掲載日 : [2005-04-13] 照会数 : 10165
アフリカ系カナダ人が民団にエール(05.4.13)
[ 「多民族・多文化共生にっぽん」をテーマにした講演活動を行っているアフリカ系カナダ人のジョエル・アソグバさん ]
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違い認めあう社会に…多民族・多文化共生訴え全国奔走
アフリカ系カナダ人 ジョエル・アソグバさん
在日差別にショック…絵本でも共生訴える
【福岡】アフリカ系カナダ人の絵本作家で語学教師のジョエル・アソグバさん(36・福岡県築後市)は、本業のかたわら「多民族・多文化共生にっぽん」をテーマにした講演活動を行っている。講演は東京をはじめ青森、広島など全国を回る。
「日本の人はよく、『私たちは平和ぼけ』と言いますが、戦争がないから平和ではないんです。本当の平和とは差別のない社会、犯罪のない社会、愛のある社会です」と語る。
26歳の時、カナダで知り合った日本人女性との結婚で来日した。カナダでは少数民族の黒人に属するために、自らも差別された体験を持つ。以前から人権に対する問題意識を持っていた。
民族の違いを認め合おうというメッセージを込めた最初の絵本「にじのこどもたち」をはじめ、これまで「共生」や「差別」をテーマにした子ども向けの絵本3冊を出版した。
活動を始めたきっかけの一つは、自身の子どもたちに対する差別だった。
アソグバさんには3人の子どもがいる。肌が少し浅黒いことで学校で「外人」「汚い」「その色を早くなんとかして」などと言われたという。
「子どもたちは日本生まれ。何もしなかったら自分の生まれた国を嫌いになります。自分たちが成長している環境のなかで、行動を起こして、よくないところを正していかなければならない」
そのアソグバさんが日本で最初にショックを受けたのが在日韓国・朝鮮人に対する差別だったという。在日関連図書などを通して、歴史や等身大の在日の姿が分かってきた。
「在日は1世の時代から日本に渡り住んできたのにまだ差別されている。なぜ、国連は在日の問題に無関心なのか、なぜメディアでもニュースや議論にならないのか」と日本で在日に対する差別が解決していないのは、大きな問題だと指摘する。
在日韓国人2世の保健師、鄭香均さんが管理職任用の差別で訴えた1月26日の最高裁の判決について、「政治家は無関心。日本人は今、韓流ブームといっているけど、困っている人は助けない。そして裁判も差別をやっている」と怒りを隠さない。
アソグバさんは「在日の苦しみは毎日、感じています。その人たちの孫やひ孫が同じ扱いにならないように、私も頑張りたい」と話す。
同化主義は好きではないという。アソグバさんの活動は、日本に暮らす外国人が自分たちの文化を守りながら差別もなく、人権も守られながら多文化共生社会のなかで、日本人の仲間として生きていけるための環境を作りたい一心からだ。
日本の子どもたちには「差別されている人たちの痛みを少し分かってね」と語りかける。心の教育が大事だからだ。
「人間の深さは愛と、そして相手の立場に立って考えることです。私は子どものために、子どもたちの世代のために、そして人間としてもこの活動を続けます。今の子どもたちの心を豊かにしたら20年、30年後に本当の平和が来るかもしれません。それまでは諦めたくはありません、頑張ります」。
(2005.04.13 民団新聞)