掲載日 : [2005-05-18] 照会数 : 6473
<歴史教科書>採択前に早くも攻防(05.05.18)
[ 記者会見する「子どもと教科書全国ネット21」
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「教科書ネット」VS「つくる会」
外国特派員協会
「新しい歴史教科書をつくる会」と同会に批判的な市民団体「子どもと教科書全国ネット21」が相次ぎ東京・有楽町の外国人特派員クラブで記者会見を開き、舌戦を展開した。両者の論点を比較した。
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「つくる会」の八木秀次会長は10日の会見上、「日本の教育界はマルクス主義者で占められている」と4年前の採択で惨敗した責任を転嫁し、記者団の失笑を買った。日本の教科書がマルクス主義をもとに階級闘争史観で書かれているというのは「つくる会」側の一貫した主張だった。
教科書攻撃へ、レッテル張り
これに対して「教科書ネット」側が13日、反論した。歴史学者の石山久男さんは、「戦後の歴史学、歴史教育は事実に基づき、民衆の立場で世界に開かれた歴史を記述してきた。過去の侵略が一定程度、教科書に反映されてきたのはその成果の現れだ。彼らは自分たちへの反対に対してレッテルを張り、攻撃を仕掛けているにすぎない」と述べた。
扶桑社と「つくる会」との関係についても両者の見解は分かれた。「つくる会」の藤岡信勝副会長によれば、「『つくる会』から個人が執筆に参加しているが、会としては関わっていない。検定申請したのが扶桑社だ。『つくる会』と扶桑社は一体ではない」とこれまでの主張を繰り返した。
扶桑社とは、定期協議も
だが、「別組織と見るのは現実的ではない」ようだ。「教科書ネット」の俵義文事務局長によれば、「『つくる会』は扶桑社に人材を派遣し、両者は定期的に協議を行っている。扶桑社は『つくる会』の出版局と見るのが妥当だ」という。この点は文部科学省でも「グレーゾーン」と暗にルール違反を認めているとされる。
監修者のまま、教育委員就任
記者会見では「つくる会」副会長であり、問題となっている中学歴史教科書の監修者である高橋史朗氏を埼玉県教育委員会委員に任命した件も追及された。
藤岡副会長は「高橋氏はつくる会副会長を昨年秋に辞任し、いまは監修者でもない。教科書の執筆者であることが委員就任の妨げにはならない」と強弁した。しかし、当の高橋氏は今次の検定に申請した「中学校公民」教科書の監修者にとどまっていたことが4月25日、文部科学省の情報公開で明らかになっている。
「教科書ネット」の俵事務局長は会見で高橋氏と藤岡氏の発言の矛盾を批判し、「つくる会」の教科書を検定合格させた文科省の責任にも言及した。
「つくる会」が会見を開いたのは、問題となっている中学歴史教科書のアピールが目的だった。この日のため近現代史に限って64㌻分を英訳して記者団に配った。だが、記者団からはしつような追及を受け「教科書ネット」からも厳しい反撃を受けた。当初の狙いは果たせなかったようだ。
(2005.05.18 民団新聞)