掲載日 : [2005-09-28] 照会数 : 9303
各地外国人学校が神戸でフォーラム
[ 報告するブラジル人学校協議会会長のパウロ・ガルヴォンさん(右端) ]
民族教育権で課題共有
共働で解決めざす…全国ネット構築も視野に
【兵庫】日本文部科学省の定める正規の学校教育体系に含まれず、「教育を受ける権利」の面で国と自治体からさまざまな制約を受けている各地の外国人学校・民族学校の代表らが、外国人・民族的少数者の教育権実現に向けて全国レベルのネッワークを構築していくことになった。25日、神戸市内で開かれた「多民族共生教育フォーラム」で確認した。フォーラムではお互いの課題を持ち寄り、共働で解決していくことを誓い合った。
日本における外国人学校・民族学校は、その多くが自動車教習所と同じ「各種学校」の扱い。学校教育法の定める正規の学校(一条校)ではないため、国庫助成は一切ない。地方自治体からの補助金も私立学校の10分の1から数分の1程度と限られている。
一部の欧米系インターナショナルスクールを除いては「特定公益増進法人」の対象外に置かれているため、企業からの寄付金に対して損金(税)控除を認めていない。このため、東京韓国学校、朝鮮学校、華僑学校などは一般の私学に比べ厳しい運営を強いられているのが実情だ。
なかには自前の校舎・校庭、一定の教員数という条件を満たせず、「私塾」として扱われているところもある。浜松市御本町のラテン系外国人学校「ムンド・デ・アレグリア学校」もその一つ。自治体からの公的助成もなく、負担は生徒の授業料に跳ね返っている。一時は生徒が減ったが、8月に県から準学校法人認可を受けた。南米系では全国で初。県からの財政援助が可能になり、生徒も戻りつつあるという。
フォーラムでは北は群馬県大泉町のブラジル人学校から、南は沖縄のアメラジアンスクールまで計9校から学校運営の実情と課題についての報告があった。各校の代表からは「先駆者の貴重な話を聞いた」「他の学校とは条件が違うが、課題は同じ」「(共通の課題解決に向けて)児童生徒、教員、学校どうし知り合うことが大事」といった意見が聞かれた。
続いてのパネルディスカッションで田中宏龍谷大学教授は「大学受験資格は基本的にクリアできた。これからは日本の私立学校並みの公的助成が焦点になるだろう。税金の負担だけ平等原則が働くのはおかしい」と指摘した。これに対して実行委員会事務局次長で弁護士の師岡康子さんは「全般的な問題点が明らかになったのが成果だ。来年に向けて課題を精査していきたい」と述べた。
フォーラムの開催地となった兵庫県では、県内の外国人学校・民族学校19校で「外国人学校協議会」を構成している。
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各学校の報告から
東京韓国学校
寄付に対する税制上の優遇措置が認められていない。
大阪朝鮮学園
東京韓学同様、朝鮮学校への寄付金が損金として認められていない。日本私立学校振興・共済事業団からの融資もだめ。老朽化した学校環境の整備が進まない。
神戸中華同文学校
授業料だけでは経営困難のため1年に1回、経済人の支援を仰いでいる。
エスコーラ・サンパウロ(ブラジル文化学園、愛知県安城市)
施設・設備が個人資産のため、税負担を強いられている。
学校法人ムンド・デ・アレグリア学校(ペルー人学校、静岡県浜松市)
校舎が賃貸のため家賃負担が大きい。運動場、体育館がない。
イスパーノ・アメリカーノ学院(スペイン語圏の学校、群馬県伊勢崎市)
県や市、企業からの助成がなく、負担が大きい。生徒数の増加で教室が足りない。
国際子ども学校(フイリピン人学校、愛知県尾張旭市)
移住労働者の子弟を多く抱える。保険未加入のため、学校保健や医療が不十分。
アメラジアンスクール・イン・オキナワ
日米の文化を尊重する「ダブルの教育」を提供する。民間の教育施設のため卒業資格を出せない。
特定非営利活動法人京都インターナショナルスクール
京都市から廃校となった校舎をレンタル。法人の取得と永続的な校舎の確保が課題。
(2005.09.28 民団新聞)