掲載日 : [2005-08-17] 照会数 : 8620
子ども置き去りの採択…杉並区教委
[ 3対2で扶桑社版『歴史』を採択した杉並区教委 ]![](../old/upload/4304295477d49.jpg)
区長の意向反映か…「談合」疑惑 指摘も
東京・杉並区教育委員会は12日の臨時教育委員会で、扶桑社版『歴史』の採択を強行した。「つくる会」の思想に共感する山田宏区長が数年前から教育委員を入れ替えるなど、用意周到に扶桑社版採択に向けた環境づくりを整えてきた結果だ。政治的な思惑を優先するあまり、本来の教育の主人公である子ども不在の採択となった。
扶桑社版『新しい歴史教科書』の代表執筆者で「つくる会」副会長の藤岡信勝氏は、『歴史』の採択が決まるや『公民』の審議結果を見ることなくさっさと傍聴席を立った。
臨時委員会の傍聴を終えて出てきた反対派の主婦は「できレース。談合があって『歴史』も『公民』も事前に決まっていたとしか思えない。区教委はこの疑問に答えてほしい」と納得いかない表情で述べた。
山田区長にはこの間、教育行政からの政治的中立を疑わせるかのような言動が目立っていた。区の成人式で特攻隊員の遺書を引用し、戦争を美化するかのような発言をしてきた。「つくる会」幹部を後押しするCS放送局「日本文化チャンネル桜」にも3月からレギュラー出演中だ。
決定的だったのは99年4月の就任と同時に教育委員3人の総入れ替えを図ったこと。扶桑社版を支持した大蔵雄之助、宮坂公夫の両委員は区長のお声がかりで就任した。01年には扶桑社版の採択に反対した前教育長の代わりとして、区長の子飼いとされる納富喜朗区長室長を据えた。
納富教育長は4日の採択委員会では扶桑社版を含めて3つの教科書を挙げ、「率直にいってどれでもいい」としていたのが、今回は一転して扶桑社版を推した。この1週間余りでどのような心境の変化があったのかは明らかにしなかった。
丸田頼一委員長とともに反対に回った安本ゆみ委員の任期は来年6月まで。このままでいけば、教委内部で「つくる会」支持派と反対派の均衡関係が崩れかねないと心配されている。
ある保護者は「教委は合議制が基本。1人でも反対があれば、その教科書は避けるべきだった。なんのための教育、誰のための教科書なのか。子どもの未来を政治の道具、金づるにしているとしか思えません」と怒りをにじませていた。
来春から区内の公立中23校6300人が使用する見込み。
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「主教材から除外も」…丸田教育委員長が談話
他社の教科書を推した丸田頼一教育委員長は12日の採択後、「教科書を学校では一切使用せず、全教科の教師たちが主教材を別途用意している学校も知っている」と述べ、「つくる会」教科書を主要な教材として使用しないことを提案する談話を発表した。
「談話」のなかで丸田委員長は、「扶桑社版を教科書として採用することになったが、本教科書の内容を補完するガイドラインを示し、区が教師用指導書概要を提示して教師の便宜を図るべきだ」とも述べた。
丸田委員長は扶桑社版について「いかにして教え込もうかの流れが鮮明。子どもの目線に立って子どもとともに考え、問いかけたりすることが大事だ。このことが気にかかる」と述べていた。
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「みんなの会」激励…瑞草区選出国会議員
杉並区と友好都市協定を結んでいるソウル市瑞草区から選出された国会議員、李恵薫さんが12日、「杉並の教育を考えるみんなの会」に激励のメッセージを送ってきた。
李議員は、扶桑社版採択に「唖然とした」という。しかし、「夜が深くなればなるほど夜明けが近づいている」との韓国のことわざを引用しながら「また改めてスタートするだけです。一緒に頑張りましょう」とエールを送った。
杉並区と瑞草区は91年に友好都市協定を締結。公務員の交換勤務、青少年サッカー、平和写生大会及び相互交換展示会など活発な交流活動を展開している。今月も12日まで3泊4日間、両国の青少年60人が忠清南道清陽にある青少年訓練院に集まり、韓日青少年共同キャンプを楽しんだ。
(2005.08.17 民団新聞)