掲載日 : [2005-12-07] 照会数 : 8834
「生きる力」をもらって 篠藤 ゆり(作家)
在日ミュージシャンのライブのお手伝い。韓国に関する本の執筆。今年もコリアンの友人・知人たちと、いろいろな場を共有してきた。でも、「なぜ在日の人たちと活動しているのか?」と聞かれると、「ご縁です」としか答えようがない。
10数年前、文学雑誌で小説の新人賞を受賞したのをきっかけに、先輩作家である小林恭二さんの飲み会に誘われた。そこにいたのが、ワンコリア・フェスティバル実行委員長の鄭甲寿さんだった。その後もときどき、小林さんや鄭さんたちと、飲んだり、温泉に行ったり。その延長線上でワンコリアフェスティバルを手伝うようになり、在日の人たちとの縁が広がっていった。
20代のほとんどをアジア放浪で費やした私は、旅のなかで、人間にとって国とはなんだろう、民族とはなんだろうという命題に、しばしば直面せざるをえなかった。そういう下地があったせいで、在日が抱えているさまざまな状況を知った時、つい立ち止まったのは確かだ。だがそれより、在日の人たちの圧倒的なエネルギーに魅せられたことのほうが、大きかった。私たち日本人が失いつつある「生きる力」に満ちている、魅力的な人たち。その熱さと輝きに触れていると、こちらまで元気になり、生きる勇気が湧いてくる気がしたのだ。だからもっと間近で、温度を感じていたい。それが、出発点だった。
このコーナーへの寄稿はこれが最後だが、私はずっと同じことを書き続けてきた。「すべては出会うことから始まる」。これからも皆様に、いい出会いが訪れますように。長い間、ありがとうございました。
(2005.12.7 民団新聞)