掲載日 : [2005-11-09] 照会数 : 10571
なぜ日本人が? 原村 政樹(映画監督)
映画「海女のリャンさん」は多くの人たちに支えられて、すでに100箇所を越える上映を日本各地でしていただいた。最近、韓国語版も完成し、今年の済州映画祭で招待作品として、韓国の方々にも見ていただくことができ、本当に嬉しい。
上映会でしばしば「在日」の方から「なぜ、在日の映画人ではなく、日本人のあなたがこの映画を作ったのですか?」と質問されることがある。
そうした質問に私はいつもこう答えている。「在日の歴史は日本の歴史の一部だと思う。自分の国の殆ど知られていない歴史を伝えたい」と。
正直に言うと、「在日」の取材を始めた10年程前、私も殆ど『知らない日本人』のひとりだった。アジア諸国の取材は多かったが、日本の中のアジアは殆ど知らなかった。自分の国に暮らすアジアの隣人のことを知らずにアジアを語れるのか、と、疑問を持ち始めた。そんな想いで、自然と「在日」の人たちとの出会いが増えていった。それからは魅力的な「在日」との出会いが始まった。日本社会が今までとは違った姿に見えてきた。知識からではなく、生身の人間との付き合いから「在日」と出会った私は、無知であったが故に感動も大きかった。その感動を多くの日本人に伝えたい、という想いが私の映画作りの原動力となっている気がする。「日本人は知らなすぎる」と嘆く言葉を「在日」の方から何度も聞いてきた。しかし「知らない日本人」との出会いもまんざらではないのではないか。出会って、お互いを正直にぶつけ合いながら友情を深めていく喜びは何にも代えがたいと実感している。
(2005.11.9 民団新聞)