掲載日 : [2002-11-07] 照会数 : 3353
〞分断〟の現実まざまざと チャーター便で本国研修(02.11.06)
[ 台風被害の義援金を手渡す許団長(中央)
]
[ 北韓の武装潜水艦も見学し、南北分断の緊張を新たにした
]
281人が江原道訪問
民団東京本部(許孟道団長)は今秋、大規模な本国研修を実施し、幹部と団員の絆を深めた。
10月14日から17日まで3泊4日の日程で実施された民団東京本部の研修旅行は、本部の役員をはじめ21支部の役員と団員に婦人会からも会員が加わり、総勢281人の大規模なものとなった。
航空機1台をチャーターしての本国旅行は、民団中央本部、49地方本部の歴史の中でも過去に例がなく、同本部事務局によれば、「最後の韓国旅行になるかもしれないから…」と、申し込んだ高齢団員もいたという。
14日にアシアナ航空便で成田空港を出発した一行は、今春開港した江原道の襄陽空港に直行した。9台のバスに分乗するほど在日同胞が大挙して江原道を訪れるのは初めてのことで、襄陽郡の李鎭浩郡守が歓迎の花束で出迎えた。
江原道は世界で唯一分断している韓半島の中にあって、地域自体が南北に分断されている最前線だ。一行はまず韓国の最北端に位置する統一展望台を訪れ、曇り空に煙る北の大地を感慨深げに見入っていた。
翌日は江陵市に向けて出発し、武装ゲリラを送り込もうとして98年9月に東海で座礁した北韓の武装潜水艦の内部を見学した。
腰をかがめなければ歩くことのできないほどの狭さと生き苦しさを体感しながら、対南工作を企てた北韓の策動に怒りを新たにしていた。
5000ウォン札のモデルになった烏竹軒を経由して江原道観光のシンボル、雪岳山国立公園に到着した。
紅葉の季節には少し早かったが、公園までの沿道はリュックサック姿のハイキング客でごった返していた。楽しみにしていたロープウェイからの展望と頂上への道程は、残念ながら時間切れで実現しなかったが、それでも大自然を感じることができた。
15日は江原道知事主催の夕食晩餐会が開かれ、民団本国事務所の現職と歴代の所長3人が招待された。
朴壽福政務副知事は、「99年の江原観光エキスポ開催時には、民団新聞が宣伝広報に尽力した。今回は300人もの在日同胞が、『韓国観光1番地』の江原道を新空港を利用して訪ねてくれた。東海線が連結すれば、鉄のシルクロードがヨーロッパまでを結ぶ。21世紀の江原道発展の契機になる」とあいさつした。
許孟道団長は道中で台風被害を目の当たりにした参加者からの誠意として、1000万ウォンを伝達した。束草市の董文星市長の乾杯音頭とともに、なごやかな雰囲気で始まり、民族舞踊などで一行を楽しませた。
16日は一路ソウルを目指し、宿所のウォーカーヒルホテルでディナーショーを鑑賞した。
許団長は事故もなく終わったこの度の研修旅行をふり返り、「組織幹部と団員の親睦を図るため企画した。南北分断の現実をかいま見て、平和統一の大切さを実感してもらえたと思う。支部団長や役員の協力に感謝する」と謝意を示した。
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「統一の願い」新たに 参加者の声
研修旅行に参加した団員らは、どのような感想を持ったのだろうか。5支部の参加者に聞いた。
金秀吉支団長(荒川支部)=初めての雪岳山観光は天候にも恵まれ、大自然の中で秋の一日を満喫した。支部から27人が参加し、心配も多かったが、280人以上の参加者が事故もなく旅行を終えることができたのも、本部のしっかりした引率のおかげだと感謝している。
羅基満さん(北支部)=同胞があれだけ多く集まったのにまとまりがあったのが信じられなかった。場面場面での時間的なロスも10分程度で、これは役員の努力と参加者の高い意識の表れだ。胸がつまったのは、統一展望台から見える海の風景だった。きれいな砂浜なのに誰もいない。国が分断されているからだ。悔しくてならなかった。
成秀子さん(世田谷支部)=支部から13人参加したが、みんな喜んでいた。バス9台を連ねた研修団の姿は壮観で、水害被災者への寄付も団体だからこそできたこと、すばらしいと思う。ウォーカーヒルのショーも民俗芸能あり、アメリカの洗練されたショーありで楽しめた。ただ、長いバス移動は高齢者には少しきつかったのではないか。
崔好炳監察委員(練馬支部)=何と言っても初めて訪れた雪岳山が印象的だった。統一展望台から北韓を見たが、まだまだ精神的には遠い所だと感じた。早く統一を達成し、自由に南北間を行き来できればと願わざるをえなかった。こういう研修旅行がまた行われるなら、次回は済州道に行ってみたい。
成南順会長(婦人会江東支部)=雪岳山を含む江原道は、個人的にはなかなか行けない所なので、参加してよかった。朝5時半に起きてロープウェイにも乗った。山頂からの美しい景色は忘れられないだろう。参加者みんなが気持ちを一つにして、水害被災者に支援をすることができた。難点を言うなら、予定変更などの重要なことを旅行社任せでなく、本部の人がもっときめ細かな対応をしてほしかったということだ。
(2002.11.06 民団新聞)