掲載日 : [2005-09-14] 照会数 : 14096
<民論団論>「在日」写真展に14000人
[ (上)写真の説明に見入る若い観覧客 ] [ 写真展は韓国YTNやKNTVでも放映された ]
青年会中央が都庁舎で開催
狭間から発する光 韓日を照らす
韓国人が日本で数世代にわたって暮らし、在外国民として、あるいは地域住民として、韓日両社会にかかわりながら、架け橋の役割を担ってきたこと、そんな在日の素顔を紹介したいと青年会は写真展を開催した。タイトルは「語り継ごう在日を! ともに暮らす在日韓国人の生活風景」。展示パネルは計60点、西新宿の東京都庁第1本庁舎45階の展望室で、8月17日から23日までの7日間だった。
来場者は延べ1万4千人を数えた。都庁職員の経験に基づく観測によると、来場者の構成は日本人30%、中国・台湾人30%、韓国人30%、その他・欧米人が10%ということだった。私たちが準備したブックレットは日本語が800部、韓国語400部、英語200部がはけた。また、青年会が進めてきた歴史を伝える運動の「中間報告書」(2001年版)が約200部配布できた。
福岡から来たという50代の男性はこう尋ねてきた。「韓国人はどうかね?」。質問の意味が分からず返答に窮していると、「今度うちの姪が在日韓国人と結婚することになってね。文化の違いとか生活観が::」と、心配顔である。
その後、不安は解消されたようである。姪とは実は娘さんのことで、展示場のすぐ横のカフェでは韓国から来た先方の親族一同を交え、微笑ましく団欒する姿があった。大切な出会いの場に、写真展は絶好の背景になったようだ。
チョゴリ姿のパネルにしばし足を止める70歳代の女性は、小学校時代のチョゴリを着た幼馴染を思い出したという。在日の由来も、チョゴリという名も気にとめたことはなかった。「でも、その服が可愛くてねえ」。西日が差し込む展望室で、在りし日の記憶をまさぐりながら、恍惚感に浸っているようだった。
「これなに? なにこれ?」。むじゃきに騒ぐ少年たち。ソウルからやってきた彼らは、写真展を目ざとく見つけ来場する。都庁展望室は都内の観光コースの一つに組み込まれている。比較的空いている午前中は、観光バスで団体客が押し寄せるのだ。
「あーっ、在日同胞だわ!」と興奮気味のアジュンマ。「あれ、なんで?なんでここに?」。観光に来た日本で、ましてや都庁の、そして地上200㍍の展望室で、在日同胞に出会ったわけである。それは驚きであったに違いない。
その近くでは、指紋押捺制度撤廃運動のパネルをじっくり見つめ、デジタルカメラのシャッターを何度も押すフランス人観光客がいた。日本社会のマイノリティの、生活史の一断面に、どう興味を引かれたのだろうか。
「お隣さんなんですけどね、実は韓国のことあまり知らないんですよ」。そう語る都庁職員。「でもね、この人知ってますよ。強かったなあ」。東京オリンピックの柔道で銅メダルを獲得した在日同胞を見て、懐かしさがこみ上げて来たらしい。彼にとって当時、その在日同胞選手は憧れのヒーローだったという。
知っているけどよく知らない、でも知っている、しかし結局はよく分からない。韓日の両国民にとって、そんな在日同胞社会が形成されてから、100年になる。狭間から韓日を照らす。写真展は私たちの予想を超える情報を発信できたのかも知れない。
在日同胞は、解放後の複雑な韓日関係にあっても、双方にかかわる存在として、地道に交流を培ってきた。これこそが確かな共生社会をつくる足場となり、土台になるはずだ。こんな思いを新たにする写真展となった。
(青年会中央・李英明)
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(2005.09.14 民団新聞)