掲載日 : [2005-08-31] 照会数 : 10870
杉並教委と玉川学園に、採択撤回求める
[ 杉並区役所前、みんなの会 ]![](../old/upload/4315806c263bf.jpg)
民団東京…杉並教委と玉川学園に、採択撤回求める
東京23区採択地区では初めて「新しい歴史教科書をつくる会」の主導した扶桑社版中学歴史教科書を来年度から使用すると決めた杉並区教育委員会に対し、採択撤回を求める声が続いている。これは区教委が教員からの調査報告書を書き直させたこと、採択審議の過程を振り返っても依然として不透明感がぬぐえないでいるため。民団東京本部は私立玉川学園に対しても教科書検討会を申し入れた。
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扶桑社版を採択した区教委は24日、第11回定例会を開催した。閉会の直前、傍聴席から梁東準民団杉並支部支団長が「歴史教科書の再検討をお願いします」と口火を切った。続いて「不当な採択を認められない」「審議のやり直しを」と抗議が相次いだ。納富善朗教育長に説明責任を求める声も聞かれた。
この日の教育委員会は教科書関連の議案こそなかったが、109人が20席の傍聴券を求めて抽選に臨んだ。委員が退席した後も納富教育長との話し合いを求め、関係者と約2時間にわたって交渉を続けた。
市民団体「杉並の教育を考えるみんなの会」は19日、「政治的な思惑で不正に採択された」との文書を委員5人全員に内容証明付きで送った。12日の採択以降、教育長に面会を申し入れてきたが聞き入れられず、思いを伝えるためにはこれしかなかったのだという。
対する教育委員会側はというと、窓口となる庶務課への通路にバリケードまがいの長机を置き、ガードマンが外部からの入場者を厳重にチェックするものものしさ。市民と対話をしようとの姿勢は感じられない。
「みんなの会」が教育委員会開会に先立って区役所で開いた抗議集会には、約300人が参加した。ある保護者は「杉並区から引っ越ししたいくらい」と憤りの表情。中には「来年から子どもを中野か練馬、または武蔵野に越境入学させなければならない」という保護者もいたという。
扶桑社版『歴史』については教科書調査委員会が「総合所見」で「物事に対して一面的な記述が多いので、多面的なものの見方を育てることにつながらない」としていたことが情報公開開示請求で明らかになっている。
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共同検討会申し入れも
民団東京本部(李時香団長)は19日、「新しい歴史教科書をつくる会」の主導で編さんされた扶桑社版「歴史」教科書を採択した玉川学園(町田市、小原芳明学園長)と杉並区教育委員会に対し採用撤回を求めた。
玉川学園には在日同胞子弟が多数在学しているだけに、「韓国籍などの生徒たちがこの教科書によって歪められた歴史を身につけ、誤った民族理解がなされることを看過できない」という内容の要望書を伝達した。
別室で一部代表団との面談に応じた増田中学部長は、扶桑社版教科書採択の理由について「明治以前の情報量が多かったから」と説明、各教師が副教材を作りながら教科書の補完に努めていくと強調した。これに対し、代表団は「この教科書を使うことで差別・偏見などの問題が起こる可能性がある」と強調。「同胞子弟で本名を名乗れない環境があることをもっと知ってもらいたい」と述べ、教科書の中身について検討し合う場を後日、設けてほしいと要望した。
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公開質問状発送…東京ネット
「つくる会」教科書採択を阻止する東京ネットワーク(代表、山田朗明治大学教授)は25日、玉川学園の小原芳明学園長に宛て、扶桑社版の『歴史』『公民』教科書を採択するに至った経緯を糺す公開質問状を送った。
公開質問状では、扶桑社版『歴史』が「世界を相手に活躍できる子どもを育てる国際教育」という同学園の教育方針と矛盾すると指摘。記述の不正確・不適切さを具体的に挙げながら「なぜ、そのような欠点の多い教科書を採択したのか」と聞いている。
(2005.08.31 民団新聞)