掲載日 : [2005-06-22] 照会数 : 6495
<寄稿>鄭煥麒(民団中央本部顧問)
利用客置き去りの仁川空港入国審査
〞観光立国〟に逆行、悪印象是正を
定評のある英国のエアポート調査会社が、90カ国150の空港で利用客550万人に聞き取り調査を行った結果、施設の清潔さ、安全性、搭乗手続き、利便性などで仁川国際空港が、2005年世界ランキングの総合3位に入った。
しかし、私は納得できない。
昨年の秋、韓国旅行が初めてという取引先の知人3人をソウル旅行に案内した。私たちは名古屋空港を午前10時発のJAL便で出発、仁川空港に12時5分、定刻より15分ほど遅れて到着した。
ところが、思わぬ事態に面食らった。入国ゲートはどこもかしこも長蛇の列で、どの列に並べば少しでも早く入国できるかと列を変える人たちが右往左往していた。
私は知人3人のため、外国人専用の行列の最後尾を探して並ぶ羽目になった。審査の何に手間取るのか、行列は一向に前に進まない。韓国人専用レーンは外国人専用より倍のスピードで進んでいた。私たちは待つしかないと覚悟した。
結果的に名古屋空港から仁川空港へのフライトに相当する1時間40分を要した。信じられない事だった。
海外旅行はその国の第一印象で良し悪しが決まる。韓国の顔、表玄関でこのありさまである。知人の3人は長時間の行列に腹をたて、2度と韓国に来る気持ちにはならないだろう。私は平素、知人に仁川空港を自慢していたので、彼らに面目ないのを通り越して、済まない気持ちと、出迎えに来た知人にも申しわけない思いでいっぱいであった。
2泊3日の短期旅行であるから、スケジュールは過密である。荷物を両手に持っているので、手足がだるくなるし、スケジュールを狂わせる無駄な時間の浪費が重なってイライラが募る。
「審査官は専門職だろう。テロリストと一般客とはすぐ判断できるはずだ。もっとスピード処理したらどうだ」と言いたくもなるではないか。
私はこの5月、今年3月に開港した名古屋セントレア空港を15時20分発のアシアナ便で発ち、仁川空港には17時20分に予定通り到着した。入国ゲートは昨年同様、到着客があふれ、長蛇の列である。この時は入国するまで45分を費やした。仁川空港は開港して4年にもなるのに、このような事態が度々起こるにもかかわらず、今なお改善されていないのはなぜか。空港当局は利用客に対するサービスを忘れていると見るほかない。
韓日両政府が両国の1日生活圏を目指して、金浦‐羽田間でシャトル便を運航し時間を短縮するよう便宜を図る時代だ。
韓国観光公社も常に日本で観光客誘致のイベントを続けている。にもかかわらず、受け入れ態勢がそれにそぐわないようでは実に情けない。
私は2年ほど前の韓国訪問の年に、観光客誘致のため「韓国訪問名誉広報使節」の指名を受け、日本の各会社に団体旅行の斡旋をした。私はそのとき、韓国が悪印象を与えるものとして、入国審査の遅延、最初に会う入国審査官と税関職員の横柄な対応、タクシー運転手の言動、そしてホテルのボーイがチップ欲しさにする過剰サービスの4点を挙げ、観光公社は観光立国を標榜してピーアールに努め、悪印象を是正する国民運動を展開することが急務だろうと言った。
入国審査官と、身体と手荷物の検査係の旅客に対する扱いや言葉遣いなどを通じて、心のありようは自然と旅客に伝わる。
昔に比べ最近は韓国も随分よくなった。しかし、それでもまだ日本側空港に軍配が上がる。
(2005.06.22 民団新聞)