掲載日 : [2005-07-13] 照会数 : 7798
京都ウトロ地区・退去問題解決へ曙光か
[ ドゥドゥ・ディエン氏(右)にウトロ在住同胞の窮状を説明する町内会副会長の厳明夫さん ]
国連人権委が初調査
【京都】国連人権委員会の特別報告者、ドゥドゥ・ディエン氏が日本を訪れ、日本国内での人種・民族差別、外国人排斥などに関する初めての公式調査を行った。5日には京都府宇治市のウトロに入り、不法占拠を理由にした退去強制の圧力におののく同胞住民らから直接聞き取りを行った。また、在日同胞高齢者と障害者の無年金問題についても実態把握に努めた。
ウトロ地区では町内会副会長で在日2世の厳明夫さん(民団京都・南京都支部事務部長)から過去の経緯と現状について説明を受けた。厳副会長は「在日韓国人がウトロに定着した歴史的背景を考慮したうえで、住民200人余りの基本的人権である居住権が保障されることを望む」と述べた。
ディエン氏は同じウトロ地区で高齢者と障害者の福祉事業に取り組んでいる「在日コリアン生活センターエルファ」にも足を運び、在日韓国人の無年金問題について京都造形大学の中尾宏客員教授から説明を受けた。
積極的に質問を重ね、関係者の発言を熱心にメモに取っていたディエン氏は「私の報告書は人権委員会を経て国連総会にまであがる。今日の話はとても貴重なもので、なんらかの形で報告書に生かしていきたい」と語った。
今回の視察調査に同行していた国連人権高等弁務官事務所のミラノ・バレンティナ人権担当官も在日韓国人の人権状況の深刻さには驚きを隠せない様子で、日本側コーディネーターに追加資料の提出を求めたほどだった。
2人は国連NGOにも登録されている反差別国際運動(IMADR)の仲介で3日、関西入りした。在日同胞問題の視察行程は大阪の特定非営利活動法人コリアNGOセンターが調整し、京都には同センターの金光敏事務局長が同行した。
厳副会長は「強制執行が行われる前に来てくれたことに意義がある」とほっと胸をなで下ろしていた。また、「ウトロを守る会」の吉田泰夫さんは「国連人権委の公式調査が入ったことは、日本政府や自治体に大きな影響力をもたらすに違いない。土地問題の解決に向け、地元住民と在日同胞支援者・市民が大きく力を合わせるときだと思う」と話している。
ウトロ地区は第2次世界大戦中、日本が国策として「京都飛行場」建設工事に駆り出した同胞たちが住んだ飯場の跡。解放後はなんの補償もなく放置され、行き場もなく住み着いた。しかし、土地所有権裁判では最高裁まで争ったものの敗れ、強制退去を命じられている。
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ドゥドゥ・ディエン氏
セネガル出身。02年に国連人権委員会から「現代的形態の人種主義・人種差別・外国人排斥および関連する不寛容に関する特別報告者」に任命された。03年にユネスコ反人種主義教育国際会議出席のため来日。東京での「国連反人種主義・差別撤廃世界会議フォローアップに関するNGOとの意見交換会」に参加し、「次回は特別報告者として日本を公式訪問したい」と意欲を燃やしていた。11日まで京都以外にも東京、北海道、愛知を回り、アイヌ民族や移住労働者など被差別当事者から様々な情報の提供を受けた。
(2005.07.13 民団新聞)