掲載日 : [2005-02-02] 照会数 : 5281
スポーツと国際相互理解 寺島善一(明治大学教授)
今日の「韓流」ブームも、W杯サッカーが原点であるといっても過言ではあるまい。
スポーツが言語を超えて、相互理解に寄与すると主張して、生涯をかけて、その理念実現のために実践されたのは、孫基禎さんである。ワールドカップサッカーの日韓共催はまさに、孫さんの理想と夢を現実のものにしてくれた。孫さんはこの日韓共催の「成果」を見届けて、2002年11月にお亡くなりになった。
孫さんは周知のごとく、ベルリン五輪マラソン優勝という輝かしい成果にもかかわらず、日本軍国主義政府から厳しい弾圧を受けた人である。
しかし、その恩讐を乗り越え、日韓のスポーツマンの架け橋になり、生涯を通して「日韓・東アジア」のスポーツマンの連帯と団結の必要性を訴え、実践された。W杯サッカーにおいて、日韓の青年が肩を組み「日本チャチャチャ」「テーハミングッ」と唱和しあった。まさに、スポーツによって、国境を越えた友情が広がった瞬間であった。 2月9日にはW杯予選で北朝鮮の選手が出場する。この選手らをも温かく迎えたいものである。独裁者と無垢な国民、選手とは区別しなければならない。心無いマスコミはピョンヤンのアウェーの試合は大手旅行社は腰が引けているとか喧伝して、必要以上に北朝鮮の危なさをあおっている。事前の予断と偏見がそこにあるような気がする。こうしたスポーツの交流は、日韓W杯の経験を踏まえても分かるとおり、日本と北朝鮮の人々の互いの理解・友情をより強固に深めるまたとないチャンスである。アメリカと中国のピンポン外交の成果を思い出してみたいものだ。
(2005.2.2 民団新聞)