掲載日 : [2005-08-13] 照会数 : 8425
韓国政府…サハリン同胞から初の聞き取り調査
[ 孫娘の誕生日を祝うハルモニ。でも、「祖国で死ねたら」と願う=ユジノサハリンスクで02年2月、片山通夫さん撮影 ]![](../old/upload/42fc451dc0770.jpg)
補償実現へ一歩…基金造る抗争も
「日帝強占下強制動員被害真相究明委員会」を中心とする韓国政府合同調査団が、サハリン残留韓国人から初の聞き取り調査を続けている。調査に基づき補償問題が浮上すれば、韓日首脳会談で再三にわたって支援を約束してきた日本政府としても無視できないとみられている。韓日両国が協力しての解決案として基金構想を提起する声も一部にある
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日本人支援者 「未清算の貯金活用を」
基金構想の背景には当時の賃金・軍事郵便貯金の未払い問題がある。当時、サハリンの現地企業は韓国人に支払うべき賃金の多くを強制的に貯金させたうえ、通帳を保管し、未清算のまま日本に引き揚げた。郵便貯金は郵政省の調べで59万口、元利金合計で1億8000万円にのぼる。
日本人を除く残留韓国人の口座は7万口程度と推定されている。支払い請求に対して郵政事業庁は「ロシア籍および無国籍者には法的に支払い義務がある。法定利息を付した額『4〜5』倍」で支払うと回答している。
しかし、預金通帳が現存している人は少なく、ましてや日本政府の不始末で原簿を消失している以上、権利確認などの手続きも困難だ。台湾元軍人・軍属の郵便貯金については当時の宮沢首相が「現在の価値による解決」を約束、120倍による払い戻しで決着をみている。
サハリン残留同胞の永住帰国に道筋をつけた高木健一弁護士は、この1億8000万円を120倍した約200億円をサハリン同胞のために有効利用するべきだと主張する。「調査結果がまとまり次第、来年にも韓国政府は被害者の具体的なニーズに応じた要求を日本政府に突きつけていくことになるだろう。その際、韓国政府と日本政府が協力して基金のようなものをつくれば戦後補償のモデルケースになるだろう」と期待している。
合同調査団は「強制動員真相究明委員会」を中心に外交通商省と大韓赤十字社などの担当者18人で構成している。6月20日から7月4日までの第1次調査で3022人の残留韓国人から被害申告を受け付けたほか、1世822人を含む1642人との面接調査を実施した。年内に全員の聞き取り調査を終える方針だ。
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サハリン同胞とは
戦時動員などにより、日本統治下の韓半島から炭鉱や軍需工場などに必要な労働力として渡ったのが始まり。46年の民族別人口調査では4万3000人を数えた。韓国政府が日ソ国交回復の翌年の57年、帰国希望者の引き揚げ促進を日本に要請したが、「朝鮮人の日本引き揚げは見当違いも甚だしく、世論の反撃に遭う」(外務省アジア局第1課作成の文書)などと拒否。ソ連の非協力が解決を長引かせたとしてきたが、実際は早い段階で対策を放棄していたことがわかる。日本人妻とその家族約1500人だけは日本への帰還が認められた。
樺太帰還在日韓国人会が75年、日弁連に人権救済を申し立てた。これを受けて高木健一弁護士らが裁判を提起した。83年に「アジアに対する戦後責任を考える会」、87年には超党派の「サハリン残留韓国・朝鮮人問題議員懇談会」の発足で一時帰国、永住帰国へのレールが引かれた。サハリンに残留する同胞は最近の人口調査で2万9600人。
(2005.08.13 民団新聞)