掲載日 : [2005-01-19] 照会数 : 5587
金日成の死に疑問呈す 萩原遼(ジャーナリスト)
4年間アメリカでもがいたり、苦しんだりのすえにようやく一冊の本を書き上げました。『金正日隠された戦争』(文藝春秋1600円)です。 300万人ともいわれる北朝鮮の大量餓死と金日成の死には密接な関連があり、どちらも自然に起きたものではない、金正日の意思が働いていることを論証しています。
そのヒントは1991年に発表されたWFP(国連世界食糧計画)の報告書でした。食糧導入を望む金正日。乞食外交はまかりならんと絶対反対の金日成。父子の対立の中で金正日は金日成の死を望んでいるとも受取れるくだりがあり、鳥肌立つ寒気を覚えました。
二人の対立の焦点は農業の再建です。人民に十分食わせ民心を安定させて政権維持を図ろうとする金日成。わざと飢饉を拡大させて敵対階層を抹殺しようとした金正日。
農業再建のためには火力発電所の建設で電力不足を解決し肥料増産を主張する金日成。原子力発電設備の導入で核開発を進めようとする金正日。 どちらの援助をアメリカから導入するか。それに決着をつける運命の日、1994年7月8日を迎えます。ジュネーブでの米朝高官協議の日です。その2日前の7月6日、金日成は火力発電でいけと最終方針を打ち上げました。金正日の構想の全否定です。金正日に残された手は翌7日の一日の内に金日成がいなくなることしかない。金日成はその日、心臓疾患で自然死したと北朝鮮当局。
金日成の謎の死で障害のなくなった金正日は敵対階層の殲滅に突き進みます。これも自然災害死だと。こんなことが信じられるのかと、問題を提起した本です。
(2005.1.19 民団新聞)