携メリットの有無が論議に。南旨は韓国の高校でいち早く日本語科を設置、交流は同科の充足発展になる。市尼のハングル講座は選択科目。さほどメリットはないとの意見が多かった。
韓国の高校との姉妹提携は、在日の生徒たちの教育問題につながる。この外と内の課題をどう進めるか、市教委や管理職側に躊躇ありと思えた。市尼の在日生徒に関わる教育を28年担ってきた者として断言した。「日韓交流の国際的視野が人権教育を深める」と。
今回来校の南旨生徒は男女8人。全校生を前にした調印式から始まった4日間。通訳は朝鮮中学出身の市尼生徒5人。双方の生徒会役員や参加生徒らは短い旅と寝起きをともにして語らい、互いの民族と文化に触れた。 お別れは昼休みの時。生徒らが囲む中央階段を南旨高校生8人は下り終えると再度振り返り「お礼に」と南旨高校歌を必死に歌った。一瞬の静寂。躍り出た男子生徒2人が音頭をとり、見送る者全員の市尼高校歌合唱になった。躊躇する悩みなどなし。大言する。市尼高校「開国」の時と。
(2004.12.1 民団新聞)