掲載日 : [2005-04-06] 照会数 : 6184
テレビの体験に学ぶ…高嶋伸欣(琉球大教授)
テレビの体験に学ぶ…高嶋伸欣(琉球大教授)
私は現在の職場に移る以前の約30年間、東京教育大学(現、筑波大学)付属高校の社会科地理担当の教員だった。1980年から数年間、NHK教育TVの高校通信講座・地理の講師の一員ともなった。
2年目の冬、朝鮮半島の説明を私がすることになった。当時はまだ南北対立が厳しく、南北を対比はもちろん並列する扱いでも苦情が寄せられた。苦肉の策として、南と北を一年ごとに交互に扱っていたものの、それでも毎年苦情が続いていた。それだけに、私の番組の放送当日、NHKの苦情電話を受ける係は、緊張していたという。ところが、苦情電話は皆無で、係は不思議がったという。
この時、私は番組の冒頭で、朝鮮半島と日本の歴史的結びつきの深さを強調した。具体的には日本の民話「ねずみの嫁入り」が、朝鮮民話「もぐらの嫁入り」とそっくりであることを、全編の紙芝居と朗読で紹介した。当然のこととして、文化を受け継いだのが日本の側であると説明した。歴史学習で古代の渡来人に必ず触れているので、納得されやすいはずと私は考えていた。その予想は的中した。加えてそこから私は、朝鮮半島と日本との関係を学習する際の大切な視点を学びとった。
翌年もまた、私が朝鮮半島の番組の担当になった。今度は、江戸時代の朝鮮通信使の往来によって、日本は医学などを学んだことを紹介した。さらに、明治以降のアジア観を逆転させた福沢諭吉の「脱亜入欧」思想に触れた。
この時も苦情は皆無だった。しかし、それは表向きで福沢批判はNHK内部で、私の講師降板の声を産み出す一つのきっかけになったのだった。
(2005.04.06 民団新聞)